「たばこと塩の博物館」移転リニューアルオープン

たばこと塩の博物館
「たばこの歴史と文化・塩の世界」
4/25~



1978年、当時の日本専売公社によって渋谷に設立された「たばこと塩の博物館」。たばこと塩に関する展示はもちろん、近世風俗画、浮世絵関連の企画展にも見るべき点の多い博物館でした。

一昨年秋、休館して以来、約2年越しです。この4月25日(土)に移転リニューアルオープンしました。場所は渋谷から大きく移しての墨田区横川。ともすると聞き慣れない地名かもしれませんが、まさにスカイツリーのお膝元と言って良いエリアです。

最寄駅は東武スカイツリーラインの「とうきょうスカイツリー駅」。そこから歩いて7~8分ほどです。また都営浅草線の本所吾妻橋駅、もしくは半蔵門線や京成線の押上駅からも徒歩10分強で行くことが出来ます。

早速、オープン初日に行ってきました。


「たばこと塩の博物館」全景

博物館はちょうどスカイツリーの真南です。周囲は繁華街とは無縁の倉庫街です。向かって右側に茶色の外壁の建物が見えてきました。それが新しくオープンしたたばこと塩の博物館です。


エントランスホール(1階)

博物館は5階建て。受付は一階です。真新しいエントランスホールやミュージアムショップが出迎えてくれます。


「たばこと塩の博物館」案内図

上層階が展示室です。2階は常設展示室の「塩の世界」と特別展示室があり、3階には常設展示室の「たばこの歴史と文化」と視聴覚ホール、さらに立派な喫煙ルームがあります。1~3階へはエスカレーターで行き来可能ですが、その上、図書室や多目的スペースのある4~5階へはエレベーターでしか行けません。

2フロアの常設展示室は趣きも一新。スペースも渋谷時代に比べて約2倍に拡張されました。


左奥「聖キンガ像の岩塩彫刻」

まずは2階の「塩の世界」です。冒頭は「生命を支える塩」や「世界の塩資源」のコーナー。さらにポーランドの世界遺産で、同地の坑夫たちに信仰されていたという聖キンガ像の岩塩彫刻も目を引きます。像自体はおろか、床や土台まで全て塩で出来ているそうです。

能登半島で50年間建っていた釜屋の復元も興味深いのではないでしょうか。復元とありますが、鉄釜や釜屋自体は実物です。ちなみに釜屋とは、海水から塩をとり、出来た濃い塩水を煮詰める作業のために使われた施設だそうです。


「塩の世界」展示室風景

さらに現在の製塩工場の模型や製法を紹介したパネルも充実。塩の結晶や性質などを紹介する科学展示も新たに加わりました。


デジタルパネル「いろいろ塩図鑑」

タッチパネルで気軽に楽しめるのが「いろいろ塩図鑑」です。塩のサンプルを端末上にのせると各塩の産地や成分などの細かい情報が表示されます。


「十字の神殿」模型

一つ上の3階へあがります。同じく常設の「たばこの歴史と文化」。入口は何と神殿でした。その名は「十字の神殿」です。何故にたばこと神殿が関係するのかと思ってしまいますが、接点は遥か昔、マヤ文明にまで遡ります。現在のメキシコにあるバレンケ遺跡です。神殿の内部に「たばこを吸う神」が彫られています。

かつてのマヤではたばこの煙を揺らす神への信仰があり、たばこが神と結びついた聖なる植物として崇められていたそうです。神殿が造られたのは7世紀の頃です。もちろん本物を移設することは叶わないので、現地の職人がレリーフを再現、ここ墨田の地にやって来ました。


「マヤ地方」のたばこ文化

西洋人によって「発見」される以前のアメリカ大陸では、煙が天上の神と地上の人間を結ぶ役割を果たすとも考えられていたそうです。たばこが儀式で使われることも少なくありません。


「世界のたばこ文化」コーナー

後にたばこがヨーロッパにもたらされます。そこで登場したのがパイプ文化です。ご覧のように世界中の喫煙具がずらり。大変な数です。一体何点あるのでしょうか。そしてこれらが思いがけないほどにカッコいい。いずれも凝った意匠が施されています。


「中央ヨーロッパのパイプ」

私は全く煙草を吸えませんが、ともかく道具として楽しいもの。一つ手にとってみたくなりました。


「江戸時代のたばこ文化」コーナー たばこ屋再現展示

日本に目を向けてみましょう。江戸時代のたばこ文化です。まずは江戸の本所界隈にあったたばこ屋を再現。臨場感のある展示が続きます。


「新しい喫煙具」

意匠を凝らしたたばこ入れや初期の煙管なども珍しいのではないでしょうか。またたばこを吸うシーンを描いた江戸初期の風俗画、浮世絵なども出ていました。


「業平たばこ店」模型

近代です。懐かしいたばこ屋さんがありました。ずばり「業平たばこ店」です。ウォークイン方式の再現模型、実寸大と言って差し支えありません。たばこがショウケースに並び、店頭には赤電話、さらに古い自販機も設置されています。もちろんタスポカードは非対応です。こうした街のタバコ屋、今でこそ少なくなりましたが、かつてはあちこちにありました。思い出します。


「たばこメディアウォール」

明治以降、たばこ販売の歴史を辿る資料展示も充実していました。中でも歴代のたばこのパッケージは大いに目を引くのではないでしょうか。戦前に杉浦非水がデザインしたものや、先の大戦中、英語表記の禁止されたパッケージなど、興味深い資料も少なくありません。


「たばこの歴史と文化」展示室風景

基本的には渋谷にあった展示物を移設したそうですが、映像やデジタル端末も多く、より体感的に楽しめるように工夫されています。またあわせてコレクションギャラリーも開設。世界の灰皿などを蒐集した土屋陽三郎氏(三洋証券創業者)の喫煙具コレクションも展示されています。

この内容で入館料は100円です。特別展開催時は別料金が設定されますが、相変わらずの安さ。破格と言ってもいいかもしれません。楽しめました。

ちなみに現在、特別展は行われていませんが、特別展示室スペースでは、渋谷時代の活動を振り返りつつ、リニューアルのプロセスを紹介した「新しい博物館ができるまで」を開催中です。


「新しい博物館ができるまで」(2階特別展示室)

かつて行われた特別展のパンフレットやポスター類などもずらり。新博物館の工事を記録した写真や映像なども展示されています。なお特別展自体は秋以降、順次開催されていくそうです。そちらにも期待しましょう。


視聴覚ホール(3階)

ところでたばこと塩の博物館、ご覧のように館内は全て真新しいので、てっきり新築のビルかと思いましたが、実際には違いました。リノベーションだそうです。元々はJTの倉庫です。その一部を博物館に改装しました。(周囲もJTの施設が目立ちます。)


「たばこと塩の博物館」と倉庫(左の部分です。)

確かに良く見ると倉庫部分と博物館の建物が繋がっています。なお渋谷の時にあったカフェはなくなりました。飲食に関してはスカイツリー方向へ出る必要があります。


「たばこと塩の博物館」よりスカイツリー方向

後ろを振り返れば巨大なスカイツリーがそびえ立っていました。初めにお膝元と書きましたが、想像以上の近さです。スカイツリー駅までは約7~8分ほどですが、ソラマチの南側の入口であればせいぜい5~6分程度で辿り着きます。


ミュージアムショップ(1階)

スカイツリー内の郵政博物館とあわせて出かけても良いのではないでしょうか。たばこと塩に郵政博物館。ここ数年で押上界隈に二つの博物館が出来たことになります。

たばこと塩の博物館は4月25日(土)に移転リニューアルオープンしました。

「常設展示 たばこの歴史と文化・塩の世界」 たばこと塩の博物館
会期:4月25日(土)~
休館:月曜日。(但し月曜が祝日、振替休日の場合は翌平日。)GW期間(4/27、5/7)、年末年始(12/29~1/3)。
時間:10:00~18:00。*入館は17時半まで。
料金:大人・大学生100(50)円、小・中・高校生50(20)円。
 *特別展開催時は別料金。
 *( )内は20名以上の団体料金。
住所:墨田区横川1-16-3
交通:東武スカイツリーラインとうきょうスカイツリー駅より徒歩8分。都営浅草線本所吾妻橋駅より徒歩10分。東京メトロ半蔵門線・都営浅草線・京成線・東武スカイツリーライン押上駅より徒歩12分。
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