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「日常事変」 川口市立アートギャラリー・アトリア

川口市立アートギャラリー・アトリア
「日常事変」
3/14-5/10



川口市立アートギャラリー・アトリアで開催中の「日常事変」を見てきました。

見慣れた風景や日用品など、言わば日常を素材にして制作する現代美術家たち。その事変、つまり変化をキーワードにした展覧会が、川口のアトリアで行われています。

[出品者]
川崎義博(サウンドアーティスト/デザイナー)
中崎透(アーティスト)
クワクボリョウタ(アーティスト)

会場内の撮影が出来ました。


川崎義博「異差・交差」

さてまず日常の素材、一つ目は音でした。川崎義博の「異差・交差」です。長い通路状のスペースには何枚かの板が吊るされ、そこに黒いオブジェが置かれています。と同時にスピーカーの姿も見えました。耳を澄ませてみましょう。微かに聞こえてくるのはミンミンゼミの鳴く音です。また夏祭りでしょうか。笛をピッピと吹いては音頭をとる音も聞こえました。


川崎義博「異差・交差」

結論から述べるといずれも作家が川口市内で採取した音。音拾いならぬ音のロケです。駅前や商店街の雑踏、それに公園に響く子どもたちの声、はたまたオートレースや鋳物工場といった川口ならではの音もあります。そして気がづくと黒いオブジェも実は川口の鋳物で造られたものでした。

土地の歴史を音で汲み取り、それを形として表現していく。また会期中には「音拾いさんぽ」として題し、観客とともに川口の音を探して歩くワークショップも行われたそうです。

続いて日常の二つ目の素材です。それを中崎透は街中の看板に見出しました。


中崎透「看板屋なかざき」

ずばり「看板屋なかざき」です。ご覧の通りの看板。ネオンサインが光り輝いています。駐車場の満車の表示やガソリンスタンドの価格表、それに商店でしょうか。セール中や開催中といったお店の看板などまでずらり。矢印で方向を指す看板もあります。まさに堆い山の如く置かれていました。


中崎透「看板屋なかざき」

実はこれらの看板、いわゆる既製のものではなく、あくまでも中崎が造ったものです。だからこそ看板屋なのでしょう。ただし元になる看板のイメージはアトリア周辺にあったもの。それを写真に撮っては持ち帰り、後に看板に仕上げた作品でもあります。

また看板の支持体、つまり土台や足場も日用品で出来ていました。それはアトリアで普段から使われている展示台や長椅子、さらにイーゼルです。アトリアの日用品と日常的な看板の風景。それを作家の手を介し、川口という場所で繋げています。

さて最後、三つ目の日常、それは何と自分の分身、つまり影でした。

クワクボリョウタです。影絵を用いたインスタレーションでも知られる作家、今回は人間の身体そのものを素材にしています。


クワクボリョウタ「以心分身」

完全なる暗室です。写真では分かりにくいかもしれませんが、手前の壁には無数の光源、LEDが設置されています。そこから白い小さな光が放たれていました。光源の前のスペースはがらんどう。つまりステージということでしょうか。光の前に立ち、自分の身体を思い思いに動かしてみましょう。すると影がまったく予期せぬ形をして浮き上がってきます。


クワクボリョウタ「以心分身」

これぞ分身と言えるのではないでしょうか。光に近づけば近づくほど人の形が解体、四角形、つまりはグリット状に変化していきます。つまるところ人の形の原型は留まりません。全ては失われていくのです。


©Ryota Kuwakubo 「para-existance 2015」 photo:Shizune Shiigi

私は一人でしたが、複数で参加すると上の写真図版のような光景が広がるのではないでしょうか。シンプルな仕掛けながらも、まだ見ぬ影絵を生み出すインスタレーション。しばし身体を動かしては楽しみました。

さて川口のアトリア、市営のギャラリーですが、公式サイトにも「小さなアート施設」とあるように、決して広い展示スペースがあるわけではありません。ともすると「量」に関してはやや物足りない面があるかもしれません。

よって埼玉県立近代美術館とあわせて出かけるのも良いのではないでしょうか。

ちょうど埼近美はこの週末、4月11日(土)にリニューアルオープン。記念展となる「private, privateーわたしをひらくコレクション」展が始まります。



「private, privateーわたしをひらくコレクション」@埼玉県立近代美術館 4月11日(土)~5月24日(日)

埼近美のある北浦和駅から川口のアトリアのある川口駅までは京浜東北線で約15分。それぞれの美術館、ギャラリーともさほど駅から遠くないこともあり、意外とスムーズに移動出来ます。

川口のアトリア、これまでの「アーティスト・ラボ」や「新進作家展」など、現代アート関連でなかなか魅せる企画も少なくない施設です。

「アーティスト・ラボ つくられるの実験」/「新進作家展 白木麻子・大和由佳」(はろるど)

北浦和へお出かけの方、少し川口へ立ち寄ってみては如何でしょうか。


川口市立アートギャラリー・アトリア

入場はパスポート制です。一度チケットを購入すると何度でも入れます。

5月10日まで開催されています。

「日常事変」 川口市立アートギャラリー・アトリア
会期:3月14日(土)~5月10日(日)
休館:月曜日。但し5月4日(月祝)は開館、7日(木)は休館。
時間:10:00~18:00。土曜日は20時まで開館。*入館は閉館の30分前まで
料金:一般300円。高校生以下無料、65歳以上は無料。
 *4月22日(水)は「アトリア開館記念日」につき無料。
住所:埼玉県川口市並木元町1-76
交通:JR線川口駅東口から徒歩約8分。
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