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東京都写真美術館 「Ten Views - スペイン現代写真家10人展」 4/9

東京都写真美術館(目黒区三田)
「Ten Views - スペイン現代写真家10人展」
3/19~4/24

こんにちは。

恵比寿の写真美術館で、DADA.さんご推薦の「スペイン現代写真家10人展」を見てきました。

この展覧会は、「過去25年の民主社会において、スペインが遂げた変貌をテーマにした写真展」(パンフレットから。)という趣旨の元に、現代の10名のスペイン人写真家の作品が展示されています。どの作品も良い意味で既視感がなくて、スペインの人々や建物、そして空気や大地などが、半ば映画的な視点を持って、美しくフレームの中におさまっています。強いインスピレーションを呼び起こされるものばかりでした。

どの作品も、写真としての面白さを感じさせるのはもちろんですが、特に私の感性と波長があったのは、展示室入口前に並んでいるフアン・マヌエル・カストロ・プリエトの幻想的な作品と、入口正面のリッキー・ダビラのポートレート作品、それにスペインの原風景を美しく切り取ったラモン・マサッツの作品です。

プリエトの作品は、どれも物語性を喚起させるものばかりです。空間の歪みを捉えたような、構図を曖昧にした作品からは、その場所の過去の物語を感じさせるような要素があります。モノクロ写真での光の取り込み方も器用で、作品の「影」の部分を美しく見せる技術にも唸らさせるものがありました。部屋に飾って日々対面してみたいような、そんな作品でした。

ダビラのポートレート写真は、被写体の強い生命力の発露を感じさせる、存在感のとても強い作品です。こちらを睨みつけるような鋭い眼光と、皮膚の奥底にまで食い込んでいるようなシミやしわが、どの被写体にも強く浮き出ていて、そこからは人間の「生」の営みを執拗なまでに感じさせます。ポートレート写真では、アルベルト・ガルシア=アリックスの作品も良く、美しく切り取られた被写体の人物の存在感を感じとることができましたが、ダビラの方がより生々しい表現です。「見ているのか、それとも見られているのか。」視点が転倒してしまうような、そんな力強ささえ感じました。

マサッツの作品は、スペインの大地と空気を、美しい構図でもって見せてくるものばかりです。空の「青」や建物の壁の「白」などが、限りなく鮮明に、そして光を放って輝いて写っています。見ていて爽快な気分になる開放感溢れる作品は、照明の落とされた会場の中で、一際目立っていたのではないでしょうか。単なる風景を、あれほどにまで鮮やかにおさめることができるのかと、半ば関心させられます。

会場の雰囲気も良く、作品の配置や照明の度合いにも細心の注意が払われた質の高い展覧会だったと思います。図録が5000円を超えるお値段だったので断念しましたが、どれも何度も見返したくなる作品ばかりです。逞しい表現力を感じる写真芸術に接することができた良い写真展でした。
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