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三越日本橋本店ギャラリー 「横山大観展」 4/2

三越日本橋本店新館7階ギャラリー(中央区日本橋室町)
「横山大観展 -足立美術館開館35周年記念- 」
3/23~4/10

こんにちは。

イッセーさんの記事を拝読して、急遽、三越で行なわれている横山大観の展覧会を見てきました。これは、大観のコレクションで有名な、島根県の足立美術館の開館35周年を記念して企画されたもので、最近オープンして何かと話題となった、豪華な(?)新館のギャラリーで開催されています。

今更ですが、私はこれまで大観の作品をまとまった形で鑑賞したことがありません。ですから、この展覧会は私にとって事実上の「大観デビュー」とも言えます。展示の方法は年代別になされていましたが、これは私のような大観についての素養がない者にとってはとても有り難いものです。年月の変遷や各時代の背景によって移ろいゆく大観の作風を、たっぷりと味わうことができます。繊細な筆が生み出す「美」を思いっきり堪能してきました。

「曳船」(明治34年)は、霞の中に一筋の滝が浮かび上がるような、とても幻想的な作品です。また、滝壺にあたる水面は美しいエメラルドグリーンで覆われていて、無造作な揺らぎが印象的な水の紋様も、とても自然な感覚で散らされています。大観の作品は、他にもたくさん「水」が描かれていますが、それらはどれも「曳船」に見られるような素晴らしい表現力です。「海潮四題・夏」(昭和15年)の、岩に迫り来る荒々しい波のうねりも、大きな月の明かりによる仄かな光に照らされて、何やら妖気すら漂うような深い味わいです。大観の描き出す「水」の色と紋様は、心の奥底に残ってくれるようです。素晴らしいと思います。

「冬之夕」(大正14年)は、木に降り積もる雪の質感がとても美しい作品です。枝と葉の間にひょいっとのせられたような雪は、適当な表現ではありませんが、まるでしっとりとした舌触りのかき氷のようです…。その絶妙な質感は、雪の重さを穏やかに伝えてくれます。葉が下にしなるような形で配されているのにも、大変な説得力を感じます。

桃が実る様子を描いた「桃」(昭和8年)は、実の瑞々しさを感じさせる赤と緑の彩色が印象的でした。このような色彩は、他の作品にも、例えばタンポポの黄色や、艶を押さえたような柿色にも見られましたが、それらはどれもパッと作品を概観したらまず目に飛び込んでくる要素となっていて、とても美しく感じます。また、どれも鮮やかすぎないで、木や葉などとバランスをとっているのも素晴らしいと思いました。

雪の冠った富士山の山頂部に、極限までに理想化され美化された太陽が輝く「神国日本」(昭和17年)は、その政治的な意味合いを無視すれば、素直に美しい作品だと言えるのではないでしょうか。オレンジ色した太陽の存在感(まさに「日の丸」的に。)と、富士の凛とした姿の構図はとても格好が良く、この作品が国威発揚に使用されたという経緯にも頷けます。また、富士山は下部が霞で隠されていて、頂上部だけが空に力強く突き出すようにして描かれています。これは実に圧倒的です。

この展覧会の目玉でもある「紅葉」(昭和6年)と、最近になって発見されたという「龍躍る」(昭和15年)も見応えのある作品でした。この上なく色鮮やかな「紅葉」は、会場のライトアップにも照らされて一層映えた様子で鑑賞できます。これだけでも満足できる内容です。

今まで見てこなかったのが勿体なかったと思わせるぐらい、とても充実した内容の展覧会でした。単なるデパートの催物ではありません。会場でも紹介されていた足立美術館へも、是非行きたくなりました。
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