デンマーク・ハーフキッズ

デンマークについての情報やニュースを紹介、またデンマーク人と日本人のハーフの子供たちの子育て日記。

デンマークから来た「歌声喫茶 灯」の歌集

2007-01-17 00:00:02 | デンマークの家具・物・たべもの
 デンマークのLyngbyに住む友人が自分で家をリフォームしており、クリスマスのすぐ後、その仕事の成果を見がてら遊びに行きました。彼の新しいキッチンやリビングはとても素敵で、白を基調としたシンプルな空間でした。暖炉があり、そこで薪をくべてくれたのですが、デンマークではキャンドルや暖かいコーヒー(あるいはワインやビール)、ちょっとしたお菓子とともに、こういう暖炉というおもてなしもあるんだなあと日本との違いを感じました。キャンドルだけでも温かい気持ちになりますが、暖炉があるともっと親密でヒュゲリな気持ちになりますね。

 さて、彼がキッチンのカウンターの上に何かカラフルなものを乗せていて、「Y(私の名前)が来たら渡そうと思っていて・・・」と言いました。驚いたことにそのやや古ぼけた小さな冊子には日本語が書いてありました。これは何かと尋ねると、「父が昔、仕事で日本に行ったときにもらったらしい。この前、家を片付けていたら出てきたから・・・」とのことでした。

 よく見ると「灯歌集」とあります。裏には住所があるものもあり、コマ劇場裏となっています。表紙にはロシアの服などを着たかわいらしい絵が描いてあり、中を見ると世界中の民謡や労働を奨励するような歌、世界を変えようというような歌が多いように見受けられました。そしていくつか「デンマークの友へ 1961.11.7 Please my friend」「デンマークの友へ 小さなおくりものをうけとり下さい」などという書き込みがあります。

 ネットで調べてみましたら、形を変えてこの「灯」は今もあるようです。(以下、現在の「ともしび」のHPから引用。)
 「1954年、東京新宿に自然にうたごえが響き、それはうたごえ喫茶ともしび(当時は「灯」の誕生となりました。戦後の民主主義復興の生き生きとした息吹を受け、平和と民主主義をその生命力として歌い継がれ、うたごえ喫茶には人々の希望と願いが込められ、又うたごえ喫茶は生きあう力ともなりました。当時、東京だけでも20件ほどのうたごえ喫茶が生まれ、国民的ブームともいわれました。その後、経営不振ということで閉鎖、閉店が相次ぎましたが、「灯」では、働くものの生活を守り、うたごえ喫茶を発展させようということで従業員による労働組合が結成されました。コマ劇場横の「灯」の閉鎖反対は多くのお客様の支援を受けて展開されました。」

 友人のお父様は既に亡くなっているのですが、こうして何かの縁で友人から私に譲り受けたのでした。日本からデンマークに行って大切にしまわれていたものがまた日本へと戻ることになったことを考えると、不思議な気持ちになるとともに、この冊子の運命とこれに関わった人たちの一期一会のようなものを感じます。(同時に私がデンマークと結婚という形で関わることになったのも、また何かの縁なのでしょうね。)

 それにしてもこの冊子に、贈った方のお名前がないのが残念でした。もしお名前があれば、ご本人にお渡しできるのに・・・と思いました。果たしてこれを友人のお父様に贈った贈り主は、この40年以上前のデンマーク人のことを覚えているのかななどと考えていると、ちょっと贈り主を探し出してみたい気もしています。

買い物の楽しみ、ロッペマーケット!

2007-01-11 21:51:42 | デンマークの家具・物・たべもの

 デンマークにはジョージ・ジャンセン、ロイヤルコペンハーゲン、ホルメゴー、ローゼンダールなどの代表的なブランドがいくつかあり、もちろんそういった品々は素敵です。が、小さな国ですのでブランドの数が限られていること、そしてなかなか高級であることから、何度もデンマークを訪れていると、買い物に行き詰ってきてしまいます。高級品を次から次へと買うほどお金もないし、必要なものはすでに買ってしまってあるし、家具は大きすぎて買えないし、電気製品も日本で使えるかどうかわからない、そしてお鍋は重すぎるし・・・ということになります。

 そこで何を買うかというと、消耗品(キャンドルやペーパーナプキンなどが日本より安い)や食べ物(デンマークでしか買えないものはたくさんある)、本(デンマーク語の本はデンマークでしか買えないでしょうね、多分・・・)となります。さらに、今回確信したことは、やはり私にとってはロッペマーケット(フリーマーケット)に勝るものはない、ということでした。

 前回のデンマークで気づいたのですが、安くて、現在お店に並んでないようなものもたくさんあり(デンマークは小さい国で製品が限られているので、実は大抵どこでも同じ品ばかりで飽きてしまう)、そして前の持ち主についていろいろな想像を膨らませながら買い物をするのは、なかなか楽しい時間です。ロッペマーケットの場合は別にこれを買おうと決めているわけでもなく、気ままにじっくり物を見ては楽しむという中で「これは!」と思うものを買うので、変なプレッシャーがないところも気に入っています。

 しかしながら今回は冬で、ロッペマーケットの季節ではないので残念だなあと思っていたのですが、ある日、義母の家の前のショッピングセンター内で何人かだけのさみしいロッペマーケットが開催されていたのです。買い物のついでに見に行くと、上の写真のお皿を見つけました。お値段は10クローナ(200円)。この日本の絵が描かれたお皿は裏に「久」という文字と山形の線が描かれており、この絵は手書きでかなりきめ細かく描かれています。売られていたときには壁掛け用の針金がついていたので、誰かが壁に飾っていたかもしれません。いつの時代の、どんな人が描いたお皿かはわかりませんが、なんだか遠い国で日本の古いものを見つけ、しかも丁寧に描きこまれた絵を見ていると懐かしい誰かに再開したような、私がこのお皿を日本に帰してあげられるような、そんな気分になりました。

 もしかしたらこういった日本の古いものが意外とデンマークに眠っているかもしれませんね。それが何かのきっかけで、無造作にそのへんのロッペマーケットで売られていることが時々あるのではないでしょうか。そういう物との出会いが何とも楽しく、わくわくするデンマークのロッペマーケットです。

さみしい光景

2007-01-07 23:01:06 | デンマーク人
 デンマークでの楽しい話題を書きたいと思ってはいますが、それはまた今度ということにして、今日はちょっと違う話をしたいと思います。

 義母の住む団地の中にショッピングセンターがあり、スーパーが2軒、花屋、電器屋、パン屋、靴屋、ランドリー、銀行、不動産屋、パブ(ここで昼間からおじさんたちが飲んでいて、ちょっと柄は悪い)などが入っており、生活に必要な物はすべて調達できるようになっています。しゃれているとは言えないようなお店ばかりですが、近くですべて揃うのは大変便利です。

 さて今回そのショッピングセンターの一角が、新しくなっていることに気づきました。ガラスごしに中を見ると、大きなテーブルが置かれ、窓にはクリスマスの飾りが少し施されています。奥にはカウンターやキッチンがあるのが見えました。そのときは誰もいませんでしたが、張り紙を夫が読むと、そこは老人達の集まる場所ということでした。

 デンマーク人は定年後、いろいろなアクティビティで忙しいと先日、本でちょうど読んだところでした。老人のためのセンターで催されるいろいろなプログラムに週に何日か参加し、楽しく忙しい日を送っているというような記述があったことを思い出し、なるほど、こういうことか、こういう明るいダイニングのようなスペースでゲームをしたり、コーヒーを飲みながらお喋りをしたりするのね、と思いました。日本ももちろんこういうプログラムはあるでしょうけれど、こんなに明るい部屋で、ましてやショッピングセンターの中という便利な場所にあるのは見たことがないなあ、さすがデンマーク・・・。 

 そして数日後、またそこを通りかかったときに、ちょうど老人達が集まっているところに遭遇しました。コーヒーやたばこと共に、6-7人の人たちがトランプをしているところでした。それを見たとき、私にはそこが非常に「さみしい光景」だということに気づきました。私のイメージしていた楽しさはそこにはなく、あるのは孤独な老人の寄り集まりでした。クリスマスの時期に、こうして一人で、こういうところに参加せざるを得ないのは、どう考えたらいいのか・・・。そんな時期にこういうところに来ている彼らの表情は、部屋の明るさに似つかわしくないものでした。

 誰か訪ねる人がいれば、誰か訪ねてくれる人がいれば、きっとこういうところへは来ないだろうと思います。それでもこういう場所がなければ家の中で、もっと孤独になってしまうのかもしれないとすれば、この場所は非常に重要な場所なのでしょう。

 デンマーク人の孤独は深刻だと思います。もちろん日本の老人の孤独も深刻ですが、デンマークでは寒さのために外出が厳しいことが、より孤独を増すことになっていると思います。クリスマスのきれいなきれいな窓辺を見ながら、こうして窓辺を飾れる人はきっと幸せな人だ、家族や友人がいて、訪ね合って暖かい時間を過ごすのだろうなと思いました。逆に、クリスマスだというのにキャンドルやライト、ニセなどの飾りつけも何もない窓辺の人は、きっと誰も訪ねて来ず、クリスマスの楽しい気分とは関係のない、孤独な生活をしている人なのかもしれない・・・。夫と散歩をしながら、あちこちの窓辺を見上げてはそう思い、私は今、自分に家族がいて一緒にクリスマスを祝えることを改めてありがたく思ったのでした。

デンマークから戻りました

2007-01-06 02:32:20 | デンマーク人
 デンマークでクリスマス、年越と過ごし、1月3日に日本に戻りました。今年の日本での生活が皆さんよりも3日遅れで始まったような、なぜか出遅れた気分でいます。この3連休で普通のペースを取り戻さなくてはと思っている次第です。

 今年は記録が始まって以来の暖冬とはいえ、やはり外出がままならない冬であり、人とのつながりの大切さやありがたさを改めて感じるものとなりました。

 さて、今回のデンマーク滞在でいくつか印象に残ったことがあります。おいおい、写真つきでまたご紹介していきたいこともあるのですが、今回はデンマーク人の印象について書いてみようと思います。

 デンマーク人について、もちろん一言で語るなどということはできないのですけれども、以前からいくつか私が持っていた印象があります。
1.お酒好き、パーティー好きという社交的な面を持っている。
2.非常に自己主張が強く、決して謝らない。
3.半面、控えめな態度、謙遜、相手への思慮深い言動も目立つ(ヤンテの掟系)。

 今回ここに新たな面が2つ加わりました。
4.忙しいスケジュールの人たち。
5.人生に対して真摯で前向きな姿勢を持つ。

「忙しいスケジュール」については、実は前々から夫と義母の物事の進め方のスローペースに私はすっかり呆れかえっていました。例えば今回のデンマーク行きについては、私だったらすぐに会いたい人に連絡を取り、アポイントを取るだろうに、2人ときたら「それはデンマークに着いてから話しましょう」などという悠長なことを言っており、結局は会いたい親戚に会えずじまいで終わりました。ここでは長くなるのでまた違うときに書きたいと思いますが、夫は何事においても物事を悠長に構えていて結局はすべてが間に合わず、というタイプです(ただし仕事のときだけは違うのだそうです。本当かなあ?)。
 
 今回これを数名の方に話してみたところ、デンマーク人は本当にパズルのようにスケジュールを埋めていて、夫たちのような人は珍しいとの異口同音の意見をもらいました。さあ、どうでしょうか? でも確かに夫の友人達は一日にいくつもの予定を入れていたりします。それに寒くて外に出られない冬には、人との約束が何よりの過ごし方というのは、私もそろそろ実感しつつあるので「デンマーク人=忙しい」という図式は渡しも肯定しつつあります。逆に暇だと長い冬を乗り切れないのではないかとも思います。

 もうひとつの「人生に対する真摯で前向きな姿勢」は今回の滞在で非常に感銘を受けたことです。

 私は今、通信の大学に入学するかどうか迷っているのですが、その話をあるデンマーク人の友人に話したところ「ぜひ、やってみるべきだよ!カーステンも今、MBAを始めたんだよ。大丈夫、きっとできるし、やりたいと思ったらぜひチャレンジしてみるべきだよ」と笑顔でエンカレッジしてくれたのでした。そして他の人も、同じようにエンカレッジしてくれ、自分の体験談を話してくれました。学校と仕事と子育ての両立は非常に大変だった、でも自分もできたからきっと君もできるはずだよ、と。またもう一人の人は「私が何か役に立てることがあったらぜひメールをしてね」とメールアドレスを教えてくれました。

 誰に話してもこういう反応が来るのは嬉しい驚きでした。単に「すごいわねー」とか言うのではなく、ちゃかしたりすることもなく、心から応援し、知っている具体例を挙げ、チャレンジすることを推奨してくれる姿勢を私は新鮮に感じました。それだけ厳しい自然の中で、彼らが切り開いてきた自負と自信があり、それがデンマーク人の強さなのでしょうか。同じようにチャレンジしようという人に、だからこそ共感してくれるのでしょうか。

 今回の滞在では記録が始まって以来の暖冬とはいえ、やはり外出がままならない冬であり、人とのつながりの大切さやありがたさを改めて感じるものとなりました。