ろばが牧場で草を食べていますと、おおかみが、こちらをめがけてかけてくるのが見えました。
これはいけない、と思ったろばは、知恵をしぼって、いそいで、足をいためたふりをして歩いていました。
(ろばは、だいたい、のろまでばかだという評判ですが、ほんとうはりこうなのだそうです、このろばみたいに。)
やがておおかみは、ろばのそばまでやってきましたが、
「なぜ、そんなに足をひきずってるのか。」とたずねました。
そこでろばは、
「じつは、さっき生け垣をとびこえたとき、足に大きなとげがささりました。ですから、もし、わたしをめしあがるつもりでしたら、まず、とげを先にぬきとっておくのがいいでしょう、のどにささるとやっかいですから。」と返事しました。
おおかみは、それをきくと、それもそうだと考え、ろばのうしろへまわって、足をもちあげ、目をさらのようにして、ろばのひづめのあいだをしらべていました。
そのすきを見すまし、ろばは、足に力をこめて、おおかみの口をけりあげ、中の歯を、みながたがたにしてしまいました。
そこで、すっかりまいったおおかみは、こうかいしながらいいました。
「いや、ぼくがこんなめにあうのも、あたりまえのことだ。お父さんからは料理のしかたを教わったのに、医者のまねなんかやったんだから。」
これは、じぶんの性質にあわないことに手をだすとしくじるものだ、という話だといわれていますが、どうでしょうか。
講談社 青い鳥文庫
北風と太陽 イソップ童話集
イソップ 作 呉 茂一 訳
りこうなろばが、知恵を絞ってまちかまえている。
足に力をこめて、おおかみの口をけりあげる為に。
ウクライナの中に、りこうなろばが沢山いる。
そして、ロシア以外の周辺の国にも、りこうなろばが沢山いて、おおかみの歯をがたがたにするために、知恵を絞っている。