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便所の屈辱  史記:横山光輝

2012年11月15日 | 

范 雎(はんしょ)は、魏の中大夫・須賈(しゅか)に仕えた。

しゅかは魏の使者として斉に行き、范雎(はん しょ)もついていくことになる。

その時に范 雎(はんしょ)は、斉王に気に入られて斉王からの贈り物を受け取る。

それを知ったしゅかは、范雎(はん しょ)が魏の機密を斉に売ったのではないかと疑いを持ち、魏の宰相の魏斉(ぎせい)に報告する。

魏斉は范 雎(はんしょ)を捕らえて拷問にかけ、簀巻(すま)きにして便所にほうりこんでしまう。

魏斉の元を訪れた客達は、范雎(はん しょ)に小便をかけて彼を辱めた。

 

范 雎(はんしょ)は瀕死の状態ではあったが、屈辱に耐えられず番人に頼んで便所から逃げ出す。

瀕死の状態の范雎(はん しょ)は、友人の鄭安平(ていあんぺい)に助けを求めて、名前を張禄(ちょうろく)と改名した。

そして鄭安平(ていあんぺい)は、秦の王稽(おうけい)の従者になり張禄(ちょうろく)を推薦したので、張禄(ちょうろく)は秦の国に行くことになった。

 

その後、張禄(ちょうろく)は王稽(おうけい)の手助けで、秦の昭王に謁見が叶い知恵者である彼は昭王に気に入られて宰相の地位まで出世していく。

宰相になった張禄(ちょうろく)は、自分を辱めた魏斉への恨みを晴らす為に戦いの準備を始める。

慌てた魏は中大夫・須賈(しゅか)を、宰相張禄(ちょうろく)の元へ和議の使者として差し向ける。

それを知った張禄(ちょうろく)はわざとボロを纏い須賈(しゅか)がいる迎賓館へと出かけていく。

 

史記 横山光輝

 

もし范 雎(はんしょ)が学識もなく、知恵者でもなかったら。

もし斉王が范雎(はん しょ)のことを気にかけていなかったら。

彼はあまり出世をすることもなく、平凡な幸せな人生を送ったかもしれない。

范 雎(はんしょ)は須賈(しゅか)と魏斉(ぎせい)から疑いをかけられ、『便所の屈辱』という耐えがたい試練を受けたからこそ、秦の宰相まで出世していったのだろう。

 

范 雎(はんしょ)は宰相になった後、自分を助けてくれた鄭安平(ていあんぺい)と王稽(おうけい)を昭王に推挙する。

秦の法律では推薦した者が罪を犯せば、推薦した者も同じ罪に問われるのを覚悟の上でだ。

秦の天下統一を前に宰相の座を退く所、自分を助けた者に義理だてする所、自分に屈辱を与えた須賈(しゅか)を許す所。

自分が仕える昭王を天下の覇者へと導く所。 

どんな逆境でも受け入れて自分が成すべきことを成す。

それが成功者だろう。

 

それにしても史記の中で鼻そぎの刑とか、足切りの刑とか、手足を引き裂かれる刑とかあるけれど、まさか簀巻きにされて便所に放り込まれる刑があるとは……

 

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