野田聖子総務相、秘書がGACKT関与の「SPINDLE」で金融庁担当者に圧力(修正あり)
山本一郎 | 個人投資家・作家
7/19(木) 18:36
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(写真:つのだよしお/アフロ)
野田聖子総務大臣が、自身の秘書を問題のある仮想通貨業者(企画会社)と同席させる形で、金融庁の仮想通貨関連部署の担当者と面談を行い、金融行政についてこの事業者に対する「資金決済法に基づく仮想通貨交換業者の登録」についての質問を行ったことで、総務大臣という重量級閣僚の重要度を利用して圧力をかけたのではないか、と問題になっています。
野田氏側、金融庁に説明要求 仮想通貨調査対象業者伴い(朝日新聞デジタル 18/7/19)
この問題となる業者は、GACKTが広告塔となっている仮想通貨「SPINDLE」の取り扱いを巡るもので、この問題については昨年12月30日、私自身も当ヤフーニュース個人上で問題を提起し、またその後GACKT本人からブログにて脅迫めいた警告を頂戴したかどで警視庁に相談を申し入れる事態になっていました。
タレント「GACKT」が仮想通貨ICO参入も問題続発、フィンテックバブルはどうなるのか(Y!ニュース 山本一郎 17/12/30)
「GACKTのICO”SPINDLE”はどうしたら適法になるのか」にみる仮想通貨取引への注意喚起(Y!ニュース 山本一郎 18/1/13)
問題となる「SPINDLE」は、今年5月19日に海外取引所のYobit、HitBTC、Livecoin、BTC-Alphaにそれぞれ一般の仮想通貨取引の対象となる”上場”を果たします(日本人および日本居住者による取引は法的には不可)。しかしながら、「SPINDLE」の販売においては仮想通貨の取引規制にあたる国内でのSPINDLE販売および募集にあたるため、違法である可能性が高いことはかねてから指摘されてきました。
「仮想通貨交換業」は、内閣総理大臣の登録を受けた者(仮想通貨交換業者)でなければ、行うことは許されません(改正資金決済法63条の2)が、問題のSPINDLEを運営している「BLACK STAR & Co.,社」(東京都千代田区、以下「B社」)は金融庁が資金決済法で定める仮想通貨交換業者の認可を得ていないことが理由です。
今回、SPINDLE運営関係者と金融庁担当者との面談に総務大臣の野田聖子氏が秘書を同席させた理由は、この仮想通貨交換業者としての登録が運営元の「B社」または「B社の指定する日本およびマレーシア法人」に対して認められるよう、登録において便宜を求めた模様です。また、国内の仮想通貨市場を運営する法人複数に対して「SPINDLEが国内仮想通貨市場での売買が可能になるよう金融庁にも働きかけを求めた」内容であるとされています。
この「B社」については、上記私のヤフーニュース個人の記事にても既報の通り、広告塔としてGACKTが担ぎ上げられていましたが、その実態としては総務大臣・野田聖子氏の夫で指定暴力団・会津小鉄の元構成員である木村文信氏、およびその関係者である宮崎明氏らが中心となって活動してきたもので、むしろ今回問題となるGACKTや「過去に金融庁から行政処分経験のある宇田修一氏ら」は途中で関係筋から外されつつあった、と見られます。
本件については、野田聖子事務所に何度問い合わせても回答が得られないままだったのですが、なぜか朝日新聞が一報を報じると囲みの記者会見までやって野田聖子氏は釈明していました。
野田総務相「圧力ではない」 金融庁への説明要求認める(朝日新聞デジタル 18/7/19)
「圧力にあたらず」野田総務相 金融庁への説明要求で(日本経済新聞 18/7/19)
この野田聖子氏の夫である木村文信氏は、すでに週刊文春で既報の通り、指定暴力団会津小鉄会傘下の昌山組に所属していた過去があり、文書偽造とアダルトスパム配信とで前科二犯という経歴を持っています。
「会津小鉄会昌山組(平成十二年三月解散)幹部」
この警察関係者が解説する。
「暴力団対策法が施行された九二年当時、文信氏が京都の指定暴力団『会津小鉄会』傘下の『昌山組』に所属していたことを意味する文書です。府警が、昌山組の事務所に、組員として『木村文信』の名札が掛かっているのを確認している。木村は文信氏の旧姓です」
会津小鉄会――。京都市内に本拠を置き、九二年時点の組員数は約二千人。関西では山口組に次ぐ勢力で、そのルーツは江戸時代にまで遡る「名門ヤクザ」(暴力団関係者)だ。当時の高山登久太郎会長は、関東の稲川会や住吉会と、関西の山口組の間を結びつけるヤクザ界のキーマンだった。
(出典:『週刊文春』17年9月28日号)
文信氏は私文書偽造罪で起訴され、懲役一年(執行猶予付)の有罪判決を受けた。兄の元には文信氏から謝罪文が届いたという。
だが、文信氏は再び罪を犯してしまう。〇五年五月にも京都府警伏見署に逮捕され、後に五十万円の罰金刑を受けているのだ。
毎日新聞(〇五年五月十七日朝刊)によれば、当時アダルトサイト会社を経営していた文信氏は〇三年十二月、不特定多数の携帯電話にサービス情報を一方的に送りつける「スパムメール」と呼ばれる迷惑メールを大量に送信。通信設備の機能に障害を与えたとして、有線電気通信法違反の疑いで逮捕されたという。
「文信氏は京都市内の通信業者のドメイン名を不正に使用し、大量の出会い系サイトの広告メールを送っていました。宛先不明のメール約四十一万件が業者のサーバーに返送され、通信障害を起こしたのです。スパムメールに関しては業務妨害容疑で摘発された前例はありますが、より刑事罰が重い有線電気通信法違反で摘発されたのは全国初だった」(別の京都府警関係者)
(出典:『週刊文春』17年9月28日号)
GACKTについては、不適切な事務所の金銭・清算処理の問題についてや、事実上の違法オンラインカジノとなりかねないポーカー関連事業を巡る問題について週刊新潮からもツッコミを受け、一部反論しているものの、結局はどちらも事件化するようです。特に後者は先般より広告宣伝を担っていたAppBank社のマックスむらい氏も絡んでいました。
GACKT、事務所がひっそりと倒産していた またしても金銭トラブル?(デイリー新潮 18/5/31)
週刊新潮が6月7日に発売した記事について、GACKTの専属事務所ならびに日本のエージェントの見解(株式会社グラブ 18/6/12)
取材後に文言削除… 「AbemaTV」をカモにした「GACKT」のネットカジノ(デイリー新潮 18/7/12)
デイリー新潮の記事は、このSPINDLE関係者が投資家向けに回覧した資料に基づいて記事を執筆していたとみられます。SPINDLEの上場では胴元以外さほど儲からなかったため、これらのポーカーアプリで事実上のポーカーチップとして仮想通貨「SPINDLE」を流通させ、アプリが流行れば価格の低迷する「SPINDLE」の価値も上がるだろうという内容です。これらの資料に基づいて事業展開を行う考えであったならば、もう仮想通貨関連法規でいう資金決済法というより、刑法の賭場開帳図利に該当するものと見られ、このスキームでのオンラインカジノは海外事業者によるものだと強弁しても摘発される恐れはもちろんあります。
そして、これらの違法と見られるビジネスのど真ん中にいるのが野田聖子氏の夫である木村文信氏であり、また野田氏が知らずに「夫がやりました」と記者会見で釈明したとしても金融庁担当者と野田聖子事務所の秘書が同席し、具体的に認可するよう求めたり、国内企業の市場での上場を認めさせる働きかけを行ったという点で問題であろうと思います。
懸案である「野田聖子はこの木村文信の行ってきた仮想通貨ビジネスの問題点を知っていて秘書を同席させたのか」という点に関しては、野田聖子氏自身はあまり仮想通貨について詳しくなく、違法な点をすべて知り尽くすことのできる状況になかった、と見られます。しかしながら、陳情の形をとっているとはいえ適切ではないビジネスに関する善処や配慮を当局に求めるべく野田事務所の秘書を同席させる手配を行ったこと、5月以降、違法性のあるカジノアプリの展開に木村氏が関係したことも含めて言えば、野田聖子氏に政治家として、また総務大臣という重要閣僚として責任がなかったとは到底言えない問題になっていると考えます。
9月の総裁選を前に、ただでさえ米中貿易摩擦からの国際的な景気低迷や、放送・通信に関わる事案が多数横たわるなかで総務大臣が自ら火の玉になるのは困りものですし、総務省や金融庁の中の人たちも酷暑の中で大変気の毒ではありますが、事案は事案として粛々と処理していただければと願う次第です。
(修正 23:37)
本文文章中に、不正なリンクを掲載していたため、リンク先を修正しました。
また、一部ご指摘があり、あくまでSPINDLE関係者が投資家向けに提供した資料に基づく内容であったにもかかわらず、資料が出典であることを文中に記載しておりませんでした。謹んで修正、補記いたしました。ご指摘ありがとうございました。
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山本一郎 | 個人投資家・作家
7/19(木) 18:36
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(写真:つのだよしお/アフロ)
野田聖子総務大臣が、自身の秘書を問題のある仮想通貨業者(企画会社)と同席させる形で、金融庁の仮想通貨関連部署の担当者と面談を行い、金融行政についてこの事業者に対する「資金決済法に基づく仮想通貨交換業者の登録」についての質問を行ったことで、総務大臣という重量級閣僚の重要度を利用して圧力をかけたのではないか、と問題になっています。
野田氏側、金融庁に説明要求 仮想通貨調査対象業者伴い(朝日新聞デジタル 18/7/19)
この問題となる業者は、GACKTが広告塔となっている仮想通貨「SPINDLE」の取り扱いを巡るもので、この問題については昨年12月30日、私自身も当ヤフーニュース個人上で問題を提起し、またその後GACKT本人からブログにて脅迫めいた警告を頂戴したかどで警視庁に相談を申し入れる事態になっていました。
タレント「GACKT」が仮想通貨ICO参入も問題続発、フィンテックバブルはどうなるのか(Y!ニュース 山本一郎 17/12/30)
「GACKTのICO”SPINDLE”はどうしたら適法になるのか」にみる仮想通貨取引への注意喚起(Y!ニュース 山本一郎 18/1/13)
問題となる「SPINDLE」は、今年5月19日に海外取引所のYobit、HitBTC、Livecoin、BTC-Alphaにそれぞれ一般の仮想通貨取引の対象となる”上場”を果たします(日本人および日本居住者による取引は法的には不可)。しかしながら、「SPINDLE」の販売においては仮想通貨の取引規制にあたる国内でのSPINDLE販売および募集にあたるため、違法である可能性が高いことはかねてから指摘されてきました。
「仮想通貨交換業」は、内閣総理大臣の登録を受けた者(仮想通貨交換業者)でなければ、行うことは許されません(改正資金決済法63条の2)が、問題のSPINDLEを運営している「BLACK STAR & Co.,社」(東京都千代田区、以下「B社」)は金融庁が資金決済法で定める仮想通貨交換業者の認可を得ていないことが理由です。
今回、SPINDLE運営関係者と金融庁担当者との面談に総務大臣の野田聖子氏が秘書を同席させた理由は、この仮想通貨交換業者としての登録が運営元の「B社」または「B社の指定する日本およびマレーシア法人」に対して認められるよう、登録において便宜を求めた模様です。また、国内の仮想通貨市場を運営する法人複数に対して「SPINDLEが国内仮想通貨市場での売買が可能になるよう金融庁にも働きかけを求めた」内容であるとされています。
この「B社」については、上記私のヤフーニュース個人の記事にても既報の通り、広告塔としてGACKTが担ぎ上げられていましたが、その実態としては総務大臣・野田聖子氏の夫で指定暴力団・会津小鉄の元構成員である木村文信氏、およびその関係者である宮崎明氏らが中心となって活動してきたもので、むしろ今回問題となるGACKTや「過去に金融庁から行政処分経験のある宇田修一氏ら」は途中で関係筋から外されつつあった、と見られます。
本件については、野田聖子事務所に何度問い合わせても回答が得られないままだったのですが、なぜか朝日新聞が一報を報じると囲みの記者会見までやって野田聖子氏は釈明していました。
野田総務相「圧力ではない」 金融庁への説明要求認める(朝日新聞デジタル 18/7/19)
「圧力にあたらず」野田総務相 金融庁への説明要求で(日本経済新聞 18/7/19)
この野田聖子氏の夫である木村文信氏は、すでに週刊文春で既報の通り、指定暴力団会津小鉄会傘下の昌山組に所属していた過去があり、文書偽造とアダルトスパム配信とで前科二犯という経歴を持っています。
「会津小鉄会昌山組(平成十二年三月解散)幹部」
この警察関係者が解説する。
「暴力団対策法が施行された九二年当時、文信氏が京都の指定暴力団『会津小鉄会』傘下の『昌山組』に所属していたことを意味する文書です。府警が、昌山組の事務所に、組員として『木村文信』の名札が掛かっているのを確認している。木村は文信氏の旧姓です」
会津小鉄会――。京都市内に本拠を置き、九二年時点の組員数は約二千人。関西では山口組に次ぐ勢力で、そのルーツは江戸時代にまで遡る「名門ヤクザ」(暴力団関係者)だ。当時の高山登久太郎会長は、関東の稲川会や住吉会と、関西の山口組の間を結びつけるヤクザ界のキーマンだった。
(出典:『週刊文春』17年9月28日号)
文信氏は私文書偽造罪で起訴され、懲役一年(執行猶予付)の有罪判決を受けた。兄の元には文信氏から謝罪文が届いたという。
だが、文信氏は再び罪を犯してしまう。〇五年五月にも京都府警伏見署に逮捕され、後に五十万円の罰金刑を受けているのだ。
毎日新聞(〇五年五月十七日朝刊)によれば、当時アダルトサイト会社を経営していた文信氏は〇三年十二月、不特定多数の携帯電話にサービス情報を一方的に送りつける「スパムメール」と呼ばれる迷惑メールを大量に送信。通信設備の機能に障害を与えたとして、有線電気通信法違反の疑いで逮捕されたという。
「文信氏は京都市内の通信業者のドメイン名を不正に使用し、大量の出会い系サイトの広告メールを送っていました。宛先不明のメール約四十一万件が業者のサーバーに返送され、通信障害を起こしたのです。スパムメールに関しては業務妨害容疑で摘発された前例はありますが、より刑事罰が重い有線電気通信法違反で摘発されたのは全国初だった」(別の京都府警関係者)
(出典:『週刊文春』17年9月28日号)
GACKTについては、不適切な事務所の金銭・清算処理の問題についてや、事実上の違法オンラインカジノとなりかねないポーカー関連事業を巡る問題について週刊新潮からもツッコミを受け、一部反論しているものの、結局はどちらも事件化するようです。特に後者は先般より広告宣伝を担っていたAppBank社のマックスむらい氏も絡んでいました。
GACKT、事務所がひっそりと倒産していた またしても金銭トラブル?(デイリー新潮 18/5/31)
週刊新潮が6月7日に発売した記事について、GACKTの専属事務所ならびに日本のエージェントの見解(株式会社グラブ 18/6/12)
取材後に文言削除… 「AbemaTV」をカモにした「GACKT」のネットカジノ(デイリー新潮 18/7/12)
デイリー新潮の記事は、このSPINDLE関係者が投資家向けに回覧した資料に基づいて記事を執筆していたとみられます。SPINDLEの上場では胴元以外さほど儲からなかったため、これらのポーカーアプリで事実上のポーカーチップとして仮想通貨「SPINDLE」を流通させ、アプリが流行れば価格の低迷する「SPINDLE」の価値も上がるだろうという内容です。これらの資料に基づいて事業展開を行う考えであったならば、もう仮想通貨関連法規でいう資金決済法というより、刑法の賭場開帳図利に該当するものと見られ、このスキームでのオンラインカジノは海外事業者によるものだと強弁しても摘発される恐れはもちろんあります。
そして、これらの違法と見られるビジネスのど真ん中にいるのが野田聖子氏の夫である木村文信氏であり、また野田氏が知らずに「夫がやりました」と記者会見で釈明したとしても金融庁担当者と野田聖子事務所の秘書が同席し、具体的に認可するよう求めたり、国内企業の市場での上場を認めさせる働きかけを行ったという点で問題であろうと思います。
懸案である「野田聖子はこの木村文信の行ってきた仮想通貨ビジネスの問題点を知っていて秘書を同席させたのか」という点に関しては、野田聖子氏自身はあまり仮想通貨について詳しくなく、違法な点をすべて知り尽くすことのできる状況になかった、と見られます。しかしながら、陳情の形をとっているとはいえ適切ではないビジネスに関する善処や配慮を当局に求めるべく野田事務所の秘書を同席させる手配を行ったこと、5月以降、違法性のあるカジノアプリの展開に木村氏が関係したことも含めて言えば、野田聖子氏に政治家として、また総務大臣という重要閣僚として責任がなかったとは到底言えない問題になっていると考えます。
9月の総裁選を前に、ただでさえ米中貿易摩擦からの国際的な景気低迷や、放送・通信に関わる事案が多数横たわるなかで総務大臣が自ら火の玉になるのは困りものですし、総務省や金融庁の中の人たちも酷暑の中で大変気の毒ではありますが、事案は事案として粛々と処理していただければと願う次第です。
(修正 23:37)
本文文章中に、不正なリンクを掲載していたため、リンク先を修正しました。
また、一部ご指摘があり、あくまでSPINDLE関係者が投資家向けに提供した資料に基づく内容であったにもかかわらず、資料が出典であることを文中に記載しておりませんでした。謹んで修正、補記いたしました。ご指摘ありがとうございました。
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