野田聖子総務相、秘書がGACKT関与の「SPINDLE」で金融庁担当者に圧力(修正あり)

2018年07月21日 | 政治社会問題
野田聖子総務相、秘書がGACKT関与の「SPINDLE」で金融庁担当者に圧力(修正あり)
山本一郎 | 個人投資家・作家
7/19(木) 18:36
ツイート
シェア
ブックマーク
(写真:つのだよしお/アフロ)

 野田聖子総務大臣が、自身の秘書を問題のある仮想通貨業者(企画会社)と同席させる形で、金融庁の仮想通貨関連部署の担当者と面談を行い、金融行政についてこの事業者に対する「資金決済法に基づく仮想通貨交換業者の登録」についての質問を行ったことで、総務大臣という重量級閣僚の重要度を利用して圧力をかけたのではないか、と問題になっています。

野田氏側、金融庁に説明要求 仮想通貨調査対象業者伴い(朝日新聞デジタル 18/7/19)

 この問題となる業者は、GACKTが広告塔となっている仮想通貨「SPINDLE」の取り扱いを巡るもので、この問題については昨年12月30日、私自身も当ヤフーニュース個人上で問題を提起し、またその後GACKT本人からブログにて脅迫めいた警告を頂戴したかどで警視庁に相談を申し入れる事態になっていました。

タレント「GACKT」が仮想通貨ICO参入も問題続発、フィンテックバブルはどうなるのか(Y!ニュース 山本一郎 17/12/30)

「GACKTのICO”SPINDLE”はどうしたら適法になるのか」にみる仮想通貨取引への注意喚起(Y!ニュース 山本一郎 18/1/13)

 問題となる「SPINDLE」は、今年5月19日に海外取引所のYobit、HitBTC、Livecoin、BTC-Alphaにそれぞれ一般の仮想通貨取引の対象となる”上場”を果たします(日本人および日本居住者による取引は法的には不可)。しかしながら、「SPINDLE」の販売においては仮想通貨の取引規制にあたる国内でのSPINDLE販売および募集にあたるため、違法である可能性が高いことはかねてから指摘されてきました。

 「仮想通貨交換業」は、内閣総理大臣の登録を受けた者(仮想通貨交換業者)でなければ、行うことは許されません(改正資金決済法63条の2)が、問題のSPINDLEを運営している「BLACK STAR & Co.,社」(東京都千代田区、以下「B社」)は金融庁が資金決済法で定める仮想通貨交換業者の認可を得ていないことが理由です。

 今回、SPINDLE運営関係者と金融庁担当者との面談に総務大臣の野田聖子氏が秘書を同席させた理由は、この仮想通貨交換業者としての登録が運営元の「B社」または「B社の指定する日本およびマレーシア法人」に対して認められるよう、登録において便宜を求めた模様です。また、国内の仮想通貨市場を運営する法人複数に対して「SPINDLEが国内仮想通貨市場での売買が可能になるよう金融庁にも働きかけを求めた」内容であるとされています。

 この「B社」については、上記私のヤフーニュース個人の記事にても既報の通り、広告塔としてGACKTが担ぎ上げられていましたが、その実態としては総務大臣・野田聖子氏の夫で指定暴力団・会津小鉄の元構成員である木村文信氏、およびその関係者である宮崎明氏らが中心となって活動してきたもので、むしろ今回問題となるGACKTや「過去に金融庁から行政処分経験のある宇田修一氏ら」は途中で関係筋から外されつつあった、と見られます。

 本件については、野田聖子事務所に何度問い合わせても回答が得られないままだったのですが、なぜか朝日新聞が一報を報じると囲みの記者会見までやって野田聖子氏は釈明していました。

野田総務相「圧力ではない」 金融庁への説明要求認める(朝日新聞デジタル 18/7/19)

「圧力にあたらず」野田総務相 金融庁への説明要求で(日本経済新聞 18/7/19)

 この野田聖子氏の夫である木村文信氏は、すでに週刊文春で既報の通り、指定暴力団会津小鉄会傘下の昌山組に所属していた過去があり、文書偽造とアダルトスパム配信とで前科二犯という経歴を持っています。

「会津小鉄会昌山組(平成十二年三月解散)幹部」

 この警察関係者が解説する。

「暴力団対策法が施行された九二年当時、文信氏が京都の指定暴力団『会津小鉄会』傘下の『昌山組』に所属していたことを意味する文書です。府警が、昌山組の事務所に、組員として『木村文信』の名札が掛かっているのを確認している。木村は文信氏の旧姓です」

 会津小鉄会――。京都市内に本拠を置き、九二年時点の組員数は約二千人。関西では山口組に次ぐ勢力で、そのルーツは江戸時代にまで遡る「名門ヤクザ」(暴力団関係者)だ。当時の高山登久太郎会長は、関東の稲川会や住吉会と、関西の山口組の間を結びつけるヤクザ界のキーマンだった。

(出典:『週刊文春』17年9月28日号)

 文信氏は私文書偽造罪で起訴され、懲役一年(執行猶予付)の有罪判決を受けた。兄の元には文信氏から謝罪文が届いたという。

 だが、文信氏は再び罪を犯してしまう。〇五年五月にも京都府警伏見署に逮捕され、後に五十万円の罰金刑を受けているのだ。

 毎日新聞(〇五年五月十七日朝刊)によれば、当時アダルトサイト会社を経営していた文信氏は〇三年十二月、不特定多数の携帯電話にサービス情報を一方的に送りつける「スパムメール」と呼ばれる迷惑メールを大量に送信。通信設備の機能に障害を与えたとして、有線電気通信法違反の疑いで逮捕されたという。

「文信氏は京都市内の通信業者のドメイン名を不正に使用し、大量の出会い系サイトの広告メールを送っていました。宛先不明のメール約四十一万件が業者のサーバーに返送され、通信障害を起こしたのです。スパムメールに関しては業務妨害容疑で摘発された前例はありますが、より刑事罰が重い有線電気通信法違反で摘発されたのは全国初だった」(別の京都府警関係者)

(出典:『週刊文春』17年9月28日号)

 GACKTについては、不適切な事務所の金銭・清算処理の問題についてや、事実上の違法オンラインカジノとなりかねないポーカー関連事業を巡る問題について週刊新潮からもツッコミを受け、一部反論しているものの、結局はどちらも事件化するようです。特に後者は先般より広告宣伝を担っていたAppBank社のマックスむらい氏も絡んでいました。

GACKT、事務所がひっそりと倒産していた またしても金銭トラブル?(デイリー新潮 18/5/31)

週刊新潮が6月7日に発売した記事について、GACKTの専属事務所ならびに日本のエージェントの見解(株式会社グラブ 18/6/12)

取材後に文言削除… 「AbemaTV」をカモにした「GACKT」のネットカジノ(デイリー新潮 18/7/12)

 デイリー新潮の記事は、このSPINDLE関係者が投資家向けに回覧した資料に基づいて記事を執筆していたとみられます。SPINDLEの上場では胴元以外さほど儲からなかったため、これらのポーカーアプリで事実上のポーカーチップとして仮想通貨「SPINDLE」を流通させ、アプリが流行れば価格の低迷する「SPINDLE」の価値も上がるだろうという内容です。これらの資料に基づいて事業展開を行う考えであったならば、もう仮想通貨関連法規でいう資金決済法というより、刑法の賭場開帳図利に該当するものと見られ、このスキームでのオンラインカジノは海外事業者によるものだと強弁しても摘発される恐れはもちろんあります。

 そして、これらの違法と見られるビジネスのど真ん中にいるのが野田聖子氏の夫である木村文信氏であり、また野田氏が知らずに「夫がやりました」と記者会見で釈明したとしても金融庁担当者と野田聖子事務所の秘書が同席し、具体的に認可するよう求めたり、国内企業の市場での上場を認めさせる働きかけを行ったという点で問題であろうと思います。

 懸案である「野田聖子はこの木村文信の行ってきた仮想通貨ビジネスの問題点を知っていて秘書を同席させたのか」という点に関しては、野田聖子氏自身はあまり仮想通貨について詳しくなく、違法な点をすべて知り尽くすことのできる状況になかった、と見られます。しかしながら、陳情の形をとっているとはいえ適切ではないビジネスに関する善処や配慮を当局に求めるべく野田事務所の秘書を同席させる手配を行ったこと、5月以降、違法性のあるカジノアプリの展開に木村氏が関係したことも含めて言えば、野田聖子氏に政治家として、また総務大臣という重要閣僚として責任がなかったとは到底言えない問題になっていると考えます。

 9月の総裁選を前に、ただでさえ米中貿易摩擦からの国際的な景気低迷や、放送・通信に関わる事案が多数横たわるなかで総務大臣が自ら火の玉になるのは困りものですし、総務省や金融庁の中の人たちも酷暑の中で大変気の毒ではありますが、事案は事案として粛々と処理していただければと願う次第です。

(修正 23:37)

 本文文章中に、不正なリンクを掲載していたため、リンク先を修正しました。

 また、一部ご指摘があり、あくまでSPINDLE関係者が投資家向けに提供した資料に基づく内容であったにもかかわらず、資料が出典であることを文中に記載しておりませんでした。謹んで修正、補記いたしました。ご指摘ありがとうございました。

ツイート
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米中貿易戦争激化で、ついに習近平に「激烈批判」が続出

2018年07月21日 | 国際紛争 国際政治 
長い文章で最後まで読んでいない。

「貿易戦争などとホザイてるが、米中の世界支配を巡る戦いだ」

蛮族中国が熊公の習近平で本性を顕にしてきた。アメ公がようやく気が付き(欧州同様)反撃に出てきた。

経済戦争を仕掛けて中国の国力をそいで衰退させることが軍事的に戦争を仕掛けるよりリスクが少ない。巨大な中国のバカを作ったのは欧米とニッポン自身だ。

銭儲けに目が生き中国の野望に利用されてきた。

ようやく習近平の代になり本性が出て(均平の野蛮性格は人相を見れば分かる)コーカソイドがヤバイと気がついたのだ。

上記コメントをヤフーJPニュースで書いたら不掲載だ。この状況をして如何にニッポンが特亜に支配されているか分かる。

ヤフーJPは韓国ハンネットに買収されて相当の年月が経過している。

愚民どもが、やれ犬猫が可愛い、、、弁当をお飾り~~~などとうつつを抜かしてる間にすっかり裏で支配された戦後の馬ヵニッポン。



ぼーーーと 生きてんじゃねえよ!!!!






米中貿易戦争激化で、ついに習近平に「激烈批判」が続出
7/19(木) 8:00配信 現代ビジネス
米中貿易戦争激化で、ついに習近平に「激烈批判」が続出
写真:現代ビジネス
政局急変、7月の熱い1週間
 中国で夏恒例の北戴河会議が開催される時期が近づいてきたが、過去1週間、中国政治が風雲急を告げ始めた。

 ①7月4日:上海で若い女性が「習近平の独裁に反対」と叫んで、習近平の肖像に墨汁をぶちまける動画をツイッターに投稿(これが反響を呼んで、「墨かけ」が流行しそうになったため、当局が慌てて女性や家族を拘束する事態に)

 ②7月9日:北京の街中の習近平肖像を撤去するように求めるご当局のお達しがあったとするニュースが流れる(未確認)

 ③7月9日:香港で「江沢民、朱鎔基ら党の長老が連名で習近平の独裁傾向を批判し、政治局拡大会議の開催を求める意見書を提出した、王滬寧は既に解任された」等の噂が報じられた

 ④7月9日:人民日報第1面に「習近平」の名前が見当たらなかった(5年ぶりの出来事、なお15日1面にも習近平の名前はなかった)

 ⑤7月11日:新華社傘下の「学習時報」が、1980年に華国鋒が個人崇拝を許したと批判されて自己批判、以後現役指導者の肖像を飾ることを禁ずる布令が出された故事を紹介

 ④や⑤は公式メディアで確認できる「事実」だ。ここから見て、少なくともメディアに対して「個人崇拝を煽るな」といった指示が下りた可能性はかなり大きい。

 ③が「長老連名の意見書」とか「王滬寧解任」とか言うのは眉唾だが(後述)、「火のないところに煙は立たぬ」とも言う。党内に習近平に対する批判の声が挙がっているのは事実なのだろう。

 去年はさんざん「習近平が権力を確立した」、「2027年まで3期続投は確実」といった言説を聞いたが、今度は「習近平が批判に晒されている」という。唐突感は否めない。

 少し横道にそれたが、解説すれば、去年の「権力確立」言説は誇張が過ぎた(とくに日本のメディア)。そのことが「唐突感」を倍加している。

 筆者は本欄で「日本では今回の憲法改正で『習近平が2022年以降も国家主席に留まり続けることが決まった』と言わんばかりの論調が見られるが、ほんとうにそうなるかは5年経ってみないと分からない」と述べたが、習近平に対する党内の批判を窺わせる動きを見て「やはり」という気持ちだ。

対米関係の急悪化は習近平の責任か
 北京の政治ムードが急変した原因はずばり、米中貿易戦争勃発に代表される米中関係の悪化だ。

 「長老が連名の意見書」、「王滬寧解任」と論ずる香港情報も「習近平が無用な挑発をしたせいで対米関係が悪化して貿易戦争を呼び込んでしまったからだ」と論じている。

 しかし、そう聞いたら習近平はさぞかし不服だろう。習の対米政策は、米国との対立を避けることに尽きると言っても過言ではなかったからだ。

 とくに当選早々「1つの中国」原則に難癖を付けたりするトランプを見てから、やり取りには最大限の注意を払ってきたし、北朝鮮問題でも最大限の協力をしてきた。

 後述するように、中国は昨年から景気が悪くなることを覚悟して、引き締め色の強い経済政策を採ってきた。

 そのさなかにトランプが選挙戦中に吹聴していたような貿易戦争を仕掛けられては困るから、今春以来話し合いによる解決を目指してそれなりに努力もしてきたのだ。

 そうは言っても、習近平に一切責任がないとは言えない。傍から米中関係を眺めていて、習近平にも責任があると感じることが2つある。

 第1は、昨年の第19回中国共産党大会で、「30年後には米国に取って代わって世界一の国になる」と宣言したことだ(米国人はそう受け止めた)。

 そこで言及された「中華民族の偉大な復興」は20年来用いられてきた言葉だが、習近平は、この抽象的な目標を「2035年から2050年までに『社会主義現代化強国』を建設する」ことだと定義し直した。

 そこには経済規模はもとより、軍事力でもソフトパワーでも米国を凌駕する、つまり世界一になるニュアンスが込められていた。

 第2は、習近平が米国の(厳密には「西側」の)政治制度や価値観を見下したことだ(米国人はそう受け止めた)。

 中国は以前から「西側流の政治制度は受け入れない」としてきたが、それは「中国には中国の国情があるから」だった。

 ところが、最近はさらに1歩進めて、「中国の社会主義モデルで世界の途上国や民族に全く新しいモデルを提供する、人類問題の解決に貢献できる中国ソリューションを提供する」と言い出した(第19回党大会)

 筆者の見るところ、このステップアップのきっかけになったのは、トランプ大統領の誕生やブレグジット(英国のEU脱退)だ。

 習近平はこれらの選択を西側政治制度が起こした「エラー」とみて、そんな重大エラーを起こす西側の政治制度よりも、中国の(賢人による開発独裁型)制度の方が優れている」と断じた(多くの米国人がそう受け止めた)。

すでにトランプ問題ではない
 中国に「やがて取って代わってやる」と宣言され、自らの信奉する政治制度を「中国より劣っている」と見下されたせいで、「負けず嫌い」な米国の闘志のスイッチが入った。

 (そこにもう1つ、「AI(人工知能)やビッグデータなどを巡るハイテク競争で中国に負けるかもしれない」という危機意識も加わるのだが、ここでは詳論しない)。

 いまや米中関係の悪化は「トランプ問題」の域をとうに超えている。

 「中国は『国家資本主義』や『産業政策』を手段として、米国の覇権と米国がこれまで維持してきた世界秩序を引っ繰り返そうとする『戦略的競争相手』であり、中国の行いをこれ以上容認する訳にはいかない……」

 こういう認識がトランプ政権だけでなく、いまや米国政策エリートたちの間で超党派的コンセンサスになったからだ。米中貿易戦争でも、中国の産業政策や知財権問題を巡るトランプ政権の強硬姿勢には、トランプを嫌う陣営からも強い支持があるのだ。

 この半年あまり、米国を訪問して意見交換する機会を持った中国の識者たちは、米側の対中観が短期的には元に戻せないほど悪化してしまったことを思い知らされて帰っていった。

 西側、とくに米国の制度を軽侮するような感覚は、中国でこの2、3年、広く共有されていた「時代の気分」だった。

 習近平は、中国の力の限界を知るからこそ米国との対立回避に腐心したのだと思うが、この1、2年、党大会など内政面で「軽侮」の方向に重心を移しすぎた。党内でもそのバランス失調を批判する声があるのだと思う。

 そう見れば、王滬寧が批判の矢面に立たされている話も腑に落ちる。

 西側の政治体制や価値観に対する忌避感・軽蔑感は習近平本人のものだが、その漠とした感覚を「理論」に仕立て直して、通りの良いキャッチコピーを発案したのが王だからだ。

 平たく言えば「おまえが美辞麗句で煽って、習近平をいい気にさせ過ぎた」と見られているのだろう。

好機は去り、過剰債務問題深刻に
 中国には今世紀の初めから「戦略的機遇期」という言葉があった。「比較的平和な世界で、自由貿易体制を活用して中国の経済成長を図ることができる得難いチャンスの時期」だという意味だ。

 いまの米中関係は、中国があと15年、できれば30年続いてほしかった「戦略的機遇期」を、突然米国から「もう終わりだ」と通告されて呆然としているようなところがある。

 自信をつけて自己主張を強める中国だが、一方では「いまの中国はまだまだダメだ」といった否定的なセルフイメージも根強いので、米中貿易戦争勃発に直面して、とくに経済の先行きについて、にわかに不安が広がっている。

 先に「中国は昨年から景気が悪くなることを覚悟して、引き締め色の強い経済政策を採ってきた」と述べた。過去にも本欄で取り上げたことがある問題だが、手短に解説する。

 習近平は1期目にこれまでの投資と借金頼みの成長モデルからの脱却を目指した「新常態」路線を打ち出したが、2016年に地方政府が公共投資アクセルを踏み込むのを許したせいで問題がぶり返した。

 いま中国経済が抱えている、金融リスクの高まり、地方政府の債務累積・財政難などは、みな、この「ぶり返し」がもたらした後遺症だ。

 とくに、地方政府のインフラ投資は、地方政府の財務体質の悪化によって銀行が金を貸せる事業ではなくなっている。

 その隙間に入り込むかたちでシャドーバンクが金を貸す、貸金債権は直ちに転売されて高利回りの「理財商品」に化けて一般投資家に売られる……「問題がおきたときは、お上が何とかしてくれる」という「暗黙の保証」信仰が根強いせいで、そんな「リスクを煮詰めた」ような危ない金融が膨張してしまった。

 事態を強く憂慮した当局は昨年から、金融調節を通じて市場金利を引き上げて金融機関のリスクテイクを抑止し始めた。それとともに、従来の金融監督の手の届かない領域で膨張した危ない金融に対する監督を強化すべく、簿外で処理されている業務を財務諸表に取り込むこと、理財商品の元本保証慣行の禁止など、思い切った措置を計画してきた。

 シャドー金融のバルブを閉める、財源もないのにインフラ投資を止めない地方政府を締め上げる……5年、10年前なら経済の大失速を招いたであろう「荒療治」だ。

 それでも経済が最近まで減速の兆しを見せなかったのは、この5年で急成長した「ニューエコノミー」の下支えがあったからだ。

 2期目に入った習近平政権はそれを頼みにして「いまなら景気が減速しても切り抜けられる」と踏んで金融のデレバレッジの大課題に取り組もうとした訳だ。


このままでは日本の二の舞
 6月半ば、「5月の固定資産投資は18年ぶり、実質消費は15年ぶりの低い伸び」と、いよいよ成長減速が数字に表れ始めたが、それと軌を一にして米中貿易戦争が深刻化したことが大誤算だった。

 トランプ政権が貿易戦争を再燃させたのを見て、ビジネスマインドは一気に悪化、株も人民元も急落する結果になった。

 そのせいで、「断固進める」はずだったシャドーバンキング規制、中でも最も有害な「暗黙の保証」信仰の解消を狙った理財商品に対する規制導入を先送りする雰囲気が強まっているという(権威ある経済雑誌「財新」の7月8日付け報道)。想定外の経済減速、ビジネスマインドの悪化を見て、政府が動揺している様子が窺える。

 1期目の「新常態」路線が頓挫したのも、2015年に起きた株暴落と元安騒ぎのせいで景気拡大を求める声が強まったからだった。

 今度はトランプとの貿易戦争が理由だという……・かねて、過剰債務問題を強く警戒し対策を訴えてきた習近平の一の経済ブレーン、劉鶴副総理などは「今を逃したら、いつ経済政策の脱線を元の軌道に戻せるのか」と訴えていることだろう。

 日本は1990年代、バブル崩壊後の落ち込みを財政出動で乗り切ったせいで、財政が極端に悪化、それを小泉政権がやや快方に向かわせたと思ったら、今度はリーマンショックが来ていよいよ解決不能な境地に陥ってしまった。

 劉鶴副総理は、「いまデレバレッジを先送りしたら、そんな日本経済の轍を踏むことになる」と憂えているのではないだろうか。中国が直面する金融問題も一皮剥けば(地方を中心とする)財政問題に帰するところが大きいからだ。

 「西側より優れた政治システム」を以てしても、できないことはあるらしい。

「政変」は起きるのか
 冒頭で紹介した香港報道(「江沢民、朱鎔基ら党の長老が連名で習近平の独裁傾向を批判し、政治局拡大会議の開催を求める意見書を提出した、王滬寧は既に解任された」等の噂)はどのくらいの信憑性があるのか。

 日本の中国報道は「極端から極端へ振れる」悪い癖があるので、この香港情報のせいで、今度は「3期続投確定」とは真逆に、「習近平が権力を失った」「後任は胡春華だ」等々の報道が氾濫しやしないか、と心配だが、結論から言えば、この報道は針小棒大なガセネタだと思う。

 いまは平時ではなく、米国との貿易戦争の最中だ。習近平の執政にどれだけ不満であろうと、トランプという敵を前に、指導者層が仲間割れを起こすことがどれほど愚かしいことか、元老たちは百も承知のはずだからだ。

 むしろ「元老に建議書提出の動きあり」などという風説を耳にしたら、「それは米国の特務が中国を攪乱するために流した謀略情報ではないか」と疑うのが中国政治家の反応というものだろう。

 経済の先行きに不安が広がっている……それでは習近平はトランプの要求に屈して妥協するのか? 

 筆者は、習近平も「大人の妥協で事が収まるのなら、是非そうしたい」と考えているだろうと思うが、問題はそんな「大人の妥協」が可能か、一度譲歩したらトランプはまた蒸し返すのではないか? だ。中国の指導者達は、いずれについても楽観していないだろう。

 対米交渉のアンカー役と目された王岐山は、米国が制裁を発効させる7月6日前に姿を現さなかった。「いま出ていっても、トランプ政権に弱みを見せることにしかならない」と考えているからだろう。

 だとすれば、王岐山が出ていくときは、制裁措置の撃ち合いが米中両国に限らず世界経済に及ぼす実害がはっきり見えてきて、世界中で悲鳴が上がるときだ。そこで米国がどこまで続けるつもりかを見極めようとするだろう。

 役者っ気もある王岐山のことゆえ、「トランプさん、仮に貴方が2024年まで大統領を務めるなら、中国人民と中国共産党は、最後まで貿易戦争にお付き合いする覚悟だ」と啖呵を切るだろう。

7/19(木) 8:00配信 現代ビジネス
日中戦争並みの泥沼化も
 むしろ、トランプ政権側が情勢を楽観しすぎているのではないか、気懸かりだ。「中国の対米輸入額は1300億ドルしかない。我々が制裁規模を2500億ドル、4500億ドルと引き上げていけば随いて来れなくなる」といった見方でいるらしいからだ。

 中国の指導者は経済の損得勘定だけで判断する訳ではない。ほかに政治勘定もあって、ここで恫喝に屈するような弱腰を見せれば、「売国奴!」の罵声を浴びるのだという中国の「国情」をまったく知らないのだろう。

 昔「一発殴ればぎゃふんと参る」と過信して中国に攻め込んで、高い計算違いのツケを払った国があったことを彷彿とさせるような成り行きだ。

 「月満つれば則ち虧(か)く……」習近平はこの数年間「上げ潮」に乗っていた自分の運気が下降曲線に入ったことを感じていることだろう。しかし、いま運気の上昇を感じているように見えるトランプにもやがて下降のときが巡ってくる。

 不合理なのは、そういう局面に至るまで、さらには至った後も、トランプと彼を選んだ米国民が「自業自得」の罰を受けるよりも、もっと過酷な罰を力の弱い無辜の国の国民が受けることだ。

津上 俊哉



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする