指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『尼寺博徒』

2017年09月03日 | 映画

「逝ける映画人特集」、この日は加藤治子。

加藤は、なんとも不思議な感じの女優で、テレビで見られるように普通のいいお母さんのように見えて、実は複雑な心性があるという感じが見えたものだ。

多分、それは彼女に経歴にも現れている。彼女の始まりがSKDであり、矢口陽子らと同期だったとは、もう知らない人も多いだろう。

その後、文学座で劇作家加藤道夫と結婚し、加藤は名作『なよたけ』や『思い出を売る男』などを書くが、自殺してしまう。

文学座での芝居について、私は見たことがないが、最晩年の新国立劇場での『こんいちは、母さん』は見たが、年を感じさせない迫力のある演技だった。

尼寺博徒は、博打の名人伴淳三郎の娘に生まれた野川由美子が、あるいきさつから尼になり、僧院に入ると、その庵主が加藤治子。

例によって、橘ますみ、後藤ルミ、渡辺やよいらによってのレズ的シーンが、この映画の売り物。

最後、安部徹によってだまし取られた僧院の権利書を取り戻すために、手本引き対決が行われる。

相手のイカサマ師も、野川の「眼力の強さ」に押され、イカサマができず野川の勝ちとなる。

だが、安部は言う、「ここから無事に出られると思っていたのか!」

これには場内大爆笑!

野川由美子は、日活でも「雌猫シリーズ」とこの東映の「尼寺シリーズ」と、二つの会社で女ヤクザ映画に主演した珍しい女優である。

その意味では、大変に器用で、なんでもこなせる女優だったと言える。

監督の村山新治は、1950年代末は、東宝の岡本喜八、大映の増村保造らと並ぶ期待される東映の俊英監督だったが、次第に普通の監督になってしまったようだ。

本来、村山新治は、兄の村山英治が、記録映画の桜映画社の創立者であるように、弟の彼も、リアリズムだったので、ヤクザ映画という本来作り事には不向きだったと思う。

ヤクザ映画は、本質的に様式美なので、東映京都が第一なのは当然のことだったのである。

フィルムセンター



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。