指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『迷走地図』

2020年04月03日 | 映画
1983年の松竹映画で、製作は松竹と霧プロになっている。
公開されたとき、私は『ミュージック・マガジン』の映画評で古臭いと書いたが、40年近くたって見ると、古臭さが消えて娯楽性のみが光っている。
一口に言えば、役者たちの「演技やりすぎ合戦」というべきだろうか。

                    

主人公は、日本憲政党のナンバー2の勝新太郎で、モデルとしては田中角栄だろうが、河野一郎も入っている。
その妻は岩下志麻、銀座のクラブのママが松坂慶子、そのパトロンで財閥の首領は内田朝雄、現在の首相は芦田伸介、中間派のボスは伊丹十三で、これは田中角栄の声色で笑わせる。意外にも、伊丹は結構器用な俳優だったのだ。
内閣官房長官が大滝秀治、勝新太郎に資金を提供する京都の金融業者は、森脇正光と思われ、戦後の自民党政権の政争を集約した内容になっている。この森脇役は、宇野重吉で、彼は山本薩夫監督の『金環食』でも森脇を演じていた。

内田の会社から勝新のところへ秘書として送り込まれていたのが渡瀬恒彦で、彼への岩下のラブレターの暴露で、勝新は総裁選への出馬を断念させられる。これは、佐藤栄作夫人の佐藤寛子の「恋文事件」のことだろう。
今回見て、監督の野村芳太郎は、この佐藤寛子の行動を肯定していることに気付いた。
政治ばかりで、自分も家庭もかえりみない勝新のような日本の政治家に代表される男たちに対し、その女性が別の男に引かれるのも当然と言っている。
その他、面白いのが二世議員津川雅彦の古参秘書で、津川から首にされ、タレント議員の朝丘雪路にバカにされる田舎者が加藤武で、これも最高。
松坂慶子は、本当はレズで、その相手はクラブの女早乙女愛で、この時その巨乳に驚いたが、彼女もとっくにいない。
上記の俳優の内、まだご健在なのは、岩下志麻と松坂慶子くらいだと思うと、ぞっとする。
衛星劇場


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