指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『男の掟』

2019年11月09日 | 映画
渡哲也は、日活最後のスターとして売りだされ、石原裕次郎作品のリメイクが多かったが、ほとんど当たらなかった。
唯一の秀作は、舛田利雄監督の『紅の流れ星』だった。
1968年には、『「無頼」より大幹部』が公開されて、裕次郎とは違うイメージがやっと探りあてられた。
裕次郎の明るさに対し、渡は少し暗いイメージがあるからである。
役者の持つイメージと作品は、合致しないとヒットしないものなのだ。



1968年の江崎実生監督のこれは、木場の建築業の宗方家を描いていて、当主は辰巳龍太郎、息子は長男堀雄二と三男の渡で、次男は南方で真珠貝採取をやっていたが、事故で死んでいる。
冒頭は、神社(富岡八幡か)の祭礼で、辰巳組の幹部の丹波哲郎が、敵対する組長を1960年に刺殺して刑に服し、8年後に出てくるところから始まる。敵の組長は、植村健二郎のようだが、よく見えなかった。
高度成長の開始時期に始まり、好景気の真っ最中の時にドラマが展開される。
東映のヤクザ映画に対し、日活はモダンなので、東映の明治・大正ではなく、現代を舞台にヤクザ映画を展開せざるをえない。ここは、非常に苦しいところである。
製作者の伊地知啓も、「東映のヤクザ映画をなんとかして盗んで・・・」と言われたと言っている。

丹波が出所してくると、組は近代的な会社になっていて、辰巳は社長、堀は専務、渡も取締役。
敵対する組は、植村の息子小池朝雄が社長になっていて、辰巳の会社を潰そうといろいろと企んでいる。
国の団地の造成工事に、辰巳の会社が入札で宗方が勝つが、小池の策略で、わざと負けたのだ。
そこに、死んだ次男とフィリピンで結婚したという野際陽子が現れ、次男の遺産の分け前を要求する。
だが、それも小池の策略で、野際は詐欺師の名和宏の妻だった。
野際陽子が、当時流行のミニ・スカートで現れ、軽い渡は、すぐに「きれいな足だ・・・」という。
丹波の妹の太田雅子(梶芽衣子)は、渡に惚れているので、怒る。

渡辺武信氏によれば、「アクションと人情話が混合して中途半端」とあるが、辰巳の妻で坪内美詠子が出ているなど、確かに若者の世界と中年のが混淆している。
野際陽子の嘘を暴くため、渡と堀雄二が、野際を詰問すると『七人の刑事』風になるのがおかしい。
最後は、カーレースと工事機械の交渉のために渡哲也が、羽田空港からノースウエスト航空でアメリカに行くところでエンド。
まだ、もちろん羽田が国際空港で、ノースウエスト航空もまだあったのだ。今はデルタ航空になっているらしい。
木場もまだ、貯木をしていて、木場らしい情景があるが、今は新木場に移転している。

チャンネルNECO




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