指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『ゴメスの名はゴメス』

2019年02月11日 | 映画

長い間見たいと思っていて機会がなかなかなく、やっと見るとガッカリと言う作品は結構多いが、これもそれに属する映画。

  

中東で石油開発をしていたという技師の仲代達矢が帰国する途中に香港に寄って学生時代の友人平幹二郎に会うが、すぐに姿を消してしまう。

彼の消息を探すが、その中で同棲していた不幸な中国少女の栗原小巻、新聞記者芥川比呂志、貿易商の永田靖らと邂逅するが、分かったのは平幹二郎は、スパイになっていて、ベトナム戦争の和平を目指していたというのだ。

そして、二重スパイだったことがばれて殺されたというのだ。

成島東一郎の画面は美しくてきちんとしているが、監督の高橋治には、サスペンスの素養がないので少しも面白くない。脚本は星川清司で、本来は娯楽派なのだが、なぜかドラマは上手く盛り上がらない。

元はテレビで放映したものを再編集して映画用にしたものだそうで、画面もスタンダード版になっている。

栗原小巻の中国人女性は適役だが。

「ゴメスの名はゴメス」とは、スパイの暗号だが、元は昔平和と愛を目論んだゴメスと言う老人がいたそうで、世界の平和と愛を祈るのがテーマだと言うが、到底信じられない。

こういうのを、英語で言えば、プリテンシャスといい、形だけの中身のない映画と言うべきだろうか。

この後、高橋治は、大島渚、吉田喜重、篠田正浩などの松竹ヌーベルバーグの兄貴的存在だったが、決定的な作品はなく、この次にイスラエルで少年を主人公にした映画を作って松竹と映画界を去ったのは当然だったと思う。

この人の小津安二郎について書いた『絢爛たる影絵』は、『東京暮色』での有馬稲子を評価していないのは極めて不当だが、悪くない本である。

シネマヴェーラ渋谷

 



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