狸便乱亭ノート

抽刀断水水更流 挙杯消愁愁更愁
          (李白)

ペット霊園

2006-03-13 13:14:08 | 日録

午後、村の中を散策した。
土曜日の朝、Z寺の朝参り会に参加するようになって久しい。約4キロの道のりを、去年は何回か歩いて行ったものだが、今年はまだ歩いたことはない。約45分の道程である。寒い冬の間は朝の7時からの読経だが、多分4月からは6時半からになるだろう。

 1年経つと、それだけ心身ともに衰えてくるのがわかるような気もする。しかしこれだけはどうにもならぬ。八味地黄丸を服用しているが、目に見えるような効果を期待することは先ず無理であろう。

 朝の散策は、途中必ずといって良いくらい夫婦らしい二人連れの数組に出会う。
最近女性の方が先になり大手を振って活気ある歩き方なのに、どうも男子のほうが追従しているように意気地なく見えるのは、気のせいか?

 日中や夕方には殆ど人と道で出会うことはない。たまに犬の散歩と兼用のウォーキングにすれ違う。今は子供たちが野良で遊ぶ姿や、田畑にいる農夫の姿は全くみ掛けないので、どうしても己の子供の時分に思いが耽ってしまうのである。

前にも書いたが、今日は「森の径」という喫茶店で休憩をしてから、宅地が散在する集落の道を歩いて行くと、異臭が漂ってくるもに気が付いた。

 以前「ペット」の火葬場がこの辺りに出来て、近所の人から苦情が出ている話を聞いたことがあるが、別に気にも留めなかった。第一こんな所にそんな施設を作ってみたところで、利用者はあるかどうかが疑問であった。ペットが死んでも埋葬する場所には事欠かない田舎であるからである。

 そんなことを思い浮かべながらさらに歩を進めると、通りに「ペット霊場」と書いたレンガ造りの入り口があった。道は奥に続いている。足を止めた序に、その施設内に入って行ってみた。煙は出ていなかったが、異臭はその左側の一見化学工場のような建物から発していた。

 また入り口の門があって、中には数台スペースの駐車場がある。2台の車が置いてあった。数人の一団が、法事の引きもののような手提げ紙袋をぶら提げ、左の建物から出てきた。
 さらに右側の建物を覗くと、そこは待合所で、テーブルの卓上にはお茶を終えた跡があった。また正面は仏具の陳列棚で、大小様々な骨壷、それに被せる金ぴかの覆具が並んでいる。

 広場を挟んで相当規模の墓石が並んで建っている。石塔には××家の墓と刻み込まれ、一段高くしたい中央に、観世音菩薩の仏像が建っていた。そばの小舎には観世音と施主を冠した塔婆が何十組も並んでいる。

 そしてもう一組の一団が遺骨を抱えて左側の斎場から出てきた。
 まず人間の斎場を小型にして、墓地を併設したような設備と思えばよい。
 仏具の名前を知らないから、施設内の説明が大雑把だが、懼れ入ってしまった。

 オーナーのような人が出て来て私に、
「どうぞこちらへ」と斎場内に招かれたが、
「お墓を見せてください」と断わると、
「どうぞ。お墓参りですか」と静かな口調でいうのであった。

 私は己の墓地だけは購ってあるが、まだ更地のままである。出来ることなら葬式だけは身内だけのものにして欲しいと、晩酌に機嫌の昂じた時など、家内に宣言はしてきたが田舎では無理だろうと妻も娘もいう。そんなことが脳裏を過ぎった。

 やがて私はそこを辞し、帰途についた。
小学校を巡る径を通る。小学校正門は鉄の扉に施錠がしてあった。インターホンを通して内部の人がそこまで出てきて、鍵であけないと入れない仕組みのようだった。灯刻、校庭に人影はなかった。

やや行きと、犬を牽いた男が、今落とした犬の糞を挟みでつまみ、手にぶら下げた袋に入れているところにであった。校庭隅に水仙の花が出揃っているのが見えた。