狸便乱亭ノート

抽刀断水水更流 挙杯消愁愁更愁
          (李白)

平和の大切さ

2010-05-23 11:44:55 | 反戦基地

     
予科練平和記念館案内チラシより

 主題を「平和の大切さ」と書き込んだだけで、何かきな臭い思いが先行してしまって本文の書き込みが全く先に進まなかった。

<当時の少年たちの憧れであり、予科練の代名詞といわれた制服 の「七つボタン」七つのテーマと空間とで構成された展示からは今と変わらぬ少年たちの青春群像に触れることができます。
そして尊い命と平和への認識をふかめることができます。>

 この写真とともに、記念館開館案内チラシの中に書かれた解説である。
なんと、A4判1枚のチラシの中に、「命の尊さと平和の大切さ」という詞が3カ所に繰り返し述べられているのである。そればかりではない、町のH.Pをみても、新聞や町の広報誌にも、町長談話にも必ずこの「命の尊さ、平和の大切さ」が空念仏のように頻出する。

 だが、その詞とは裏腹に、記念館内で気になったのは、少年らへの当時の美辞麗句、時として本質を覆い隠す美しい言葉が多いことだ。

 まず玄関に入ると、正面大きなガラス窓に次のような言葉が刷りこまれてある。

< 予科練の少年たちは特別な少年ではなかった。
 普通の少年で、強いて違っているところといえば、大空を愛し、
 格別に飛行機が好きだったという位であったろうか。
 彼らはあまりに純真であり、それ故には情にもろく
 血と涙が多すぎる、そんな性格の少年が多かった。
 そのような少年達が、困難に対して献身した、燃えた、
 そして八割が戦死した。
               倉町秋次という署名。
 そして、その入り口のガラスを通して大きな写真が目に入るのは、昭和を代表する写真家、土門拳が土浦海軍航空隊で撮影したという予科練習生たちの写真だが、ここには陰鬱な隊内の様子は微塵も写っていない。
 むしろ楽しそうな隊内生活が写し出されているではないか。

 
ボクは今このことを書きながら、平行して「きけ わだつみのこえー日本戦没学生の手記」を手元に置いていた。冒頭渡邊一夫が「感想」と題するまえがきがある。

 …略。 初め、僕は、かなり過激な日本精神主義的な、或る時には戦争謳歌にも近いような若干の短文までをも、全部採録するのが「公正」であると主張したのであったが、出版部の方々は、必ずしも僕の意見には賛同の意を表されなかった。現下の社会情勢その他に、少しでも悪い影響を与へるようなことがあってはならぬといふのが、その理由であった。僕もそれは尤もだと思った。その上僕は、形式的に「公正」を求めたところで、かへって「公正」を欠くことがあると思ったし、更に、若い戦没学徒の何人かに、一時でも過激な日本主義的なことや戦争謳歌に近いことを書き綴らせるにいたった酷薄な条件とは、あの極めて愚劣な戦争と、あの極めて残忍暗黒な国家組織と軍隊組織とその主要構成員とであったことを思ひ、これら痛ましい若干の記録は、追ひつめられ、狂乱せしめられた若い魂の叫び声に外ならぬと考へた。そして、影響を顧慮することも当然であるが、これらの極度に痛ましい記録を公表することは、我々として耐へられないとも思ひ、出版部側の意見に賛成したのである。その上、今記したやうな痛ましい記録を、更に痛ましくしたやうな言辞を戦前戦後に弄して、若い学徒を煽てあげてゐた人々が、現に平気で平和を享受してゐることを思ふ時、純真なるがまゝに、扇動の犠牲になり、しかも今は、白骨となってゐる学徒諸氏の切ない痛ましすぎる声は、しばらく伏せたほうがよいとも思ったしだいだ。…略。

 


 


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1 コメント

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だめ押しメールを送りました。 (本郷住人)
2010-05-25 10:16:50
狸便乱亭様お早う御座います。
その後如何でしょうか。
既に解決済み???かも知れません。
でも昨日ご依頼の有りましたテストメールを、昨晩に引き続き今朝も「だめ押し」でお送り致しました。
それでは、気候不順の折ご健勝をお祈り致します。
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