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M氏は酒飲み仲間といっては大変失礼になるほど、小生とは肩書きも、教養の度も、ましてや所得の差も著しく違う。それでも「反戦」の意志思考は共通していて、同等と考えてくれていてくれるのであろう、長いお付き合いをさせて頂いている。
その頃僕は42年間続けた運送業をやめた。デーゼル排気規制で、主たる運送先の、千葉、東京、神奈川3県に配送ができなくなったことと、法人とはいえ、高齢すぎる小生のワンマン会社であったこととによる。
経営主を辞めたら、途端に所得もなくなったが、すべてやる事がなくなってしまった。屋敷内の草取りをやって、毎日酒を呑んで一日を終えても仕方がない。
ボケ防止にブログを始めた。 自衛隊のイラク出動が決まった時の頃である。狩野氏のコラムに僕は喝采した。以下がその文の抜粋である。
>古来、再び会えるかどうかわからぬ旅に赴くときには水盃がかわされてきた。だから今回のように壮行の意図が強ければ酒盃で別れを惜しむべきであろう云々。<
このコラムにもある通り当時はビールでの乾杯が当然であった。(今はウーロン茶か?)
ある日、ボクガ「乾杯の発声」を指名された。指名される可能性が高い飲み会だったので、予め狩野氏のコラムをメモしておいて、それを読みあげたのである。ボクの乾杯は最高の出来だった。持参の吟醸酒で乾杯した。
あれから一年。日本酒販売店の様相も激変した。選挙の当選祝いの乾杯に遭遇する機会はまだない。勿論今後行く機会も無いだろう。
年末なので、スーパーの酒どころを数箇所散策した。
再び狩野氏「コラム」のご承諾を得るためmailを差し上げたら、
>かなり古いコラムですので、掲載日も書いて下さいね。少々事情が変わっている場合もありますので。<というご返事があった。
酒事情――人気銘柄の価値とは
ディスカウントストアやスーパーで、酒が値引き販売されるようになって久しい。いよいよ来年からは、キリン、アサヒ両社はビールの希望小売価格もなくす方向である。このように価格が下がる中で、逆に清酒や本格焼酎の中には不思議な存在がある。それはメーカーの希望小売価格の数倍、ときによっては10倍に近い価格で取引される銘柄が生まれたということだ。
インターネットのオークションサイトを見ると、幻の酒と呼ばれる人気銘柄は毎月超高価格で落札されていく。単に造りや品質だけで比較すればそれと遜色ない商品が、いくらでも定価を下回って販売されることも多いのにである。
もちろん世間には人気が高まり、当初の価格にプレミアムの付く商品はたくさんある。しかし、その多くはすでに終売であったり、限定販売品であったりする。一部のシャトーワインなどの場合には入札で価格が決まることもある。焼酎や清酒のように継続的に市場に投入される商品で、何年にも渡って定価の数倍でも購入されるという事例はまれであろう。
消費者からみた理由は大きくはふたつ考えられる。ひとつは顕示的消費とでも呼べるもので、時代的価値があるものを飲むことが目的となっているのだ。この場合には、ただ単に美味しいということでは駄目で、「世間では入手困難」というお墨付きがあることも大切なエッセンスになる。
もうひとつは、時間を買うという考え方だ。幻と言われる銘柄も時間と手間をかけて本気になって探せば、手頃な価格で購入することもできる。しかし飲みたいのは今この瞬間であり、探すことに自分の時間を費やしたくはないのである。
しかしどちらの理由にしても単においしい酒が欲しいわけではない。そのブランドがまとう価値・ストーリーを体験したいからに他ならない。
2004年07月27日掲載