日本財団は、長く障害者の国際社会での発言強化は勿論のこと、世界各国で人材育成も行ってきた。また、今年3月に仙台で開催された第3回国連防災世界会議にあたっては、国連国際防災戦略事務局とも連携し、防災における障害者の位置付けについて、国連で再考するよう運動を進めてきた。
というのは、2005年の第2回国連防災国際会議で採択された兵庫行動枠組では、障害者に関する記述は一ヶ所に留まっていたのである。これは、1992年に国連環境開発会議のアジェンダ21で定義された、国連の定める「市民社会」の9つのグループ(女性、子供、農家、先住民、NGO、労働者・労働組合、地方自治体、科学技術者、企業・産業)に障害者が入っていないことに起因する。国連の様々な会合で、障害者は発言の機会を得ることすら難しい。
そこで日本財団が目指しているのは、この国連の市民社会の定義に、来年の障害者権利条約採択10周年に第10番目のカテゴリーとして障害者を加えることにある。
今回、国連においてロビー活動のためにサイドイベントを開催し、日本政府の国連代表部・吉川元偉大使も出席され、日本政府の意思を表明された。
以下はその時の私のスピーチです。
日本財団は、インクルーシブな社会の実現を目指す非営利組織です。これまでリーダー育成の奨学金、当事者団体の育成や強化など、幅広い障害者支援を国内外で実施してきました。
ご存知の通り、2011年3月11日、巨大地震と津波が日本を襲いました。震災後の調査では、障害者の死亡率は全体の人口の2倍から4倍であったことが指摘されました。こうした残念な結果は、地域、国、そして国際レベルで、これまで防災計画の策定および実施に障害者が参加していなかったことが原因であることが明らかになりました。
そこで、日本財団は2012年以降、様々な団体と協力して「障害と防災」をテーマに世界各地で国際会議を開催し、国際社会に対して障害者インクルーシブな防災の重要性を訴えてきました。
その実績を踏まえ、日本政府、国連国際防災戦略事務局(The United Nations Office for Disaster Risk Reduction:UNISDR)、障害者団体と連携し、第3回国連防災世界会議を障害者にとってアクセシブルでインクルーシブな会議として開催することができました。その結果、障害者参加型の実り多き議論が展開され、新たに採択された防災枠組みには、障害者が防災における重要な役割を担うグループとして位置づけられました。
第3回国連防災世界会議がこのような成功をおさめることができたのは、関係者の皆さまの強いリーダーシップとコミットメントがあったからであると痛感しています。しかし、このような好ましい条件が揃っていたこの会議でさえ、公式な参加プロセスに障害者を含めようとした際には、国連の定めるメジャーグループという既存の枠組みが障壁になりました。
世界の障害者は全人口の15%を占めているといわれています。障害者が国際社会における貧困や健康などに関する重要な議論の場から除外されている限り、グローバルな課題についてのサステナブルな解決はできないと考えています。
2016年は障害者のインクルージョンを前進させていくうえで重要な年になります。ポスト2015年開発アジェンダに言及されている障害者に関する目標が確実に実践されるためには、開発アジェンダの実施過程に必ず障害者を含めていかなければなりません。
本日この会場には、ポスト2015年開発アジェンダを達成するために鋭意努力されている様々な関係者の方々が集まっています。
国連機関及び加盟国代表の皆さま、第3回国連防災世界会議に倣い、今後開催する全ての会議とそれに伴う意思決定過程(decision making process)が障害者にとって、インクルーシブでアクセスしやすいものになるよう、また、皆さまの計画や政策に「障害」と「インクルーシブな開発」を横断的なテーマとして取り入れていけるよう、互いに協力していきましょう。
障害者問題に取り組む市民社会を代表する皆さま、障害者のプレゼンスを国連の主要な会議、ひいては国連システム全体において高めていけるよう、引き続き、共に手を携えて取り組んでいきましょう。
2015年06月29日 BLOGOS
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます