北海道漢点字協会(札幌)による漢点字学習会が本年度で30年目を迎えた。漢字を表す漢点字は一般的な「かな点字」に比べ、同音異義語などを理解しやすい。先天性の視覚障害者らにとっては初めて漢字に触れるきっかけにもなり、受講生は漢点字を趣味や実益に生かしている。同会の佐々木信代表(71)は「これからも地道に普及を進めたい」と意気込んでいる。
「私は自分の名前の漢字を見たことがないんです」「ここで学べば、全部覚えられますよ」。今月上旬、札幌市身体障害者福祉センター(西区二十四軒2の6)で行われた本年度の第1回学習会。初参加の視覚障害者らに、同協会のメンバーが優しく語りかけた。
学習会は90週間で常用漢字約2千字を目標に、点字の読み方や打つ方法を学ぶ。本年度の参加者は健常者も含めて5人。中央区の田中弓代さん(53)は8年ほど前に患った脳腫瘍の影響で言葉が出にくくなってから、さまざまな意思伝達の方法に関心を持ち、最近始めた手話に続き、漢点字も学ぶことにした。メンバーの手ほどきを受け、「難しそうですが、頑張りたい」と力を込めた。
漢点字は1970年、大阪府立盲学校教諭だった故川上泰一さんが開発。六つの点で表すかな点字の要素を生かし、その上に部首を表す二つの点を加えた八つの点で漢字を表現する。
学習会は、全盲の佐々木代表が道高等盲学校(現札幌視覚支援学校)教諭だった86年に知人同士で始めた。これまでの受講者は約40人。学習の成果を生かし、鍼灸師(しんきゅうし)の仕事に必要な漢点字訳の漢方の本を読んだり、短歌を楽しんだりしている。“卒業生”のうち約10人は話題の小説などを漢点字に訳し、日本漢点字協会(大阪)を通じて全国の視覚障害者に読んでもらうサークル活動を行っている。
サークルの会員で西区の河田修平さん(71)は「全盲で一人で出歩ける場所も限られるが、ここでは漢点字を通じ仲間同士で交流できるのが楽しい」と話す。
全国の点字利用者は「かな」の約3万人に対し、「漢」はまだ1千人前後とみられる。佐々木代表は「漢点字の普及へ、マンパワーが少しずつ育ってきた」としながら、「盲学校などで子供たちに教えられる人材の養成が課題」と話す。
学習会は年度途中の入会も可能。会費無料だが、教材費などが必要。問い合わせは平日の日中は園田鍼灸院(電)511・4875、休日と夜間は佐々木代表(電)050・3405・6857へ。
04/17 北海道新聞
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