[私のあんしん提言]「非正規」支援へ法整備必要
鴨 桃代さん(労組「全国ユニオン」会長)
雇用の流動化、働き方の多様化が進む中、急増する非正規労働者の生活保障について、支援する労組「全国ユニオン」会長の鴨桃代さんに聞いた。(聞き手 小畑洋一)
◇
--非正規労働者の生活を、どう支えるか。
「非正規労働者は、今や雇用者の3人に1人以上。年間2000時間働いても年収200万円に届かない低賃金だ。働いても生活できない、自立できないのはおかしい。改正パート労働法に『差別禁止』が盛り込まれたが、対象はパート全体の5%程度。彼らの職場には、労働組合がない場合が多いため、法的な規制が非常に重要だ。賃金底上げのための法整備が必要だ」
--賃上げの財源は、どう確保するべきか。
「労働分配率を見直し、労働者の取り分を増やすことが大前提だ。先進諸国と比べて企業の取り分が多すぎる。労働者の取り分を増やした上で、非正規労働者への配分を多くすれば、待遇改善につながる。だが、労働者間での配分見直しだけでは限界がある。今は、企業の利益が労働者に回っていない。働いた分、例えば残業代も払わない企業がまかり通っているのはおかしい。企業には、社会的責任を果たしてもらいたい」
--少子化について。
「最大の原因は、女性が働きながら子供を産み育てようと思える職場環境が整っていないことだ。出産した女性の7割が職場を去っている。生計維持のため子育て一段落前に復職するが、主にパートだ。男性は長時間労働。何とか1人は産んでも2人3人なんて考えられない。また、非正規同士のカップルは、将来設計を描けない雇用不安にさらされ、自分たちが今を生きるのに精いっぱい。子供を産み育てることを考える余裕はない。仕事と子供、家庭を両立できる職場づくりと、ワーキングプアへの生活・雇用の安定が実現しなければ、少子化の解決は難しい」
--超高齢時代の社会保障改革に必要なものは。
「すべての国民が、1日8時間働き、8時間眠り、8時間自由な時間が持てる安定した雇用と生活が保障されることが基本だ。今のまま、非正規労働者が高齢化していったら、保険料や税を納めることもままならず、年金も医療も制度が成り立たなくなるのでは。あらゆる働き方の労働者が、老後の保障も確保できる社会にしなければならない」
--消費税率の引き上げも欠かせないのでは。
「北欧では消費税率は高いが、すべて自分たちの生活を守るために使われていると実感でき、国民は負担をいとわない。だが、日本では政府への信頼がなく、何に使われるかわからないという不信感がある。これまで消費税や増税で生活が良くなった実感はなく、搾り取られているだけのような気がするからだ。消費税率を上げるなら、生活に生かされていると実感できる政策を実行してほしい」
(2008年6月3日 読売新聞)
鴨 桃代さん(労組「全国ユニオン」会長)
雇用の流動化、働き方の多様化が進む中、急増する非正規労働者の生活保障について、支援する労組「全国ユニオン」会長の鴨桃代さんに聞いた。(聞き手 小畑洋一)
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--非正規労働者の生活を、どう支えるか。
「非正規労働者は、今や雇用者の3人に1人以上。年間2000時間働いても年収200万円に届かない低賃金だ。働いても生活できない、自立できないのはおかしい。改正パート労働法に『差別禁止』が盛り込まれたが、対象はパート全体の5%程度。彼らの職場には、労働組合がない場合が多いため、法的な規制が非常に重要だ。賃金底上げのための法整備が必要だ」
--賃上げの財源は、どう確保するべきか。
「労働分配率を見直し、労働者の取り分を増やすことが大前提だ。先進諸国と比べて企業の取り分が多すぎる。労働者の取り分を増やした上で、非正規労働者への配分を多くすれば、待遇改善につながる。だが、労働者間での配分見直しだけでは限界がある。今は、企業の利益が労働者に回っていない。働いた分、例えば残業代も払わない企業がまかり通っているのはおかしい。企業には、社会的責任を果たしてもらいたい」
--少子化について。
「最大の原因は、女性が働きながら子供を産み育てようと思える職場環境が整っていないことだ。出産した女性の7割が職場を去っている。生計維持のため子育て一段落前に復職するが、主にパートだ。男性は長時間労働。何とか1人は産んでも2人3人なんて考えられない。また、非正規同士のカップルは、将来設計を描けない雇用不安にさらされ、自分たちが今を生きるのに精いっぱい。子供を産み育てることを考える余裕はない。仕事と子供、家庭を両立できる職場づくりと、ワーキングプアへの生活・雇用の安定が実現しなければ、少子化の解決は難しい」
--超高齢時代の社会保障改革に必要なものは。
「すべての国民が、1日8時間働き、8時間眠り、8時間自由な時間が持てる安定した雇用と生活が保障されることが基本だ。今のまま、非正規労働者が高齢化していったら、保険料や税を納めることもままならず、年金も医療も制度が成り立たなくなるのでは。あらゆる働き方の労働者が、老後の保障も確保できる社会にしなければならない」
--消費税率の引き上げも欠かせないのでは。
「北欧では消費税率は高いが、すべて自分たちの生活を守るために使われていると実感でき、国民は負担をいとわない。だが、日本では政府への信頼がなく、何に使われるかわからないという不信感がある。これまで消費税や増税で生活が良くなった実感はなく、搾り取られているだけのような気がするからだ。消費税率を上げるなら、生活に生かされていると実感できる政策を実行してほしい」
(2008年6月3日 読売新聞)
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