自閉症や学習障害(LD)、アスペルガー症候群など発達障害の早期発見と生涯にわたるサポートを目指す「発達障害者支援法」が施行から丸10年を迎えた。対人関係や社会性に困難を抱える障害特性への理解は少しずつ広がってきたが、専門性の高い教育環境の整備をはじめ、就労対策など社会参加を実現していく上での課題も横たわっている。
発達障害は外見ではわかりづらく、かつては知的障害がなければ福祉サービスの対象にはならなかった。2005年4月に施行された支援法は発達障害の早期発見と自立や社会参加に向けた支援を国や自治体の責務として定めた。
佐賀県内では法施行前から発達障害に関する取り組みが進み、佐賀市は2004年から1歳半と3歳健診で早期発見につなげる問診を導入。現在は全20市町で行われるようになった。県は発達障害の人や家族らを対象とした専門相談窓口を五つの圏域に7カ所設け、ケースに応じて医療機関や療育機関などを紹介している。
障害傾向の早期把握と併せ、療育・教育環境の充実も欠かせない。県内の小中学校で、学習障害や注意欠陥多動性障害(ADHD)などの子どもたちを対象にした通級指導教室は43カ所(14年度)で544人が利用している。
聞いたことがなかなか覚えられない、ささいなことで友達とトラブルになったりと学習上や生活上の「困り」は多様で、「子どもたち一人ひとりのニーズを把握し、必要な支援につなげていくためにも指導する教師の専門性向上が課題」(県教育政策課特別支援教育室)。通級指導教室のない高校へ進学する際、中学までの積み重ねをどう引き継いでいくか、といった問題もある。
教育現場の模索が続く一方、就労前の訓練や就労後の支援など社会参加に向けた取り組みも求められる。発達障害の人とその家族を支援してきたNPO法人「それいゆ」では、佐賀市のオフィスビルで就労移行訓練を行っている。
パソコンでの文書作成やデータ入力といった作業のほか、人との関わりを踏まえ、ビジネスマナーも学ぶ。事務系の仕事を希望している男性(22)は「親を安心させるためにも、ずっと続けていける仕事に就きたい」と意欲を見せる。
「それいゆ」の江口寧子副理事長は「発達障害がありながらも経済的に自立し納税者となることで、社会に貢献できる。非常勤ではなく、安定した雇用の受け皿づくりが今後の課題。企業側の理解を広げていくのはもちろん、当事者の潜在力をもっと引き出す努力を続けていかなければ」と話す。
=発達障害=
特定のものごとにこだわりがある自閉症や、自閉症に近いが言葉の発達の遅れはないアスペルガー症候群、読み書きや計算が極端に苦手な学習障害(LD)などの総称。年齢や生育環境によって特徴はさまざまで、複数の障害が重なることもある。脳機能の障害が原因とされるが、詳しい仕組みは分かっていない。2012年の文部科学省の調査では、全国の通常学級に通う小中学生の6・5%が発達障害の可能性があると推計された。
発達障害者の社会参加には就労支援の充実が鍵を握る。NPO法人「それいゆ」ではパソコンの入力作業など就労訓練に取り組む
2015年04月18日 佐賀新聞
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