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公金支給など10億円超 見逃した道の責任重く /北海道

2009年06月02日 00時39分18秒 | 障害者の自立
 聴覚障害の障害者手帳不正取得事件で、札幌市の前田幸〓(よしあき)医師(74)の診察を受けて「聴覚障害2級」などと診断されて手帳を取得した元患者に、不正に支給・控除・免除された公金や税金が少なくとも総額10億円を超えることが分かった。各行政機関は元患者に追徴課税などを進めている。ただ、自治体からは再三、前田医師の診断を疑問視する声が上がっており、長年にわたって不正を見逃してきた道の責任も問われている。

 ■各種の優遇措置

 道などによると、前田医師に診断され、障害者手帳を取得したのは、94年以降で道内と青森県の計890人。大半が両耳がほとんど聞こえない最重度の「聴覚障害2級」で、ピーク時の02~04年度には394人に達した。

 別の医師が再検査した結果、前田医師の診断通りに聴覚障害を持っていたのは11人だけ。約98%の876人が「当初から耳が聞こえていた」などとして手帳を返還した(等級引き下げを含む)。残る3人は不明・死亡だった。

 聴覚障害2級と認定されるとさまざまな優遇措置がある。障害年金や医療費助成を受給でき、所得税や住民税の控除、自動車税や自動車取得税の免除・減免もある。

 最も多いのが障害年金。記録の残る02~07年度だけでも道内の137人に総額約7億円が不正に支給されたとみられる。北海道社会保険事務局は「今後、捜査機関や司法が不正と認定した分については受給者に返還を求める」と話す。

 一方、重度心身障害者医療費助成は、99~07年度に、道内の67市町村の813人に総額約2億6900万円が不正に支給された疑いがある。うち、札幌市・芦別市・赤平市・渡島管内福島町分が全体の7割を占め、4市町は不正が確定次第、返還を求める方針。

 所得税については、札幌国税局が昨年末から調査に乗り出し、実際には聴力があったことを認めた人に修正申告を求めている。住民税も各市町村が追徴課税する方針。特に手帳返還者の多い芦別・赤平市は過去3年間に住民税の控除を受けた約140人に、控除分の総額約500万円の納税を求めている。

 自動車税や自動車取得税は、過去3年間に両税いずれかの免除・減免を受けた手帳返還者のうち、納税の意思を示した310人に対し、道が総額約2700万円の追徴課税を求めている。納税の意思を示さないなどの84人については、「道警の捜査結果を待って検討したい」(道納税課)としている。

 ■疑問の声相次ぐ

 道には、障害者手帳不正取得疑惑が発覚する8年前から前田医師の診断に関する疑問の声が相次いで寄せられていた。

 道によると、00年1月、渡島管内の椴法華村(現函館市)、上磯町(現北斗市)、砂原町(現森町)の担当者から渡島支庁に「前田医師の診断に基づく手帳申請者に障害の程度が疑わしい人がいる」という相談があった。

 その9カ月後に道心身障害者総合相談所が札幌市で開いた研修会では、芦別市の担当者が「特定の医師(前田医師)が診断したケースで、実態と手帳の等級に乖離(かいり)がある事例がある」と報告した。

 道は「障害程度に疑義がある場合は身体障害者福祉法に基づいて市町村が診査し、その通告に基づいて知事が手帳の返還を命ずることはできる」と回答したというが、具体的な対応策には言及しなかった。

 さらに、01年には江別市、03年には上川管内上富良野町などから同様の情報が寄せられたが、いずれも道は「診断書に問題がない以上、手帳の交付はやむを得ない」と返答していた。

 道が重い腰を上げたのは05年。04年10月以降、福島町から渡島保健福祉事務所に再三にわたり前田医師の診断に関する疑問の声が寄せられた。道は05年2月、道心身障害者総合事務所の連絡会議で、各地の保健福祉事務所の担当者に「前田医師が関与する障害者手帳の申請について慎重に取り扱ってほしい」と要望した。

 この時点で前田医師の診断に基づき申請のあった54人には手帳を交付しなかったが、道はその後再び申請を受け付け、61人に手帳が交付された。結局、渡島保健福祉事務所などの調査で、多くの申請者に診断書のような障害がないことが明らかになった07年末まで不正は放置され続けた。

 道保健福祉部は「反省すべきところは多い。市町村から寄せられるいろいろな情報を上につなげていく仕組みが機能していなかった」と話している。

 ◇詐欺容疑での立件視野--道警
 聴覚障害の障害者手帳不正取得事件は07年12月に表面化した。08年2月には、道と札幌市が手帳取得者の再検査を開始。市は同年4月に聴聞会を開いたが、前田医師は「今の検査方法では患者の詐病を見抜けない」などと疑惑を否定。市は同年5月に身体障害者福祉法に基づく指定医を取り消した。同年9月に道と市が前田医師を虚偽診断書作成容疑で告発し、道警が医院などを家宅捜索。道警は前田医師らの詐欺容疑での立件を視野に捜査を進めている。

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 ◇不正に支給・控除・免除された疑いの強い公金・税金の一覧
公金・税金の種類     優遇の形式 担当機関   受益者   年度    金額

障害年金         支給    社会保険庁  137人  02~07 約7億円

重度心身障害者医療費助成 支給    道・市町村  813人  99~07 約2億6900万円

自動車税・自動車取得税  免除・減免 道      310人  06~08   約2700万円

所得税          控除    国税局    詳細不明

住民税          控除    市町村・道  詳細不明※

 ※芦別・赤平市は住民税の控除を受けていた手帳返還者約140人に対し、過去3年間にさかのぼり、総額約500万円を追徴課税

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 ◇障害者手帳の取得者・返還者の内訳
自治体 取得者 返還者

札幌市 176 166

函館市  33  33

旭川市  13  13

その他 655 652

青森県  13  12

合計  890 876

 ※その他は3市以外の道内市町村



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