ゴエモンのつぶやき

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画期的!<マイ・タイムライン>ができた ソフト面での対策の大きな柱に

2017年03月23日 02時01分43秒 | 障害者の自立

孤立者減らすには早期避難

2015年9月の関東・東北豪雨で鬼怒川が決壊し、茨城県常総市は市域の3分の1が濁流に没した。その間、被災者から必死の救助要請が殺到した。常総広域消防本部(常総市水海道山田町)と茨城西南広域消防本部(古河市中田)にかかった119番は決壊から3日間で2500件以上に達した。かつてない数字である。市民の逃げ遅れが続出し、ヘリやボートなどで計4258人が救出される異常事態となった。茨城県防災ヘリだけでも、3日間で出動は延べ128機、計1339人が救助された。この数字をどう読むか。

ここで、2012年、政府の中央防災会議が公表した首都圏での大規模水害への対策大綱に注目したい。地震以外の災害で大綱を策定するのは初めてであった。鬼怒川決壊の3年前である。大綱は従来の堤防整備など<ハード面>の治水対策とは別に、水害時の避難や救助など<ソフト面>の対策に重点を置いて取り組むべき課題を挙げている。

人口が密集する首都圏での水害の特徴は、膨大な孤立者の発生だ。予想される浸水状況を踏まえ、医療機関や介護施設、在宅の要介護者や障害者などの情報を集め、優先的に救助する対象者をリスト化する必要がある。浸水は一部の地域で2週間を超える。水道や電気などのライフラインの停止が長引く可能性もあり、水や食料、医薬品、簡易トイレなどの供給方法も課題となる。

孤立者を減らすためには早期避難が重要となるため、避難勧告・指示の発令のタイミングを地域別に検討し、都県や市区町村の間で広域的な避難計画を策定することも定めている。政府は、3年前にソフト対策の重要性をすでに指摘しているのである。広域的な避難計画の策定を急ぐよう訴えているのである。

<ソフト面>で着目したいのが、国土交通省が推進している「タイムライン」(事前防災行動計画)である。タイムラインとは、台風の上陸から3日前までさかのぼり、当該の行政当局をはじめ教育機関、公共交通機関などの行動計画を時系列に事前に策定し災害に備えることをいう。

同省荒川下流河川事務所は全国に先駆けて、東京足立区・北区・練馬区などの流域自治体、東京メトロやJR東日本などの関係機関と共にタイムラインを策定し大水害に備えている(今後の連載の中で取り上げたい)。

洪水前・後にやるべきこと整理

鬼怒川決壊に戻ろう。この大水害で浮き彫りになった多数の逃げ遅れの解消策として、従来の行政主体のタイムラインより更に一歩踏み込んだ「マイ・タイムライン」(個人避難計画)が、2月に常総市民によって作成された。地域対象ではなく、家庭や個人に絞って逃げ遅れを防ごうという全国初の試みだ。市民一人一人が地域の特性を理解し個別に「避難計画」をつくという画期的な取り組みである。

鬼怒川と小貝川の氾濫被害の軽減を目指す「減災対策協議会」(国交省関東地方整備局、流域10市町、筑波大学などで構成)は、豪雨時に鬼怒川が越水した若宮戸と根新田の2地区をモデルに選び、2016年11月から検討会をスタートさせていた。若宮戸地区では第1回で大河川に挟まれた地形の特徴などを学習した。市民41人が参加した。大半が被災者で、水害が起きやすい地域に住んでいることを改めて学んだ。

第2回の今回は洪水時の行政情報(避難勧告・避難指示)などを学んだ上、参加した市民同士で、どんな行動をとればいいか意見交換した。そして国交省が用意した専用ノートに従ってまず、参加者は「どこへ誰が避難するか」「避難にかかる時間はどれくらいか」「どんな準備が必要か」などを自分の家族構成や自宅周辺の地形などを考慮して書き出した。

次に国や市からの豪雨や洪水情報をもとに「氾濫発生の何時間前には避難を完了したか」「避難開始は何時間前にするか」を決めた。家族との連絡方法など具体的な手順を書き込んだ。

・3日前からやるべき行動をみっちり書き込んだのは主婦のHさん(47)だ。車へのガソリン入れ、1週間分の薬の準備、家族全員の予定の確認など、思いつく限り書き込み、農機具については半日前に高台に移動させることにした。「タイムラインを作っておけば落ち着いて行動ができると思う」と話した。

・会社員のKさん(48)は鬼怒川水害時、最初に避難した避難所に濁流が押し寄せ、つくば市の親戚宅まで避難した。マイ・タイムラインには高台にある「石下総合体育館」を新たな避難場所に選び、仕事や学校でバラバラの家族のために携帯電話のラインで連絡を取り合うことなどを記入した。

・会社員のIさん(57)は先の水害で体の不自由な父親を心配するあまり逃げ遅れた。そこで「数時間前に父親の避難準備開始」と書き込んだ。


参加者は被災体験が身に染みている。国交省下館河川事務所の里村真吾所長は「ここまで参加者が自分の計画を完成させてくださるとは思わなかった」と手ごたえを感じていた。同協議会は周辺の地区や自治体にもマイ・タイムライン作りを広げていく方針である。

アドバイザーとして参加した川島宏一・筑波大学教授は「リュックに必要なものを入れておくなど、避難への意識を日頃から日常生活に溶け込ませておくことが大切だ。マイ・タイムラインをきちんと理解して家族たちにも伝えて共有化して欲しい」と助言した。

(参考資料:「朝日新聞」茨城版、2月6日付、「茨城新聞」同日付)。


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