ゴエモンのつぶやき

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想像よりも進んでいない英国のバリアフリー化=現地取材記

2012年09月09日 01時46分57秒 | 障害者の自立
■盛り上がるパラリンピック しかし街に目を移すと……

 パラリンピックは英国発祥の大会であり、ロンドン郊外のストークマンデビル病院から始まったものである。
 そのため、私は勝手に英国では障害者スポーツやパラリンピックが非常にメジャーで盛り上がっており、街も障害者に優しいつくりになっていると思い込んでいた。実際に英国へ来て取材をしてみると、パラリンピックが国内で盛り上がっていることはとてもよく分かった。しかし、街は全然障害者に優しくない。これは意外だった。

 たとえば、駅では日本のようにどこでもエレベーターやエスカレーターがついているわけではなく、スロープなどもない。また、電車の中に優先席といったたぐいのものは一応あるが、小さく「Priority Seats」とシールが貼ってあるだけ。皆、席を譲るわけでもなければ、遠慮して座らないわけでもなく、平気でその席に座って携帯電話でしゃべっており、形式だけのものになっているようだ。

 電車だけでなく、歩道も石畳のようなゴツゴツしているところが結構あり、段差が多い印象を受けた。これでは、車いすや足が不自由な人には暮らしづらいだろう。というのも、実際に私が空港からホテルまでスーツケースを運んだ際、かなり苦労したのだ。階段が多い地下鉄の乗り換えでは、近くを通った英国紳士が助けてくれたほどだったし、歩道でもまっすぐ進まず、運ぶのにかなりの労力を使った。これでは、車いすなどでは生活に支障が出る。

 さらに残念なのは、会場だ。パラリンピックをやっているというのに、階段が非常に多い。今後の利用用途や使いやすさなどを考えると、パラリンピックを最優先にした作りにはできないのかもしれないが、会場に入るのに階段を使うところが多い。エレベーターはあるが、数は少なく場所が分かりづらい。入口から遠かったり、エレベーター待ちのために列を作っていたりする。

■バリアフリー化が進む日本、障害者スポーツの人気拡大が課題

 なんだか英国批判のようになってしまったが、これは私が見た英国の一部であり、すべてではない。加えて、オリンピックパークの最寄り駅であるストラトフォード駅にはエレベーターやスロープがついていたし、会場近くのショッピングセンターには車いす専用の駐車場もあった。電車内も車両によっては車いすエリアが設けられているものもある。

 つまり私が言いたいのは、想像していたよりもバリアフリー化が進んでいなかったということだ。明らかに、日本の方が障害者や高齢者が過ごしやすい環境だと思う。日本では、つえをついたおじいさんが一生懸命途中で休憩しながら、駅の階段を上がる姿は見かけなくなったし、駅員さんが何人かで車いすのお客さんを階段で持ち上げている姿も見なくなった。

 英国は街並みも古く、だからこそ歴史を感じるところでもあり、きらきらとした最新のビルを建てて、障害者や高齢者の住みやすい街にするというのは、ちょっと違うだろう。しかし、これだけパラリンピックが国中が盛り上がっているのだから、もっとバリアフリー化が進んでいてもおかしくない。

 では、バリアフリー化が進んでいる日本はどうかというと、だからといって障害者スポーツが盛んとは言えない。どうやら英国と日本の様子だけ見ると、バリアフリー化で誰もが住みやすい街であることと、障害者スポーツの人気は比例しないということだ。
 もし2020年に東京で五輪とパラリンピックを開催することになれば、バリアフリー化が進む東京は、もってこいの場所だ。何よりそれまでに、パラリンピックの人気が追いつくことを願いたい。

(スポーツナビ ) 2012/9/8 12:18


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