ゴエモンのつぶやき

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5 就労強化と工賃アップ /和歌山

2008年04月21日 00時27分51秒 | 障害者の自立
揺れる障害者福祉:自立支援法2年/5 就労強化と工賃アップ /和歌山
 ◇両立困難で事業断念--元作業所長
 午前10時。和歌山市の「くじら共同作業所」に、焼きたてのパンの香りが広がる。聴覚障害のある泰地哲夫さん(53)が毎朝7時に来て、生地作りから成形までこなす。「パンが売れるのはうれしいけど作業は大変。給料もなかなか上がらない」と表情を曇らせる。

 07年4月、障害者自立支援法に基づく新体系のうち、「就労継続支援」などを行う事業所に移行し、パン作りを開始。菓子作りが主だった移行前に比べ、売り上げは月約5万円伸びた。だが、利用者が2倍に増えたため、1人当たりの工賃は変わらない。白藤令所長(59)は「障害の程度によって、仕事の内容や量に差があるのは当たり前。工賃を上げようとすれば、負担が偏る」と言う。

 就労支援は同法の柱の一つ。一般企業への就労率の高い事業所や目標工賃を達成した事業所に対し、報酬を加算するなどして就労促進を図る。県は「障害者就労支援5か年計画」(07~11年)を策定。求職活動の支援や施設職員の指導力向上などに取り組むが、作業所からは「無理な労働で利用者に負担をかけるのが心配」といった声が上がっている。

 別の課題もある。すさみ町の「いなづみ作業所」は07年5月、移行から半年で「就労移行支援」事業を断念。能力の高い3人が就職で退所し、仕事が回らなくなった。利用者減で施設報酬も月約50万円減り、他のサービスを提供する事業所として再スタートした。

 当時、所長だった石神慎太郎さん(36)は「仕事のできるエース的存在を次々と外に出せば、作業所の労働力は落ちる。就労の強化と工賃アップは両立しない。就労に力を入れるほど、自分の首を絞めることになる」と指摘する。

 県障害福祉課は「事業所には、仕事のできる人材を育てる努力が必要。職員の意識改革を図り、支援体制を整えたい」とする。「障害者就業・生活支援センターつれもて」の加藤直人所長(51)は「障害の程度には個人差がある。労働量が限られる利用者にこそ支援が必要」と訴える。

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 ■ことば

 ◇障害者の就労支援事業
 障害者自立支援法施行に伴い、就労支援事業を、就職を目指す「就労移行支援」と、一般企業で働くことが難しい人を対象にした「就労継続支援」に再編。「就労移行支援」は利用期限2年で、作業訓練や職場実習、職場探しを行う。「就労継続支援」は雇用契約を結ぶA型と結ばないB型の2種類あり、働く場を提供しながら訓練する。利用期限はない。

毎日新聞 2008年4月19日 地方版


 日割り化で収入確保に苦慮 /和歌山

2008年04月21日 00時21分31秒 | 障害者の自立
揺れる障害者福祉:自立支援法2年/4 日割り化で収入確保に苦慮 /和歌山
 ◇「商売じゃないのに」作業所管理者
 「利用者の顔色をうかがいながら、実績を上げないといけない。福祉は商売じゃないのに」。和歌山市の「いこいの家共同作業所」管理者の上田朋行さん(38)はため息をつく。障害者自立支援法が始まった06年4月から施設報酬(補助金)の算定が月額から日額になったため、収入確保に苦しむ。

 同作業所は07年4月、新体系に移行。定員30人を40人に増やし、土日に仲間が集まりやすいイベントを開くなどして収入増を図る。支援計画の作成や目標達成の評価など事務作業も増えた。07年度の収入は前年度を維持したが、「職員の負担がこれ以上大きくなれば、支援の充実が図れない」と上田さんは言う。

 報酬の日割り化は、施設の運営に深刻な影響を与えた。利用者が1日休めば、その分の施設報酬が減る。また、施設報酬の1割はサービス利用料として利用者負担となるため、来てもらう回数が増えれば、利用者の支払いも増えるという板挟みにも苦しむ。

 岩出市の「きのかわ共同作業所」では、収入が05年度約5600万円から06年度約4700万円に激減した。同年から職員の昇給を凍結し、ボーナスもカット。小畑和江施設長(55)は「新しく人を雇う余裕もない。利用者が単価に見えてくる現実がつらい」と漏らす。

 国は06年12月、事業所の経営基盤の強化のため、08年度までに限り、前年度収入の9割保障を打ち出した。さらに、今月から通所サービス事業の報酬単価を4・6%引き上げ、定員を超す受け入れも可能人数を拡大した。しかし、いずれも時限的で、今後の見通しは立っていない。

 経営難でしわ寄せを受ける福祉の現場。山崎由可里・和歌山大准教授(障害者教育史)は「仕事に見合った給料が保障されず、福祉職をとりまく労働環境は悪化しており、福祉の先細りが懸念される。安定した施設経営ができるよう、根本から法を見直すべきだ」と指摘している。

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 ■ことば

 ◇施設報酬の日割り化
 国や自治体は施設定員に応じた定額の月払いで施設に補助したが、障害者自立支援法施行で、利用日数に応じた日割り計算に変更。利用者1人当たりの報酬単価は、利用するサービス内容や障害程度区分などで決める。事業所は定員以上の利用者を登録できるが、一定の基準を超えると報酬単価が減らされる。

毎日新聞 2008年4月18日 地方版