「黒革の手帖(上・下)」松本清張著、読んでみました 。
初めて「松本清張」の著作を読んでみました。日本の作家の中でも有名な大御所中の大御所なんですが、なんかあんまり縁がなかった様で、今まで手に取る事無く今日に至りました。
主人公の女子銀行員「原口元子」は勤め先から大金を横領し「黒革の手帖」に記したネタで事件を表沙汰にさせる事無く、銀座でクラブ「カルネ」を開店する。
容姿も性格も魅力的でなく、良心の呵責を感じる事無く、淡々と大胆に恐喝を行う「元子」にはなかなか感情移乗をする事は出来ない。
彼女の野望のための策略に嵌められた被害者も全く非が無い訳ではないが、彼女に対する恨みは当然あって然るべきで、普通の感覚を待った人間であればその事には気が付き、陥れた人間からの復讐は真っ先に用心すべき事なのに「元子」にはその感覚がほとんど無い。
復讐心丸出しで去っていった「波子」が「総会屋」をスポンサーにして店をオープンした辺りなんかは危険な匂いプンプンなのに、彼女の鈍感さには呆れてしまう。
物語の出だしからそうだったんですが、あくどい手段で「橋田」から「梅村」を手に入れ転売し、「ロダン」を購入しようとする件においても、個人的にはあまり盛り上がることも無く、そこそこのテンションで読んでいましたが、終焉に近づくにつれて俄かにテンションが揚がって来ました。
「元子」が信栄ビルに乗り込み、「高橋勝男」「波子」と対する場面は迫力があってハラハラしましたし、ラストの恐ろしすぎる描写は、物語の4/5くらいが「普通」に感じていた分とても衝撃でした。
この辺りがさすが「松本清張」と言った所なんでしょうね。遅ればせながら、彼の代表作くらいは読んでみようと思いました。