「片思い」東野圭吾著、読んでみました。
「東野圭吾」著、8作目。前回アップした「浪花少年探偵団②」とは全く違うテイストの作品でした。数冊読んできましたけど、どの作品もいろいろな特徴があり、どれが「東野圭吾っぽい作品」かと言うことがまだ把握しきれてません。とにかく彼の「引き出し」の多さに驚いてます。
彼の著作ついて何の情報もなく「図書館」で借りやすい物から読んでるんで、どれが人気が有るとか先入観無しで読むことが多いので、今回のように偶然にも「極めて秀作」に出会うと喜びも一入です。
個人的には、これまで一番のお気に入りだった「パラレルワールド・ラブストーリー」に並びます。
帝都大のアメフト部の同窓会のありがちな思い出話から物語りは始まる。QBの「西脇哲朗」 とその妻「理沙子」の夫婦間の不協和音の描写、それぞれの「日浦美月」との肉体関係?を含む係わりのエピソード、
また「日浦美月」や「末永睦美」を中心に描かれる「トランスジェンダー」の現状・悩み・葛藤、元チームメイトであり新聞記者の「早田」の真直ぐなクールさ、ストーカーであり被害者である「戸倉とその遺族」のドス黒さ、劇団金童の「男の世界」のエピソードなどなど、読み応え満載で一気に読まされてしまう。
「性同一性障害」の人や係わり合いの深い登場人物が多いが、それぞれの見事なエピソードや描写はある意味、哲学的でもあり考えさせられることが多かった。
哲郎と真相の解明に凌ぎを削り、この物語に常に緊張感を与え続けた「早田」の役割は大きいと思うし、その彼が悪者にならずラストを迎えたのは良かったと思う。
「中尾」の「****」というラストも末期癌に蝕まれ、余命幾ばくもない設定が読者の気持ちを少し和らげていると思う。すこし「角田光代」をお休みすることにしたので、この調子だと「東野圭吾」に嵌りこむ頻度が高くなると思う。
最後に一点、美月が哲郎の事を「QB」と呼ぶのがちょっと「クサ」く感じたのは自分だけだろうか・・・・・。