GOCCIのオトコヲミガク旅(w)

旅行記や、日常の面白い、或いはキレイなモノの写真を中心に
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「霧笛荘夜話」浅田次郎著、読んでみました。

2006年12月01日 | *本*BOOKS*

  
「霧笛荘夜話」浅田次郎著、読んでみました。



エッセイとかはともかく「浅田次郎」に小説を書かせると本当に外す作品が少ないですね。

今回の
「霧笛荘夜話」も期待に違わずとても良い作品でした。冒頭の風景描写の素晴らしさもさることながら、作者に少し暗い過去の有る人物を書かせると本当に一流の仕事をしますね。

「纏足の老婆」と入居希望者や各登場人物との会話も味があり、物語に深みを醸し出している。社会的弱者或いは精神的弱者どうしの係わり合いの中で生まれるストーリーは哀しく、もどかしく、切なくなってくる。

いつも作者が登場人物に言わせる台詞は本当に秀逸で心に沁みるものが多い。「そうさ、生きるのは難しいけど、死ぬことはもっと難しい。わかったろう」「・・・涙が出るうちは死ねやしないよ。」などなど・・・。

個人的には千秋と眉子エピソードが詰まった
「港の見える部屋」、眉子の破滅的であり且つ幸福な人生を描いた「鏡のある部屋」、カンカン虫の鉄夫と四郎の切ないストーリーを描いた「朝日のあたる部屋」が良いなぁと思いました。

物語の流れとして最後に
「千秋」が霧笛荘にたどり着いた訳に関するエピソードに繋がるかと思ったらそうではなかった。

「だったらどう転んでも苦労なんかなかろうが・・・」と言う台詞に対し千秋が心の中で抗った “少なくとも自分の立場はそれほど簡単ではない。” という部分が非常に気になる、どんな経緯があったのだろうか・・・?

それはそれとして、この作品も一気に読まさせていただきました。