断捨離という言葉はあまり好きではないが、
物にとらわれずに生きるのはカッコいいと思う。
洗濯機もあることだし、ほんらい衣類などは数枚あれば事足りる。
箪笥の引き出しを開けると、清潔に畳まれたシャツが二、三枚、というのが、
風子ばあさんの理想の暮らしである。
しかし、理想と現実はかけ離れているのが常である。
風子ばあさんは、洋服が好きである。
見たら欲しくなる。見ないでも欲しくなる。
昨日も街に出たら、マリンブルーに白襟のかっこいいシャツが店頭にあった。
すうっと身体が寄っていってしまう。
しかし、鏡の前であててみると、いささか若向きに過ぎる。
店員は買わせようと思うから、そんなことはないという。
「いや、これはちょっと無理だわねえ」というと、
「では、こちらなんか……」
と持ってきたのは、一転、歴然としたババア色、ババア型である。
「なに、これ。おばあさん向きじゃない」
言ってから、しまったと顔が赤くなった。
74歳の風子がおばあさんでなくて、どこにおばあさんがいるというのだ。
「今日はやめとこう」
おかげで、昨日はひとまず箪笥のこやしをふやさずにすんだ。
いくつになっても愚かなことである。
物にとらわれずに生きるのはカッコいいと思う。
洗濯機もあることだし、ほんらい衣類などは数枚あれば事足りる。
箪笥の引き出しを開けると、清潔に畳まれたシャツが二、三枚、というのが、
風子ばあさんの理想の暮らしである。
しかし、理想と現実はかけ離れているのが常である。
風子ばあさんは、洋服が好きである。
見たら欲しくなる。見ないでも欲しくなる。
昨日も街に出たら、マリンブルーに白襟のかっこいいシャツが店頭にあった。
すうっと身体が寄っていってしまう。
しかし、鏡の前であててみると、いささか若向きに過ぎる。
店員は買わせようと思うから、そんなことはないという。
「いや、これはちょっと無理だわねえ」というと、
「では、こちらなんか……」
と持ってきたのは、一転、歴然としたババア色、ババア型である。
「なに、これ。おばあさん向きじゃない」
言ってから、しまったと顔が赤くなった。
74歳の風子がおばあさんでなくて、どこにおばあさんがいるというのだ。
「今日はやめとこう」
おかげで、昨日はひとまず箪笥のこやしをふやさずにすんだ。
いくつになっても愚かなことである。