背中がかゆいのでクリニックで塗り薬を処方してもらった。
医師が、おうちでこれを塗ってくれる人がいますかと訊ねるので、
とっさにジイサンの顔を思い泛べて、
ええ、まあと言った。
返事があいまいだったものか、
誰か塗ってくれますね、と念を押された。
ジイサンの背中にサロンパスを貼ってやることだってあるから
まあ塗らんこともあるまいと、ハイと答えた。
帰りのバスの中で考えた。
いいえ、と言ったら、先生は何と答えたのだろうか。
そう言えば通販で「背中ぬりぬりぺったんこ」という道具を売っていたっけ。
一人暮らしの老人が多い昨今、
何か先生に名案があったのだろうか。
いませんと言ってみればよかった。
ああ、おしかったなあと思うが、
いまさら塗ってもらえません……とも言えないし、
残念だったなあ。
患部がお薬のおかげで快方へ向かわれてる事を。御自愛下さい。
ぬりぬりしたりできるって、ほんとはそのための老夫婦なのでしょうがね。