2013年8月、藤圭子が衝撃的な死を遂げたあとの10月に、
この本は出版されている。
実は、今から30年ほども前、まだ藤圭子が20代の人気歌手であった頃にこの本は書かれていた。
しかし、著者、沢木耕太郎は、藤圭子の状況から、
当時は、これを出版しないという選択をして
一冊だけ製本して藤圭子に渡したそうである。
健気な少女が歌手として登りつめながら、
人間として真摯な生き方を思いあぐね、傷つきながら、
純な心を持て余していたのが読んでいて分かり、切ない。
喉の手術をして声が変わってからの悩みは、切実であり、
歌っても歌っても満足できず、
舞台に上がりたくなくて泣いて柱にしがみつく。
その絶望のあと、宝石なんかいらない、贅沢な服なんか少しもほしくないと、
引退の道を選ぶ。
潔く、人間としてまっとう過ぎて胸を打つ。
前川清との結婚から離婚のいきさつも丁寧に彼女の心の軌跡を追っている。
「前川清は日本一歌がうまい、ウソをついたり、裏切ったり絶対にしないひと、あんないい人はいない」
と藤圭子は断言する。
前川清の方も、困ったことがあったら一番におれに相談しろよと言っていたそうである。
前川清ってカッコいい男だなと思わせ、彼の歌も、聞いてみたくなる一冊である。
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