風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

速記者

2011-02-12 12:30:30 | 思い出
 昨日に続いて父のことである。

 速記者だった父は、ときどき内職と称して雑誌の座談会の仕事をしていた。
ミミズの這ったような横文字は、他人には判読できない
それを原稿用紙に書き起こして依頼者に渡すのである。
 
 風子がまだ高校生のころ、これをアルバイトとして手伝ったことがある。
原稿は、字の上手下手より、とにかく正確で読みやすくないといけない。
父が速記を解読した文字を、書き起こし、それを風子が原稿用紙に清書した。

 二度手間になるから、父にとってそれほど有難い手伝いだったとは思えない。
小遣いをくれる口実だったのかもしれない。

 しかし、役人だった父は芸能ニュースにうとく、女優、俳優の名前も知らない。流行の唄も知らない。
大衆雑誌の座談会の記事には若い風子のミーハー知識が案外役にたっていたのかもしれない。

 風子も、一度は速記者を夢みて、父に速記文字のテキストを見せてもらったが、一人前になるにはそれなりの努力がいる。
 努力の苦手な風子は、手に負えなくて、すぐにあきらめた。
 
 テープレコーダーが普及しはじめると、父は、速記も、もう終わりだなと言っていた。
しかし、パソコンも進化して、発言したら即文字化できる装置もあるはずだが、今もテレビで見る国会中継には、速記者の姿がある。



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