また負けたじゃない!
バスの中で、うとうとしていたら、いきなり背後に甲高い声がした。
さっきのバス停で乗り込んできた母と女の子らしい。
「今日も負けて、あんたはそれでどうもないの? 先生から注意されるのもあんたばかりだし、くやしくないの?」
話の様子から、どうやら、プールだかダンスだか、なにかのお稽古の帰りのようである。
「いつもいつも、どうしてそんななの!」
母親は、地団駄でも踏みかねない勢いで、完全なヒステリーを起している。
子供は終始無言である。
ああ、可哀想だなあ。こんな乗客の多いバスの中で、子供は傷つくよなあと胸が痛む。
後ろを振り向いて、おいおい、やめとかんね、と言ってやりたいが、その勇気もない。
負けたっていいじゃないか、と今は思う。
水泳だかダンスだかわからないが、そんなものが一番でもビリでも、大人になれば、どうでもいいことなのである。
楽しかったらビリでもいいんだよ、良かったねえ、と言ってやる方が間違いなくいい子に育つのである。
だが、待てよ、風子ばあさんだって、その昔、わが子がいつまでも自転車に乗れなかったときは、かなり逆上したではないか。
みんなが乗れるのに、どうしてあんただけが乗れないの、と怒鳴りましたねえ。
いやいや、だから……、後ろの声が切ないのです。
バスの中で、うとうとしていたら、いきなり背後に甲高い声がした。
さっきのバス停で乗り込んできた母と女の子らしい。
「今日も負けて、あんたはそれでどうもないの? 先生から注意されるのもあんたばかりだし、くやしくないの?」
話の様子から、どうやら、プールだかダンスだか、なにかのお稽古の帰りのようである。
「いつもいつも、どうしてそんななの!」
母親は、地団駄でも踏みかねない勢いで、完全なヒステリーを起している。
子供は終始無言である。
ああ、可哀想だなあ。こんな乗客の多いバスの中で、子供は傷つくよなあと胸が痛む。
後ろを振り向いて、おいおい、やめとかんね、と言ってやりたいが、その勇気もない。
負けたっていいじゃないか、と今は思う。
水泳だかダンスだかわからないが、そんなものが一番でもビリでも、大人になれば、どうでもいいことなのである。
楽しかったらビリでもいいんだよ、良かったねえ、と言ってやる方が間違いなくいい子に育つのである。
だが、待てよ、風子ばあさんだって、その昔、わが子がいつまでも自転車に乗れなかったときは、かなり逆上したではないか。
みんなが乗れるのに、どうしてあんただけが乗れないの、と怒鳴りましたねえ。
いやいや、だから……、後ろの声が切ないのです。
下手だろうがどうでも良いことなのに、
どうしてそのときに気付かなったのだろうと、
今頃後悔しますね。
でも殆どの親が、同じことをやっているような。
アンタネエ、そんなにオコンナイデモ
ヨカロウモン、とかなんとか言って
孫をかばったりしたもんです。
いまどきはかばってくれる気概のある
年寄りがいないところがチビたちに
気の毒です。