風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

吉村昭著 関東大震災

2011-09-16 10:56:09 | 読書
   亡くなった私の母は、大正生まれの東京育ちである。
  まだ子供だったとはいえ関東大震災の体験者である。

   当然、私も、地震にまつわる話は聞いて育ったはずだが、意外に記憶がない。

   昭和48年に刊行された吉村昭著 「関東大震災」を読んだ。

   関東育ちの私でさえ、20万人が死亡したというあの大地震について
  何も知らなかったのだと改めて思った。

   安全と信じて避難した被服廠跡では3万8千名の焼死者が出ている。
  ほかでも至るところで焼死者が多数である。
  倒壊による死者より断然焼死者が多い。

   安政の大地震と大正の地震は同規模だそうである。
  消火能力においては、安政より近代がはるかに優れていたと思うのが普通だが、
  水道管の破裂でその能力が発揮できなかったということである。

   時代はさらに進んだ現代、過密人口などを思うと空恐ろしい。
  これもよく知られたことだが、災害時の流言の恐ろしさにも本著は触れてある。

   警察は暴徒化した群衆を制圧することが出来ず、
  署内まで暴徒がなだれこんだという。

   ふだんは糞尿汲み取りを業としていた作業員が、
  死体の処理に雇われ、東京中の便槽から糞尿があふれて伝染病が蔓延したことなども
  正確に数字を表示して記録され、なまなましい。
 
   過去の事としてではなく、
  今に生きる私たちが学ばねばならないことの多くが語られている書である。


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