風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

マチュピチュ

2011-07-21 22:24:58 | 旅行
   数年ぶりの知人にばったり出会った。
  「どうしてるう?」
  「わたしねえ、脳の手術したのよ」
 
   年寄りが顔を合わせるとすぐに病気の話になる。
  「ここ、ここ、まだ傷があるよ、さわってごらん」
   いやあ、いいよ遠慮するよ……。

   自分の病気の話が終わると、次ぎは60歳になる妹さんのことになる。
  「鬱でねえ」
  「まあ、それはお気の毒」
  「認知症も交じっててねえ」
   これは線引きが難しいらしい。
 
   それから、バイクマニアのお兄さんの話になった。
  お兄さんと言っても、70半ばの高齢者である。

   ツーリングでマチュペチュに行き、坂道でバイクを
  転げ落ちて両足複雑骨折の重傷を負ったそうである。
 
  うわあ、大変、帰って来れないじゃん!
 「それがそうでもないの、ちゃんと向こうの医師が飛行機で付き添って連れて帰ってくれたの」
  こんなカッコウで……と、彼女は仰向いて両足を突き出して見せた。

  すべて旅行保険でまかなわれたそうである。
  ほうっ!
  いいこと聞いちゃったなあ。

  風子ばあさんは、最近とみに体力気力の衰えを感じ、
 旅先から帰れなくなったら困ると、海外旅行は諦めていた。

  歩けなくなっても世界の果てから連れ帰ってくれるなんて、思ってもみなかった。
 まだまだ諦めるのは早いかなあ。
 だけど、……人騒がせだなあ。

  どうするかなあ。 やっぱり一泊の温泉にするかなあ。