風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

いい女

2011-07-06 21:08:39 | 旅行
  沖縄三日目のバスは男性のお一人様が多かった。

   東京で単身赴任中という男性が、
  出張ついでの寄り道で参加していた。

  昼食時、彼は風子ばあさんの隣に座り、お茶までついでくれたので、恐縮した。

  玉泉洞の暗く湿った洞内では前になり後になりして一緒に歩いてくれた。

  風子がベンチでソフトクリームを食べていたら、
 いいですか、と傍へきて、彼もソフトクリームを買って、ペロペロ舐めていた。

  飛行機の都合で、風子ばあさんが他の乗客より手前の駅で下りたら、
 彼も慌てて一緒におりてきた。

  ははん、風子は年寄りだが、
 まだまだこれで案外、いい女なのかもしれないと、ちょっと自惚れた。

  しかし、別れぎわに彼は言った。
 「いや、いや、失礼ですが、動けるうちが花ですよ、いまのうちにどんどん楽しんでください」

  たちまち、杖でもついて腰を曲げ、アリガトさんとでも言わねばならない気分になった。

  いい女ではなく、心配なバアサンに見えたので親切にしてくれたのだろう。

  おじさん、ありがとう、お元気で。
  彼はなかなかいい男でした。