風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

合評会

2011-03-08 22:20:54 | 読書
 小説を書く仲間どうしで、合評会なるものがある。
仲間のほとんどはパソコンで入力して、必要な部数を刷り出す。
あるいは添付して相手に届ける。

 若いひとには当たり前のことが、年寄りの風子ばあさんはこの事ひとつで感極まる。

 とにもかくにも、自分の書いたものが、印字されて目の前に出てくると、なにやら立派に見えるのである。

 昔はこうでなかった。
原稿用紙に下手な字でこそこそ書いて、間違えると棒線引いて脇に書きたした。
修正ペンというようなシロモノさえなかったような気がする。
もちろん打てば変換してくれるわけではないから、いちいち辞書をひく。

 さて、原稿が出来あがってもコピー機などもない。
どうしたか? 会合の前に郵送で回覧をすませておくという方法があった。
しかし、これは人数が多いと日数がかかりすぎた。一部しかない生原稿が行方不明になる危険性もある。

 で、どうするか? 当日、みんなの前で読みあげるのである。
さすがに当人は読みにくいので、うちらの場合は、読み達者な人間が声を張り上げて読んでくれた。
それをみんな黙ってうつむいて拝聴をしてから、合評という段取りになった。

「頬を寄せてきた彼の手が腰のあたりを滑り……」などというくだりを、一同しかつめらしい顔で、
しんと聞き入っている図は、今考えると、懐かしくもおかしい。
コメント
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