風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

教育

2011-03-01 15:56:27 | 家族
 人が集まるところ、必ず、トイレが必要である。
牡蠣小屋にも、取りあえず、男女それぞれ、各一か所にトイレが用意されていた。

 しかし、店はなかなかの盛況で、トイレにも長い列が出来た。
風子ばあさんの後ろに、姉妹と思われる幼児が二人並んだ。

 どちらも可愛くて利発そうである。風子ばあさんを見てにっこりとほほ笑む。
いくつ? とこちらもお愛想に聞いてやると、8歳と4歳という。

 こういう場合、たいがい、次女の方が、世渡りがうまくて物怖じしない。長い列にあきあきしている。

「ねえ、わたし、おしっこしたいの、もれちゃいそう」
 と風子ばあさんを見上げる。
順番を代われと言っているのだ。

 愛らしい。ばあさんにも同じ齢の孫がいる。ここで代わってやるのは簡単である。
こちらがそれほど切羽詰まっているわけでもない。

 だが、待てよ、それがこの子のためだろうか。
子供だからという甘えを許さない大人がいたって悪くない。我慢も大事なのである。

「ねえ、あなたは子供だからね、もらしたって、いいの。 だけど、おばあちゃんが、ここでもらしたらおかしいでしょ?
だから、代わってあげられないの」
 
 この子は利口な子である。この理屈は納得したようで、深く頷いてくれた。
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