平成22年、名著復刊で、32年ぶりの復刊。
大森馬込の古本屋さんが
正宗白鳥、尾崎士朗、尾崎一雄、上林暁、野呂邦暢、多くの文学者との交流や
日々の思いを綴っている。
「本」に寄せる著者のその思いの篤さが読んでいて心地よく伝わる。
上林暁を初めて訪ねたとき、署名を願ったら、
「本を愛する人に悪人はいない」と書いてくれたとある。
尾崎士朗が危篤になり、
「おれの好きだった歌を唄ってくれ」と言うので
誰からともなく「桜井の駅」が歌われたが、実は彼が歌ってほしかったのは
「白虎隊の歌」だったとか。笑いもいっぱい。
「虫のいどころ」には、声を出して笑った。
厠の5燭の電燈を消されたことからの夫婦喧嘩の顛末。
5燭とは懐かしい。
30数年前に書かれた本が、今読んでも少しも古びていないどころか
心にのこる「昔日の客」だった。
夏葉社 2200円
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