家づくり、行ったり来たり

ヘンなコダワリを持った家づくりの記録。詳しくは「はじめに」を参照のほど。ログハウスのことやレザークラフトのことも。

フラット50なんてやめたほうがいい

2008年12月08日 | 家について思ったことなど

50年固定の住宅ローン「フラット50」などというものが企画されているらしい。

nikkei.netより↓
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住宅ローン「フラット」、金利50年固定の新型 住宅機構
 住宅金融支援機構は2009年4月をめどに、金利を最長50年間固定する新型の住宅ローン「フラット50」を発売する方針を固めた。「200年住宅」など長期間住むことができる性能が高い住宅が対象。満80歳までに返済を終えるか、子供にローンを引き継いで完済することが貸し出しの条件で、銀行の窓口などで申し込みを受け付ける。
 現在、大手銀行などの多くは最長返済期間を35年までにしている。国土交通省の試算によると、200年住宅は通常の住宅よりも2割程度高くなるが、50年間のローンを発売すれば普及を後押しできるとみている。
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何を考えているのだろう。
「200年住宅」の普及のため、などという目的を掲げているが、そんなもので真の200年住宅(要するに長寿命を達成する住宅)の普及に効果があるとは思えない。

30歳で家を建てた(購入した)として、返済が終わるのが80歳。
おそらく利用者の大半が30年から40年後に子供にローンを引き継ぐことになる。
家と同時にローンを引き継ぐシーンを考えてみてほしい。
その時点で譲り受けてうれしい家でなければ、子供は親を恨めしく思うことだろう。

30年も40年も経っていて喜んで譲り受けられる家とは、何だろう。
「ちゃんと問題なく機能している」というような要件は最低条件に過ぎない。その時点で残り20年もの住宅ローン残を引き継ぐことになる場合、「問題なく機能している家」程度のレベルであるならば「自分で借金して自分好みの新しい家を建てた方がいい」と考えるだろうから。

ローンを引き継いでもいいと思える条件があるとすれば、それは何か。
一つは楽しい思い出が家に刻み込まれていること、家に愛着を感じながら過ごしてきたという歴史だ。
そのためには家族がずっと仲良く暮らしていなければならない。その面では建物(ハード)の実力などより、住人の性質の方が重要になってくる。
逆に言えば、「子供にローンを引き継いでもらおう」などと子供に寄りかかった依存体質、問題先送り体質の親が、良好な親子関係を続けられるのだろうかという疑問がわいてこないでもない。

引き継ぐ気をおこさせる別の要件は、30年、40年経つことによって、新築ではかもし出すことが出来ない風格を生みだしていることだ。
「壊すのがもったいない」と思えるような家でないと、ローン支払い義務付きの家をもらおうとは考えたくもないだろう。だから、新築時に「30年後は新築時とは違う魅力が増している」と期待できるような建物にしておかないといけないと思う。
現在開発されている「200年住宅」はそれを考えているだろうか。
例えば、ホンモノのテクスチャーを真似たメンテナンスフリーの「ニセモノ」素材(関連エントリ LINK)は、30年後に魅力が増しているとは思えない。随時リフォームで取り替えていけばいいのだろうが、そういう素材ばかりで構成された住宅だったならば、受け継ぐ者に「いっそのこと建て直したほうがいい」という発想を浮かばせることになりそう。その家にしかないオリジナルな経年変化が楽しめる素材を使った部分は必要だと思う。
ファサード(外観)もそう。伝統的建築ならともかく、建てた時期の流行に乗る場合はよくよく考えたほうがいい。そのデザインがその時期の文化の一端を象徴するようなものであるならば、時代的価値を生むこともあるけれど、いかにもこの時代の流行はこれですよといった感じの大量生産的なデザインの場合は30年後には時代遅れ感が強まっていることだろう。住人が周囲の家と比べてデザインに引け目を感じるようになったら建て直したくなってくる。そのようなデザインが価値を持ってくるとしたら、おそらく築50年から100年以上は経った時期になるのではないだろうか。そんなスパンでは親子間の引継ぎというタイミングでは有効に働かない。

もうひとつ、50年ローンを有効に働かせようと思うなら中古住宅市場がちゃんと育っていることが重要だ。
前にも言ったが、プライマリー(新規売り出し)時点のことばかり考えてセカンダリー(流通)のことを考えないというのが日本人の欠点である。
現在のような築20年以上の建物に売値がつかないような状況では、古い家に資産価値はないわけで、子供はばかばかしくてローンを引き継ぐ気はおこらない。築年数とは別の評価軸で家の状態によって価格が算定されるような市場が必要だ。

「フラット50」のようなものが先行するのを見るにつけ、住宅の長寿命化より、「寿命が長くなるかもしれないちょっと高級な住宅」を売りさばくことに真意があるように思えてならない。

これも前に似たようなことを言っていることだが、本当に長寿命住宅を普及させたいのならば、50年ローンなどを用意するよりも、築50年の住宅を税金などで優遇するほうがはるかに効果があるはずだ。
実際に50年持たせると得をするのがわかっているなら、50年以上持つように住宅の性能もよくするだろうし、性能以外の点も熟慮して家を建てるようになる。あわせて、家を手入れするモチベーションも高まるし、いい家族を築いていこうという意志が生まれやすくなるというメリットがある。
そっちのほうが絶対にいい。


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