家づくり、行ったり来たり

ヘンなコダワリを持った家づくりの記録。詳しくは「はじめに」を参照のほど。ログハウスのことやレザークラフトのことも。

デザイナーズ住宅――もしかして真の「建築家住宅」なのか?

2005年09月23日 | 家について思ったことなど
このところ建売のデザイナーズ住宅の広告・PR記事が目立つようになってきた。
ある種の建築家などビルダーサイドにとっては、有望な戦略商品といったところだろうか。
設計する建築家にとっては、施主のうるさい条件から解放されて自由に設計できるというやりやすさがあるだろう。設計期間も短くて済みそうだ。
施主にとってはどうだろう。もともとその建築家のデザインが気に入っている施主ならば、有力なポイントになる。出来上がったモノを買うのだから、時間がかかる「建築家との家づくり」に力を奪われることもない。
私がこれから建てるとしても選択しそうにないが、世間にニーズがありそうなことはわかる。
以前、「奇妙な共通」というエントリで指摘した、建築家が自由気ままに設計した住宅と建売住宅の共通点が思い浮かぶ商品だ。

ただ、こうした住宅は、施主側からみれば家を「買う」楽しさはあっても、「建てる」楽しさはない。建築家との接点ができたように見えるが、その建築家と会話する場面があるのかはなはだ疑問だ。
だから、その家は「(施主)○○の家」というより「建築家△△の作品」という方が通り名として一般的になってしまうかもしれない。
もっともそれがいいという人はいるだろうし、建築家△△の作品を買うのも、その施主「らしい」ということもできる。人それぞれなのである。

改めて考えてみると、建売のデザイナーズ住宅は、施主の邪念(笑)が含まれず、(予算制限はあるだろうが)建築家が思い通りに建てたわけで、それならまさに「建築家住宅」ではないか、という言い方ができてしまうように思う。どうだろうか。


まあ「建築家住宅」を定義するような立場にはないので、注意点でも指摘しておくことにする。
デザイナーズ住宅が建築家住宅であるにしても、建売住宅であることは間違いないので、建てる過程を楽しむのみならず、施工過程をしっかりチェックしたい施主や、構造や躯体の性能が気になる施主には向かないだろうということ。
そして自分にジャストフィットした住み心地は期待しない方がいい。最大公約数的な要件はおさえているとは思うが、建築家が住人個人の暮らし方を聞き出して設計したわけではないからだ。

いずれにしろ、注文住宅にするか建売住宅にするかは、家の選択のもっとも初期に下す判断なので、建築家と注文住宅を建てたい施主と、建築家が建てた建売住宅を買いたい施主は似ているようで似ていないように思う。
誰が設計しようと、施主「に」合わせる住宅と、施主「が」合わせる住宅はアプローチの思想が全然違うということだ。