昔から「沈黙は金なり」ということわざがありますね。
この映画はそんなことに気がついた一人の平凡な兵士の
話です。
主人公の清水豊松は高知県のある町で妻と二人で理髪
店で生計を立てていた気弱で平凡な理髪師でした。戦争
(太平洋戦争)が激しくなって、この理髪店主にもいわゆ
る赤紙が届きました。
軍隊で激しい訓練をしていたある日、米軍機が墜落し
て乗組員が山中に放り出されました。そんなとき清水豊
松の中隊に山狩りをして米兵を殺害するように命令が下
った。山中で米兵を発見したが、豊松には命令通り刺殺
することはできなかった。そしてやがて終戦を迎え、豊
松は故郷に帰って平穏な生活を始めました。
そこへある日、MPがやってきて戦争犯罪者の疑いがあ
るとして豊松を連行していきました。戦争裁判で殺人罪
の判決が下りました。豊松はいくら弁解し殺人をしてい
ないといっても受け入れられなかった。そして刑が執行
されるのを待つ日々獄中でどう考えても殺人罪の判決に
納得できず悶々としていた。そして何もしゃべらなくな
っていった。
ただ、「私は深い海の底に住む貝になりたい」とつぶ
やいていました。理不尽な判決に従わざるを得ない気弱
で平凡な男のせめてもの抵抗であったのでしょうか。
この作品は初めドラマとして放映され、何作かリメイ
クが行われました。私はフランキー堺が主演を演じたこ
の作品が好きです。思わず笑ってしまいそうな彼の顔と
獄中での深刻な顔が重なると複雑な気持ちになってし
まいます。