私がまだ若い頃のことです。数人の仲間と浅草観音様を
お参りしました。ものは試しと本堂右手にあったおみくじ
を引きました。そうしたら大凶とでてしまいました。私は
少しいやな気分になって、ちょうど本堂の脇を掃除してい
た浅草寺の関係者(その方は青い袴をはき白い着物を着て
いました)に、「こういうくじを引き当ててしまいまし
たがどうしたらよいでしょうか」と相談のような言い方で
くじを見せました。
その方は少し考えて次のような話をしてくれました。
「大凶というのは、もうこれ以下の悪いことは起きない
ということですから後はよいことが起きるだけと考えま
しょう。それと内緒の話ですがこんなかみきれで自分の
将来がきまるものじゃないでしょう。あたるも籤あたら
ぬも籤といいますから心配しないでいいでしょう。よろ
しければこれはこちらで引き取らせていただきます」
私は、
「お願いします。有難うございました。安心しました」
といって感心してしまいました。