朝の通勤電車に揺られてウトウトしていたら、中学生くらいの男の子が乗車して隣に座りました。
「この電車は〇〇行きでまもなく発車します」「この車両は〇号車です」など、独り言を言っています。鞄にヘルプマークがついていたので、私はそのまま目を閉じて彼の独り言をやり過ごしていました。
彼の独り言を聞きながら再びウトウトしていたら、肩をトントンと叩かれました。目を開けるとその男の子がまっすぐこちらを見ています。「雪の影響で〇〇線は遅延しています」と言われたので、「そうなのですね」と私は応じました。
それから彼は私に話しかけるように電車のことなどを話し始めました。私は少し戸惑いつつも、赤べこ人形のように黙ってウンウンと頷き続けました。
電車が大きな駅に着くと、彼は「私はここで降りなければなりません」と言い、立ち上がってドアに向かいました。私は、心のどこかで、彼が振り返って「バイバイ」などとお別れを言ってくれることを期待していました。しかし、彼は振り向くことなく、そのまままっすぐ下車してしまい、すぐに多くの客に紛れて見えなくなりました。
私はその後ろ姿に、話したいことを好きなだけ話したら、お礼も言わずに去っていく学生さん達の姿を重ねてしまいました。私は最近、心が弱っているので、その朝の出来事でダメージを受けてしまいました。
その夜、私はお風呂に浸かりながら、朝の出来事を思い返していました。そして私は、彼が最後に言った、「私はここで降りなければなりません」という言葉が、彼なりの別れの挨拶だったのではないかと思い至りました。
最近、私は心が弱っているので、その可能性に気付いただけで、じんわりと涙が出てきたのでした。
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