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一気読み「ビリーの挑戦」107-112

2018-03-12 | 一気読み「ビリーの挑戦」
一気読み「ビリーの挑戦」107-112
107cut:ラ行の言い訳小僧が消えた
――18scene:8月のチーム会議
影野小枝 帯広市民会館の一室です。8月のチーム会議で、メンバーが勢ぞろいしています。
漆原 7月もよくがんばってくれた。9200万円と、1億にはあと一歩だった。(大歓声)特に帯広地区の貢献が大きかった。きょうは敬意をこめて、チーム会議を帯広開催とさせてもらった。
山之内 いよいよ、頂上が見えてきましたね。帯広地区は、全員が1000万円プレイヤーの仲間入りをしました。太田が最終日まで飛び回って、滑りこみでしたが……。
(拍手)
石川 釧路地区は、熊谷と寺沢があと一歩のところです。8月は夏休みもあり、難しいのですが、9月には帯広のように1000万円超のそろい踏みの予定です。
乾 札医大関連の、情報をお知らせします。今月のローテーションは……。
影野小枝 大学病院の情報交換です。乾さんや田中さんが、直接、大学病院担当者から情報を入手したようです。新たにチーム内の病院へ赴任する医師と、ローテーションでいなくなる医師の発表がなされました。
漆原 乾たちの発表を聞いて、思い出したことがある。4月のチーム会議のときに、気になったことがあった。「ラ行の言い訳小僧」って知っているか? 「なぜ攻略がままならないのか」と私が質問すると、みんなは「ラ行」で言い訳をしていた。

・ライバルメーカーは、10年も同じ担当者です。ひっくり返すのはムリです。
・リスクが高過ぎます。そんなことをしたら、出入り禁止にされてしまいます。
・ルールですから、それはできません。
・レジメ(約束処方)で、がんじがらめです。新規採用はムリです。
・ローテーションで、処方してくれていた先生がいなくなりました。

漆原 どうだ? 言い訳の頭が、見事にラ行になっているだろう。この言い訳に心当たりはないか?
熊谷 ラ行の言い訳小僧ですか。心当たりがあります。
漆原 そうだろう。ところが、こいつを逆手に取ると、いまの乾たちの世界になる。ライバルを知り、リスクやルールを検証し、レジメに入れてもらう努力をする。そして医師のローテーションを熟知する。これは病院攻略の基本だ。少なくともこのチームは、「ラ行の言い訳小僧」を撲滅したようだな。

108cut:夏休みの宿題を考えてもらう
――18scene:8月のチーム会議
影野小枝 107cutの続きです。
漆原 これから、夏休みの宿題を考えてもらう。本を読むのでもいい。模型飛行機を作るのでも構わない。それをきっかけに、山崎の英会話のように、それぞれのライフワークを見出してもらいたい。これからの時代、営業の経験だけでは心もとないからな。
山崎 自分自身を磨くわけですね。
漆原 私から宣言したい。私は『人間系ナレッジマネジメント』の勉強をする。そして、『営業ナレッジを結集せよ』という本を出版したい。
太田 出版までしちゃうわけですか? ゴルフでシングル・プレイヤーを目指すのはダメですか?
漆原 悪くはないけど、それは社会性がないのでライフワークとはいえない。ライフワークは社会に貢献できる可能性が、あるものでなければならない。ゴルフのレッスンプロを目指すのなら、それでいいのだけど。
田中 ムリムリ。別のライフワークを考えなさいって。
山之内 私は、コンピュータのシステム・ソフトを勉強します。これからはITの時代ですから。
寺沢 私は乾さんみたいに、自分のホームページを作ります。そこでネット・ショップを経営したい。断っておきますが、エッチなものじゃないです。売るのは、実家の無農薬野菜ですので。
石川 それはいいな。私は『霧の事典』です。せっかく釧路に住んでいますし、霧にまつわる話を徹底的に集めてみようと考えていました。
熊谷 霧の摩周湖、夜霧よ今夜もありがとう……うん、おもしろそうですね。私は絵本を書きます。いまでも子供たちのために、手製の絵本を作っています。幸いにして評判がいいので……。
漆原 結構出てくるものだな。田中は何だ?
田中 ぼくですか、リトルリーグの監督かな。プロ野球選手のタマゴを育ててみたい。これなら仕事と両立できるし、少ないながら社会貢献しています。
太田 ギターの腕を磨き、将来はギター教室を開きます。
漆原 それはいいね。ところで、乾は?
乾 実は梶山悦子、エッちゃんのことですが……入籍しまして、彼女は例の屋台村に店を出すことになりました。私の夏休みはその準備で……。
全員 おめでとう。  
影野小枝 乾さん、おめでとうございます。夏休みの宿題から、ライフワークを考えさせる。いい試みです。仕事以外に夢中になれる何か。一生涯楽しみながら続けられる、テーマを見つけることは大切ですよね。乾さんの場合は、悦子さんとの伴走がライフワークになりそうですね。

109cut:良書を読む、優れた人と交わる
――18scene:8月のチーム会議
影野小枝 漆原さんにインタビューしてみます。いよいよ、部下の日常生活を磨く段階ですね。漆原さんは、対(つい)をつなぐことの大切さを強調していましたよね。
漆原 多くのサラリーマンは、日常の設計をしないままでいます。充実した日常を持っている人は、ほとんどの場合仕事も生き生きとしています。定年後も、空気の抜けた風船みたいにはなりません。
影野小枝 日常を磨く。具体的には、どうすることなのですか?
漆原 私はよい本をたくさん読む。優れた人と交わることだと思っています。優れた人とは、社内の人のことではありません。社外の人が対象です。
影野小枝 なぜ社内ではダメなのですか?
漆原 社内の場合は、どうしても甘えが入ります。社外の場合は、ギブ・アンド・テイクのバランスが欠落したら、その時点で門戸を閉ざされてしまいます。お互いに有用な関係でなければ、相手にしてもらえないでしょう。
影野小枝 それで漆原さんは、どこから手をつけるのですか?
漆原 何かを成し遂げようとするなら、まず自らの「人生設計」を作成しなければなりません。人生設計とは、志を明確にすることです。社内価値を高めるために、何かの資格をとるでもよし。定年後に自立できるよう、いまから周到な準備をするでもよい。とにかく、これからの人生をどう過ごすのかを、明確にしておくことが大切です。
影野小枝 志を明確にする、ですか?
漆原 受験時代に「○○大学合格」などと、張り紙をした記憶があるでしょう。あれをやる必要があります。人間の意志は、信じられないほど弱い。恥ずかしくても、自身と周囲に向けて高らかに宣言をすることです。今日の夏休みの宿題で、みんなはそれを発表したわけです。

110cut:綿密な計画をたてている
――18scene:8月のチーム会議
影野小枝 野付半島のキャンプ場・尾岱沼(おだいとう)からのレポートです。漆原さん一家をはじめ全メンバーの家族が参加しています。乾さんとエッちゃんの姿もあります。すでにバーベキューの準備も整っています。
漆原 まずはこのキャンプを企画してくれた、太田と寺沢にお礼をいいたい。きみたちのお陰で、家族サービスをあれこれ悩まずに済んだ。ありがとう。それからご主人を支えてくれている奥さんと子どもたちにも、心からありがとうと申し上げたい。そして何よりも本日の主役は、乾と奥さんの悦子さんだ。2人の結婚を祝し、あわせてご参加いただいているみなさんのご健康を祈念して、乾杯しよう。(乾杯の大合唱)
太田 本日の食材はエッちゃんが手配してくれました。焼くのはぼくたちがやりますので、エッちゃんは食べることに専念してください。ではもう一度、乾さんとエッちゃんの結婚をお祝いして、乾杯したいと思います。おめでとうございます、乾杯。 
影野小枝 悦子さん、うれしそうです。お子さんたち、とっても楽しそうです。ジンギスカンは漆原さんの差し入れ。寺沢さんの実家から届いた無農薬野菜もあります。魚介類は悦子さんが、手配してくれました。カマドを作り、マキを拾い集めてきたのは、子どもたちと山崎さん、熊谷さん、田中さんです。
寺沢 食べながら聞いてください。食事のあとは、キャンプファイヤーと太田先生のギター伴奏で合唱会を計画しています。それが終わったら、花火大会が待っています。(子どもたちから歓声)
石川 結構、綿密な計画を立てているな。仕事もこうあってほしいものだ。
寺沢 石川さんには、いわれたくないですよ。(笑)
田中 飯ゴウが吹き上がりました。(子どもたちに向かって)おいしいご飯だぞ。
漆原 それにしても、そんなにたくさんの飯ゴウをどこから手に入れてきた?
田中 レンタルショップです。奥さんと子ども以外は、何でも揃っています。
山之内 あれが北斗七星だよ。ほら、ヒシャクの形をしているだろう。
子ども ママ、おいしいね。毎日キャンプをしようよ。(爆笑)
太田 明日は地引網を体験します。残念ながらこの時期、北海シマエビの漁はしていませんが、漁港の直売所で買うことができます。それから焚き火を燃やして、海水浴もやります。(こどもたちから歓声)
影野小枝 いいですね、アットホームな感じで。太田さんと寺沢さんがキャンプの企画を立てて、全員参加でそれが実現しました。2人とも張り切っています。

111cut:子どもたちがうれしそうだった
――18scene:8月のチーム会議
影野小枝 テントのなかです。寝袋に入って、太田さんと寺沢さんが語り合っています。
太田 大成功だったな。子どもたちがうれしそうだった。
寺沢 ぼくたちの企画が、受け入れられたということですね。
太田  仕事バリバリ、家でゴロゴロ。これでは対(つい)がつながっていない。日常を充実させなければ、仕事も光り輝かない。
寺沢 おまえはずっと内勤希望だったけど、最近楽しそうじゃないか?
太田 やっとわかった。営業の世界って、自分自身で創り上げると、とてつもなく楽しいものだ。
寺沢 ずっと孤独を感じていたけど、漆原さんがきてから、1人ではないと思えるようになった。太田もいるし、石川さんもいる。そして、いつも伴走してくれている漆原さんがいる。毎日が楽しいし、前へ前へと進んでいる感じがする。
太田 おまえは成長したよ。
寺沢 おまえにはいわれたくない。
太田 真冬しか知らない寒暖計が、春を感じている。少しずつ数字が上がり、おれたちの気分も高揚してきた。
寺沢 ポエムだな、太田は本を読みはじめてから、いうことが違ってきたぞ。
太田 明日は早い。そろそろ寝ようか。
寺沢 あの子たち、「ありがとう」っていってくれたよな。いい言葉だな、「ありがとう」って。

112cut:家族の笑顔と2人の若者
――18scene:8月のチーム会議
影野小枝 ビデオ製作会社打ち合わせです。
監督 いいね、いいね。原作者もなかなかやってくれる。若い連中が自発的に企画を立案し、みんながそれに便乗する。チームが一丸となっていることを、バッチリと撮りたいな。
助監督 トドワラ、羅臼岳も撮りたいですね。三角帆の打瀬船もほしいのですが、8月はシマエビ漁をやっていないようです。
製作 仕事、日常、家族団らん。この作品は、結構幅広いので、撮りがいがあるな。
監督 たくさんの教材ビデオを手掛けてきたけど、こんな風なカットを撮るのは初めてだ。中里にはよい勉強になりそうだな。
助監督 家族の笑顔と、2人の若者の満足げな表情を、自然のなかでアップにします。
監督 できれば花火をエンディングに使いたいな。原作者を説得できないですか?
製作 ムリだ。絶対に妥協してもらえない。
監督 そうだろうな、原作者は偏屈な人らしいから。


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