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一気読み「ビリーの挑戦」040-049

2018-03-02 | 一気読み「ビリーの挑戦」
一気読み「ビリーの挑戦」040-049
040cut:1週間の合宿研修をやりたい
――07scene:1週間の研修
影野小枝 R製薬札幌支店のマネージャー会議を終え、漆原さんは支店長室にいます。
漆原 支店長、どうしてもご承認願いたいことがあります。メンバーに対して、1週間の合宿研修をやりたいと考えます。まったく基本ができておらず、チームがバラバラの状態です。これでは、支店長と約束した数字は実現できません。
支店長 ずいぶん深刻なようだな。それで、どんな研修をやるつもりだ?
漆原(紙片を渡しながら)これが企画書です。
影野小枝 企画書には、次のようなプログラムが書かれています。

◎1日目:現状分析
・50項目の「意識・行動に関するアンケート調査」により、支店内の他チームとのギャップを抽出する。
・他チームとのギャップについての検討および改善策の提案(グループ討論)
◎2日目:年間計画作成
・年間販売計画を顧客別にブレークダウンさせる。
・年間のディテーリング数(宣伝回数)を顧客別に割り振る。
◎3日目:顧客別アクションプラン作成
・6つのキーワード(どこで、だれに、なにを、どんな方法で、いつまでに、どんな成果を上げるのか)を使い、活動内容を明確にする。
・自分自身で攻略する先、営業リーダーと連携して攻略する先を明確にする。
・連携先については、営業リーダーと個別面談を実施する。
◎4日目:チーム戦略の理解
・営業リーダーが実施する「人間系ナレッジマネジメント」を理解させる。
・主力品の話法を磨く(ロールプレイおよび話法の発表会)
◎5日目:1年後のゴール発表
・重点顧客について、1年後のゴール発表会を実施

支店長 ふんだんに盛りこまれているな。きみがやりたいなら、喜んで許可しよう。5日目の発表会には、私が出席できることが条件だが。
漆原 ありがとうございます。必ず、勢いのあるスタートを切ります。支店長の参加は大歓迎です。再来週に実施しますので、22日の午後にお待ちしております。
影野小枝 5日間の合宿に、許可が下りました。すごいことですね。営業活動を止めてまで実行するのですから、勇気のある挑戦ですね。

041cut:今日の成果を思い描く
――07scene:1週間の研修
影野小枝 標茶町・藤花温泉ホテルの広間です。浴衣着のメンバーが、ホワイトボードに注視しています。
漆原 さっき配布した、ウィークリー・ダイアリーの使い方を説明する。左側の予定欄には毎朝、今日の成果を思い描いて書きこむ。右側のメモ欄には気づいたことや考えたことを日付に関係なく、最初のページから順番に記録する。その際、日付を忘れずに書くこと。それからメモを書いたら、必ず3行をブランクにしておくこと。(ホワイトボードの図を示しながら)こんな感じだ。
太田 なぜ3行をブランクにするのですか?
漆原 いい質問だ。書いたメモについてさらに考えたら、そこに追加記入する。そうすると、考えたことがどんどんふくらむわけだ。では、表紙の裏をあけて。そこにこれからいうことを大きく書いてもらいたい。「ワタシハカンペキナMRデス」。もう一度繰り返す。「ワタシはカンペキなMRです」。(ホワイトボードを指差し)寺沢、ここに書いてみろ。
影野小枝 寺沢さん、ホワイトボードに次のように書きました。「私は完壁なMRです」。
漆原 ありがとう。このように、きっちりと書けた人は手を挙げて。
影野小枝 全員が勇んで手をあげています。
漆原 太田、携帯電話で「カンペキ」という文字を調べてくれないか。(一同、不審そうな表情)よし、それをここに書いてみろ。
石川 土じゃなくて、玉なのですか。ずっと間違って覚えていました。
山之内(携帯電話で確認して)本当だ。まいったな。
漆原 それが今回の合宿の原点だ。苦しくなったら、自分が書いた字を眺めてもらいたい。これではダメだとやる気になる。
乾 1人の正解者もいない。恥ずかしい話だな。
漆原 間違って覚えていること。知らぬまま過ごしていること。世の中にはザラにある話だ。お互いにもっと自分自身を磨こう。偉そうにいっているが、実は私もつい最近、完璧という正しい漢字を知ったばかりだ。さて、本題に入ろう。今日は4月18日。ダイアリーの今日のところに、合宿で学びたいことを書いてほしい。
影野小枝 この合宿で漆原さんは、メンバーに何を伝えるのでしょうか。楽しみですね。それにしても、私も壁という字を書いていました。

042cut:全部が劣っている
――07scene:1週間の研修
漆原 きみたちにやってもらった「意識・行動アンケート」だが、支店内の他のチーム平均との比較を見てもらう。(スライドをスクリーンに映す)まずこれが、うちのチームが勝っている項目だ。石川、大きな声で読み上げてくれ。
石川 うちのチームが平均よりも勝っているものは、「車の走行距離」だけですか。うちは「毎日100キロ以上走っている」が100%で、平均は14%となっています。
山之内 この地区の特殊事情もあるし、このくらいの差があっても当然だと思います。
太田 これは勝っている項目でしょうか? 訪問効率を考えるなら、劣っている項目に入れるべきじゃないですか?
漆原 鋭い指摘だな。残念ながら、50項目のアンケートのなかで、うちのチームが勝っているものがなかった。だから仕方なしに入れてみたのだが、大田のいうとおりだよな。
乾 全部が劣っているのですか?
漆原 そうだ、これが劣っている方のワースト10。(スライドを映しながら)山之内、読み上げてくれ。いずれもイエスと答えた数のパーセンテージだ。
影野小枝 山之内さんは、釧路営業所と他のチームの比較表を読み始めました。最初の数字は釧路営業所で、後ろのは他のチームの平均です。

・毎月1回以上医局説明会を実施している        (0%、32%)    
・毎日15人以上の医師と面談している            (13%、74%)
・チームメンバーの数字に対する責任感はどこよりも強い(0%、62%)
・新しい学術資材はていねいに読んでいる           (38%、74%)
・毎月1回営業リーダーのフル同行がある           (0%、23%)
・チーム内にはライバルがいる                (0%、36%)
                           
漆原 そのくらいでいいだろう。このように、うちのチームの意識・行動は、支店の平均と明らかに違っている。これからの時間は2グループに分かれて、ギャップをどう解消すべきかを検討してもらう。鶴さんチームは、田中、寺沢、乾、太田。残りは亀さんチームだ。ディスカッションにあたり、ひとつだけ注意しておく。地域の特殊事情は考えないこと。以上だ。
影野小枝 意識・行動アンケートによって、他のチームとのギャップは明確になりました。このアンケートは株式会社コラボプランのオリジナルのもので、「質を測るものさし」と呼ばれています。

043cut:ギャップをどう埋めるのか
――07scene:1週間の研修
影野小枝 2つのグループがディスカッションをしています。
石川 驚いた結果だな。では他のチームとのギャップをどう埋めるかについて、話し合おう。
山之内 まず量的な問題を片づけよう。「1日の面談ドクター数15人以上」だが、うちの該当者は1人だけということだな。
山崎 おそらく乾だと思います。それにしても、支店平均が74%というのは眉唾ものです。74%ものMRが1日15人以上のドクターと、面談しているはずがありません。
石川 そういってしまうと、身も蓋もない。道東地区ということを抜きにしても、うちのチームは訪問効率が悪いということだ。
熊谷 医局説明会の数もぜんぜん違うし、上司同行も大きなギャップがある。
山崎 やる気の問題ですよ。これだけ明確な差があるのだから、結果を厳粛に受け止めるべきでしょう。
石川 悔しいけど、おれもそう思う。
影野小枝 おやおや、何だか寂しい結論になりましたね。今度は鶴さんチームを見てみましょうか。

乾 このギャップは、あっちにいる亀さんチームが足を引っ張っているからだ。これじゃ浮かばれないよ。
田中 うちのチームの体質は、あまりにも生ぬるい。このアンケートで、それが浮き彫りになった。
太田 ギャップを埋めるには、綿密な行動計画書の作成しかありませんね。
寺沢 中核病院を基点として、その周辺の開業医をあてはめる。そうしなければ、走行距離は短縮されませんし、面談ドクター数も上がりません。
乾 つまり自分のテリトリーを5分割して、そこに曜日をあてはめるというわけだ。
田中 テラのアイデア、いただきだな。それしかないよ、方法は。
乾 最下位の理由を見たり枯れ尾花、か。
影野小枝「意識・行動のアンケート」により、ギャップを浮き彫りにする。その結果を自分たちで考えさせる。とりあえず、1週間の合宿は滑り出しました。

044cut:先頭をきって引っ張る
――07scene:1週間の研修
影野小枝 合宿初日を終えて、藤花ホテルの石川さんと山之内さんの部屋をのぞいてみます。
山之内 疲れましたね。それにしても、ショッキングなアンケート結果でした。
石川 漆原さんは、一切コメントをはさまなかった。なかなかできることじゃない。あの人、意外に腰が座っているかも。
山之内 今後の方針について「多数決では結論を出さない」といったときだけ、表情が厳しくなりました。
石川 徹底しているよ。考え抜かせて、全員が納得するまで議論を終えない。結局くたびれて、妥協してしまった。
山之内 訪問効率を上げるには、鶴さんチームの方法しかないですよ。
石川 未開拓の病院を中心にすえることには、まだ抵抗がある。面談ドクター数を増やすためだけに、可能性のない病院へ行くのはナンセンスだと思う。
山之内 しかし、みんなでそうしようと決めたのだから、おれたちが先頭を切って引っ張るべきでしょう。
石川 ところで、明日のプログラムは何だっけ?
山之内 年間計画を顧客別に割り振る。そこにディテーリング計画を重ねる。
石川 ディテーリング回数まで、顧客別に割り振るのか?

◎漆原の日記
 合宿初日を終えた。アンケート結果は、実に正直だった。メンバーにはショックが大きかったようだが、あれが現実だ。他チームとのギャップが鮮明になったのだから、あとは彼らの自覚を待つのみだ。

045cut:意識・行動の違い
――07scene:1週間の研修
影野小枝 ビデオ制作会社の打ち合わせ場面です。
製作 アンケートにより、チームメンバーが少しずつ目覚めはじめる。石川と山之内の会話もポジティブなものに変化している。
助監督 ダメなチームと普通のチームとでは、あんなに意識・行動が違うものなのですか?
製作 あれは原作者の実体験らしい。
監督 メンバーの意識・行動が変われば、実績は自動的についてくる。そのメッセージを、どこで視聴者に伝えるかが難しい。
製作 漆原の日記のなかに、そのメッセージを入れてもらおうか?
監督 できれば画像で伝えたいですね。中里、何かよい方法を考えておいてくれ。

046cut:合宿をムダにはできない
――08scene:合宿3日目
影野小枝 朝の散歩から戻ったメンバーは、温泉に入っています。漆原さんはいません。
熊谷 いい気分だ。毎朝5時半起床。6時に散歩で、温泉に入り、7時に朝飯を食う。何だか、健康的でぜいたく過ぎる生活だよ.
山之内 アルコールはビール1本だけ。10時就寝というのがなければ、極楽だよ。
太田 お尻に座りタコができてしまいました。頭もパニック状態ですし、極楽どころかぼくには地獄ですよ。
山崎 それにしても、ビリーさんはすごいよ。これだけの合宿許可を取っただからさ。あの人の熱意には驚かされる。
太田 1日の成果を思い描く。これって、簡単なようで難しいですね。
石川 今日は顧客別アクションプラン作成だから、思い描きやすいさ。ところで、太田は好きな女がいるか?
太田 たくさんいて、困っています。
石川 彼女と交際しはじめたとしよう。ゴールは何だ?
寺沢 エッチです。(笑)
石川 仕事も同じで、好きになったら、成果は思い描けるってものよ。
山崎 石川さんは、ビリーさんに洗脳されてきましたね。いうことが似てきました。
影野小枝 温泉を出た2人が、ロビーで語り合っています。
田中 乾さん、昨日ディテーリング数を上げるには、2品目宣伝をすべきだっていっていましたよね。ぼくもチャレンジしていますが、ドクターは忙しいので2つ目を聞いてくれません。
乾 最初に訴えたい製品を、口にしているだろう。それではダメだ。まず現在処方中の薬剤に関して、お礼を述べる。そのあとに、ところでと、メインの製品を訴求する。この順番にしなければならない。
田中 チーム会議では、そういう話をどんどん聞かせてもらいたいですね。
乾 いままでは鈴木さんのワンマンショーだったけど、漆原さんなら現実になりそうだな。
田中 この合宿をムダにできませんからね。漆原さんは聞く耳を持っているみたいだし、どんどん提案してみますよ。

047cut:チームにとってのメリット
――08scene:合宿3日目
影野小枝 3日目の会議が終わりました。顧客別アクションプランの発表を終えたところです。
漆原 ご苦労さん、いい発表だった。ところで顧客別アクションプランを立案していない病院が、全部で14軒ある。(ホワイトボードを指差し)もう一度確認してもらいたい。ここはアクションプランなしでいいのだな。
(全員が頷く)
漆原 これらの病院は没収する。
熊谷 わずかながらも、実績はあります。没収するって、どういう意味ですか?
漆原 担当を外すという意味だ。もちろん、わずかばかりの実績もゼロになる。
熊谷 それはないですよ。私の病院なのですから。
漆原 では質問しよう。この病院を熊谷が担当し続けていて、業績を伸ばせるのか?
熊谷 自信はありません。
漆原 担当を替えて、そのMRが業績を伸ばしたと仮定しよう。誰のメリットになる?
熊谷 そのMRのメリットになります。
漆原 それだけか?
乾 チームにとって、メリットになります。
漆原 そのとおりだ。熊谷、納得できたか?
熊谷 はい。チーム評価ということを、忘れていました。すみません。
漆原 謝ることはないさ。一人ひとりのがんばりが、チーム評価を底上げする。それを忘れないでもらいたい。さて、釧路の6軒と帯広の8軒は、石川と山之内に担当してもらう。もちろん連携病院として、私も攻略には協力する。

048cut:リーダー像が変りました
――08scene:合宿3日目
影野小枝 引き続き合宿会場です。
漆原(書類を眺めながら)石川は月売を、1200万円まで引き上げるのか。これに払い下げの6病院が加わる。チャンスだな。
石川 何としてでも、やりとげます。計画立案の大切さを学びましたので、そのとおりに実行すればいいだけですから。
漆原 私は月の半分は帯広に入る。だから留守のときは、全面的にきみに任せる。大変だけど、そっちも手伝ってもらいたい。
石川 まかせてください。そのためには、当面は数字でみんなを引っ張ります。いただいた6病院は、来週から訪問を開始します。宝の山だといいのですが。
漆原 石川、もっと自信を持て。病院は宝の山に決まっているだろう。
山之内 漆原さんを見ていて、私のリーダー像が変わりました。
漆原 どう変った?
山之内 できればやりたくない、と。
漆原 なぜだ?
山之内 やりたくないというよりも、未熟者がやるべきじゃないと思いました。
漆原 山之内は、月売を1000万円にする計画だな。実現の可能性はどうだ?
山之内 絶対に実現します。あと1軒、あと1製品の気合で、乗り越えてみせます。
漆原 気合も大切だけど、そろそろKDDやGNPの世界を、KMに転換することだよ。
山之内 何ですか、KDDとかGNPって?
影野小枝 それぞれの意味は、このあとに出てきます。それよりも、少しずつですが、輪郭が整ってきましたね。

◎漆原の日記
 MRとの連携攻略先のリストアップ終了。まだ気合が空回りしている部分があるが、目に勢いが出てきた。石川と山之内には、リーダー教育。太田と寺沢には、集中同行が必要だろう。乾と山崎にも、リーダー教育をしなければならない。

049cut:信憑性に疑いがない
――08scene:合宿3日目
影野小枝 温泉ホテル藤花の広間です。支店長も臨席しています。壁には模造紙が張られています。模造紙の数字は月均の数字であり、左から現状、4月会議で発表した目標、今回の合宿での修正目標という順序で並んでいます。単位は万円です。

石川:現状の実績725―4月の目標925ー今回の目標1200
熊谷:現状の実績480―4月の目標630―今回の目標1000
田中:現状の実績1050―4月の目標1250―今回の目標1500
寺沢:現状の実績790―4月の目標970―今回の目標1200
山之内:現状の実績475―4月の目標725―今回の目標1000
山崎:現状の実績860―4月の目標1000―今回の目標1200
乾:現状の実績1100―4月の目標1300―今回の目標1500
太田:現状の実績520―4月の目標600―今回の目標800
合計:現状の実績6000―4月の目標7400―今回の目標9400

漆原 支店長の許可をいただいて、きみたちには大きな投資を行った。その成果は、(張り紙を見て)9400万円まで伸ばせることを確認した。それぞれが熟考しての数字なので、信憑性に疑いがない。ではこの数字の根拠を、元気よく発表してもらいたい。1年後に、自分はどうなっているのか。仕事と日常の両面について、できるだけ具体的に発表すること.
石川 まずはサブリーダーとして、もっと自覚を持ちます。今回教わった「人間系ナレッジマネジメント」を徹底的に勉強します。売上については、現状の月均725万円を絶対に1200万円まで引き上げます。活動は3軒の基幹病院を中心に、全科訪問を展開します。日常については、畑を借りて子どもたちと農業をやります。自然の恵みの大切さを、子どもたちに教えます。秋には芋煮会を企画し、みなさんをご招待します。
熊谷 私と山之内さんは、売上倍増を宣言しました。無謀だと思われるかもしれませんが、KDD、GNP営業からKMに変えることで、実現可能と信じております。
支店長 発言中に申し訳ないが、KDDとかGNPとは何のことだ?
熊谷 すみません。KDDは勘と度胸と出たとこ勝負、GNPは義理と人情とプレゼントという意味です。KMはいわずもがなの、ナレッジマネジメントの略です。
支店長(爆笑しながら)わかった。すごい方針転換だな。
影野小枝 発表はまだまだ続きますが、みなさんの気合が伝わってきました。支店長も満足そうです。でも漆原さんがいちばんうれしそう。



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