山本藤光の文庫で読む500+α

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後藤武士『読むだけですっきりわかる日本史』(宝島文庫)

2018-03-05 | 書評「こ」の国内著者
後藤武士『読むだけですっきりわかる日本史』(宝島文庫)

世界のなかでも類い稀なる急成長を遂げてきた国、日本。この国の歴史は、良い時代、悪い時代それぞれに生きた先人達の、貴重な体験談の宝庫である。私たち現代人にとっても、人生をよりよく生きるためのヒントが満載だ。本書は、その歴史を完全網羅。そして、教科書では取り上げられない目からウロコの意外なエピソードも紹介。漫画のようにすらすら読めてクセになる、楽しい日本史決定版。(「BOOK」データベースより)

◎書斎の特等席の書物たち

 高校時代、最も苦手な科目は歴史でした。しかし読書を重ね書評を書くようになってから、無視するわけにはいかなくなりました。私の書斎の特等席には、何冊かの繰り返しめくっている本があります。ちょっと列記してみます。

・『新明解国語辞典』(三省堂)
・『類語例解辞典』(小学館)
・『記者ハンドブック』(共同通信社)
・『新詳高等社会科地図』(帝国書院)
・後藤武士『読むだけですっきりわかる日本史』(宝島文庫)
・後藤武士『読むだけですっきりわかる世界史・完全版』(宝島文庫)
・『一日一題・心に残る逸話と名訓』(光文書員)
・『現代歳時記』(成星出版)

『新明解国語辞典』のユニークさについては、「山本藤光の文庫で読む500+α」の赤瀬川原平『新解さんの謎』(文春文庫)を紹介ずみです。そちらをお読みください。

――現在残されている物から知ることの出来る、人間社会の移り変りの過程や、そこに見られる個個の出来事。(新明解国語辞典)

後藤武士の著書は通読してから、辞書がわりに活用しています。しかし日本史の方には索引がありますが、世界史の方にはついていません。必然世界史は、ネット検索をすることになります。

◎レンジでチンみたい

後藤武士『読むだけですっきりわかる日本史』(宝島文庫)は非常に読みやすく、スラスラと通読できます。300頁ちよっとのなかに、日本史が凝縮されています。まるで冷凍食品をレンジでチンみたいな感覚で読みました。

冒頭の章「旧石器時代」を拾ってみます。最初に、日本には旧石器時代はなかった、との紹介があります。旧石器時代は、打製石器時代のことです。それを後藤武士は、「だせえ(ださい)石器だ」とひねりを加えてみせます。
そして「旧石器時代」の存在を証明したのは、納豆売りの行商人・相沢忠洋だったと説明されます。打製石器発見の知らせを聞いて、考古学者が動きます。

――ある大学の教授とチームが派遣され、さらに調査した結果、旧石器が本物であることがわかった。ところがだ、発見者がその教授であることにされ、相沢青年の功績はまるで無視された。(本文P17)

 このあくどい教授の名前は、「相沢忠洋」でネット検索すると出てきます。本書はコンパクトにまとめたものなので、さらに知りたい事項はこうして補うことになります。
 ネット検索によると、相沢は発見した石片を持って、桐生から東京まで自転車で何度も往復しています。ところが、どこの大学もとりあってくれません。そして、

――この石器を相沢から見せられた明治大学院生芹沢長介(当時)は、同大学助教授杉原荘介(当時)に連絡し、黒曜石製の両面調整尖頭器や小形石刃などの石器を見せた。赤土の中から出土するという重大性に気づいて、同年9月11日~13日、岩宿の現地で、杉原、芹沢、岡本勇、相沢ら6人で小発掘(本調査に先立つ予備調査)が行われた。(Wikipedia)

このように、後藤武士『読むだけですっきりわかる日本史』をベースとして、どんどん知見は広がります。

◎知識のベースキャンプ

 三島由紀夫『金閣寺』(新潮文庫)を読んだとします。ちょっと「金閣寺」を学ぼうかなと思います。本書を開きます。きちんとした史実に加え、次のような説明がなされています。

――現在30代以上の大人の人にはなつかしい「一休さん」というテレビアニメがあったけれど、そこではよく「将軍様」こと義満がこの金閣寺で、一休さんにとんちでやりこめられていたものだ。(本文P139-140)

ちなみに、酒井順子『金閣寺の燃やし方』(講談社文庫)は、三島由紀夫『金閣寺』と水上勉『金閣炎上』(新潮文庫)にスポットをあてた力作です。「山本藤光の文庫で読む500+α」では、近いうちに紹介させていただきます。

楽しく読むことができる専門書。知識のベースキャンプになる本を探すのは、きわめて大切なことです。そんな意味で後藤武士『読むだけですっきりわかる日本史』は、お勧めの一冊です。高校時代に本書があったら、歴史は苦手科目になっていなかったと思います。
山本藤光2017.08.05初稿、2018.03.05改稿

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