お昼をしに、初めて行った武雄市内の「うどんウエスト」
店内は結構大繁盛、席は殆ど塞がっていた。
このチェーン店のことはあの佐賀の有名人であるこの人もブログに書いておられました。
仕方なく、「ウエイティングの席でしばらく空きを待つしかないな。」
と歩き始めると・・・・。
「尾形さん、ここ、ここによかバイ。」という神の声が
振り向くと某税理士先生ではないか・・・・。
娘婿さんの開業のご相談を頂戴して、仕事とはいえ精一杯対応させて頂いたばかりなんであったが、お陰で相席の栄に浴することができた。
最近の経済情勢の話やら、税務動向の固い話をしながら軟らかいうどんを啜る。
楽しい昼飯を税理士先生と共有していると、先に食事を済ませた先生はじゃーねと帰ってしまい、「ぶっかけうどん定食」のヴォリームと格闘する私一人の席に・・・・・。
店内は相変わらずごったがえの大盛況
ふと入り口の方に目をやると、おばあちゃんの二人連れが待ち合い席で順番待ちされていた。
旅は道連れ、昼食も道連れである。
思い切って店員さんに、あのおばあちゃん達に、ここの相席で良かったらどうぞと仰ってみて下さいとお願いした。
ほどなくして、そのおばあちゃんお二人は私の席に
「ああ、助かった・・・・。どうもご親切にねぇ。」
おばあちゃん達も「ぶっかけうどん定食」を注文
ぶっかけうどんをメインディッシュに、揚げたての唐揚げが5ヶもついた上にイナリ寿司が二つ、それにサラダと切干大根の煮物まで添えられている。食後には好きなドリンクサービスも・・・・。これで650円とは安い。
私は携帯のツイッターを見ながら、黙々と食べ続けていた。
おばあちゃん達は仲が良いらしく、楽しそうにお話と食事を愉しんでおられた。
やがて、やっとの思いで定食を食べ終えた私。
相席のよしみで、邪魔にならぬ程度に話しかけることにした。
「この定食、凄いヴォリュームですね。勿体無いから無理してやっと食べ終えましたよ・・・・。」
「あなた・・・・親切なお方ですね。市役所に働いていられるの???」
「いえ、信用金庫です。」
「はあ、どこのお店なの???」
「いえ、本部で番頭をしてます尾形と申します。」
「はあ、貴方が尾形さんね・・・。」
「私は I の家内ですよぉ。あなたのことは主人が亡くなる前に話してくれていました。いつかお会いしたいと思っていました。」
そう、Iさんは4月に黄泉の国へと旅立たれたばかりなのだ。
時々ゴルフでご一緒させて頂く事もあったので、よく知っていたのだが、
お亡くなりになる1ヶ月ほど前に武雄温泉ハイツのお風呂でお会いして、
その時あまりにもお元気がないので、差し出がましくも背中を洗って差し上げたのだった。
普段から無口な類のIさんは、一代で鉄筋工事の会社を立ち上げて、佐賀県の鉄筋工事マイスターにまで選ばれた苦労人なのであった。
背中を流させて頂いた後、何事も無かったかのようにお風呂を後にされたのだが、そのお姿が私が会った最後のにⅠさんであった。
お互い無口なまま、お別れしたのであったが、奥様は涙ながらに、その時のお話をされたのである。
それは私にとって思いもよらない話であった。
「主人はあなたが背中を洗い流してくれたことを、とても喜んでいましてね、その日家に帰ってから私に何度も何度も嬉しそうに話したのよ。親切な人のおらすばい。信金の尾形君たい。優しか人間バイって・・・・。」
私は背中を流させて頂いたことなどすっかり忘れていたのであるが、お亡くなりになった時には多少ショックであった。
何しろゴルフをなさる時のIさんはとても元気で気力に満ち溢れてておられ、とても70歳を過ぎたゴルファーとは思えなかったからである。
普通の何気ない、お昼時のうどんやさんのテーブルでIさんの在りし日のお話に花が咲いた。
そしてただ背中を洗い流した行為を、あの無口なⅠさんがそんなに喜んでいてくれたことが、私はとてつもなく嬉しかったのである。
何の反応も無かったIさんだっただけに、人の深層心理に触れたことがやけに嬉かったんである。
午後のひだまりのような、うどんやのランチのひとときであった。