奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その1767)

2021-06-25 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

奈良県北中部の京阪神へ通うサラリーマン家族(100万人)の住む幾つもの大規模住宅団地には、開発造成地の規模/面積に応じて集中豪雨災害に備えた空の貯水池がある。他方、農業灌漑用の貯水池は、何時も雨水を貯めて満水に近い。一方の住宅団地の集中豪雨対策池は空っぽなので、好対照なのである。-------

同じ池でありながら設置目的が異なると、その使い方が正反対になるのである。田植えが終わって水稲栽培が始まっている梅雨の時期、農業灌漑池の役割は大切であり、梅雨の降雨を出来るだけ貯め込んで農業用水確保のバックアップを万全にしているのだ。このようにして夏を経て秋の収穫期に至るまでの稲作用農業用水は確保されている処が多い。勿論、奈良県ならば遠く吉野川から人工の農業用水路を経由して奈良盆地に引き込んでいる農業灌漑用水も比率的には結構な部分を占めている。しかし、奈良盆地周縁/南流する小河川の両岸部を構成する丘陵地に降る雨をそれぞれの枝川に構築した小規模な農業用溜池に貯水する仕掛けが、日本列島で水稲耕作が本格化して以来ずっと2000年を超えて続いているのだ。-------

サラリーマン家族の住む大規模住宅団地が、盆地周縁部の丘陵地に開かれたこともあり、旧来の谷水を当てにしてきた水田用の溜池が住宅団地と共存する形になっている。だから住宅団地が開発されて雨水の保水能力が減少して一挙に流出する危険を避けるために一時的に其処で貯め込んでおく施設としての集中豪雨対策池が並んでいたりするのだ。--------

集中豪雨対策池は殺風景であるが、農業用対策池には、野鳥が憩(いこ)っていたり、魚影が見えたりして和(なご)めるのだ。場所によっては、野鳥の運んできた種が発芽して睡蓮(すいれん)が白や黄色の花を咲かせてくれたりして、住宅団地近隣の散歩/ウォーキングの楽しみともなるのだ。

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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その1766)

2021-06-24 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「雨の科学(武田喬男著・講談社学術文庫2019刊/2005版の文庫化)」を読んだ。武田喬男(たけだたかお1936~2004)氏は、東大(理学部/物理学科)卒、名大(大気水圏科学研究所)教授を務めた。同名誉教授。-------

この本の目次は次の通り。“地球に降る雨のミクロな特徴(雨粒の形と大きさ/雨の強さと雨粒の大きさ分布/雨が降る雲降らない雲/多くの雨は雪が融けたもの/雨の降り方は人間活動によって変わる)”、“雲の組織化(積乱雲の生涯/生物のような積乱雲/集中する豪雨/人工衛星から観る雲の群/クラウドクラスター/地形の働きによる降雨の強化と集中)”、“雨の気候学(気候域と雨量/亜熱帯域の降雨/雨のテレコネクション/雨の経年変化/水惑星の水問題)”、“解説/雲をつかむ研究の第一人者/藤吉康志”-------

裏表紙の抜き刷り文は次の通り。なぜ雨は滝のように繋がって落ちて来ないのか。雨粒はどんな形をしているのか。雲粒と雨粒の境目はどこにあるのか。雨が降り易い雲と降り難い雲のお違いとは。近年多発する集中豪雨のメカニズム/温暖化を進める雲の種類/さらに人工降雨の可能性まで、雲から雨が降るという当たり前の現象の仕組みと奥深さを探求する。-------

武田喬男氏は、戦後一時期の気象学の研究の先端をリードされていた有為な人材であったようだ。気象学は今も進化し続けているが、武田喬男氏のこの本「雨の科学」は、その道の学徒の入門書として十分に活きていると解説者が書いておられる。-------

現在、気象学は地球温暖化現象の真相を探るためにとても重要であり、その意味でも、この本は、一読の価値がありそうだ。

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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その1765)

2021-06-23 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「彼方の山へ(谷甲州著・中公文庫2000刊/ヤマケイJOY連載1997.春~冬)」を読んだ。谷甲州(たにこうしゅう1951生れ)氏は、大阪工業大学(土木工学科)卒、建設会社を経て、青年海外協力隊員としてネパール/フィリピンに滞在した。その後、執筆活動に専念し、現在に至る。“白き嶺の男(1996)”にて新田次郎文学賞を受賞した。------

この本の目次は次の通り。“厳冬期南アルプス単独全山縦走を目指して”、“青年海外協力隊員としてネパールに”、“カンチェンジュンガの仲間たち”、“インド/クン峰での出来事”、“キリマンジャロから白山へ”、“18年振りのネパール再訪”、“新釈/人はなぜ山に登るのか”、“祝いの品とピッケル”-------

裏表紙の抜き刷り文は次の通り。とにかく歩くことが好きだった。地図を眺めているうちに、そこに記された風景の中を歩いてみたくなるのだ。学生時代/里歩きから始めた著者は、素人同然の技量で冬山に挑戦。厳冬期南アルプス全山単独縦走を果たす。やがて青年海外協力隊員としてネパールに渡ったことを切っ掛けに、ヒマラヤ/クン峰に登頂。新田次郎賞受賞作家が、独特の透徹した視点で丹念に綴る青春登山記。-------

谷甲州氏の人生を決めた登山と青年海外協力隊の経験を1冊の本にしたものだ。人生を送るとき何を基準にしてその時々の進路の選択をすればよいのか、この本「彼方の山へ」は読者に問いかけてくれるのだ。あなたならどうすると。-------

登山とか海外に雄飛するというのは、格好良いかも知れないが、危険と背中合わせであることも否(いな)めない。そうした生活を続けながら、谷甲州氏は若い時代を過ごし今ではその経験を糧として作家生活を送っている。-------

ヒマラヤ探検の時代は遠い過去であり、今では登山にスポンサーの付くことはない。大衆化した登山ではあるが、登山愛好家がいなくなることはなく、そうした人たちの書棚に収まる1冊であることは間違いのない本と云えるだろう。

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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その1764)

2021-06-22 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「性からよむ江戸時代~生活の現場から(沢山美果子著・岩波新書2020刊)」を読んだ。沢山美果子(さわやまみかこ1951生れ)女史は、1973福島大学(教育学部)卒、1979お茶の水女子大学大学院(人間文化研究科/人間発達学)博士課程修了、博士(学術)。現在は岡山大学(社会文化科学研究科)客員研究員/ノートルダム清心女子大学講師。専門は日本近世/近代女性史とのこと。-------

この本の目次は次の通り。“交わる/孕む/小林一茶/七番日記(交合を記録する一茶/性と禁忌)”、“不義の子を巡って/善次郎ときやのもめごと(村と藩を巻き込んだ騒動/裁定の背景)”、“産む/堕ろす/間引く/千葉理安の診療記録(記録された産の現場/産と堕胎の両義性/堕胎を試みる女たち)”、“買う男/身を売る女/太助の日記(性買売の大衆化/隠売女の出自を探る/売られる娘)”、“江戸時代の性(生類憐み政策から妊娠出産管理政策へ/養生論にみる性意識/農民にとっての家と仕合/江戸時代から近代への転換)”、“おわりに(生きることと性)”------

扉の抜き刷り文は次の通り。小林一茶はなぜ妻との交合を具に書き留めたのか。生まれた子は自分の子ではないと言い張る夫と妻の争いの行方は。難産に立ち合った医者の診療記録にみる妊婦の声/町人が記す遊女の姿。史料の丹念な読み込みから江戸時代に生きた女と男の性の日常とその背後にある家意識/藩や幕府の政策に迫る。-------

沢山美果子女史は、江戸時代の文献史料を読み込んで、庶民生活を浮き彫りにする研究に打ち込んでこられた。従って、この本も学術書の色彩がとても強い。小林一茶の裏の顔を知らない人は冒頭から驚くだろう。女性目線なので、手抜きの無い懇切丁寧な史料の読み解きがなされている。流石/岩波新書だけのことはあると思わせられる本なのだ。

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古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その1763)

2021-06-21 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「地球温暖化を解決したい~エネルギーをどう選ぶか(小西雅子著・岩波ジュニアスタートブックス2021刊)」を読んだ。小西雅子(こにしまさこ)女史は、1981神戸大学(文学部)卒、中部日本放送にアナウンサーとして入社。その後、フリーアナウンサー/気象予報士として活動する。2005ハーバード大学大学院(環境公共政策学)修士課程修了。同年より“国際NGO/WWF(世界自然保護基金)ジャパン”にて気候変動オフィサーとして働いている。専門は国連における気候変動国際交渉/環境エネルギー政策。-------

この本の目次は次の通り。“今地球温暖化はどうなっているの(温暖化はここまで進んでいる/これまで世界は何をしてきたか/温暖化を抑えるために何が出来る/地球温暖化の現状とパリ協定のポイント)”、“さまざまなエネルギーの特徴を知ろう(温暖化対策とエネルギーの関係/エネルギーの特徴を学ぼう/エネルギー選択と温室効果ガス削減目標/ディベートをしてみよう)”、“もっと調べたい方へ”、“おわりに(皆さんが生きるこれからの世界/温暖化についてもっと知りたい)”------

裏表紙の抜き刷り文は次の通り。地球温暖化を防ぐためには、石炭/石油/天然ガスからのCO2排出量をいずれゼロにする必要がある。つまり温暖化対策とはエネルギー対策。そのためにどのようなエネルギーを選ぶのか皆(みんな)で考えてみよう。-------

小西雅子女史は、気象予報士として働く中で、地球環境問題に目覚められたようだ。その視点(地球温暖化を解決するには)を深めるためにハーバード大学に学び、グローバル世界でその想い(地球温暖化を解決したい)を実現させるべく働いておられる。岩波書店は中学生に向けてこのシリーズを発刊されており、良い著者を選んでおられると思った。大人が読んでも良い本である。

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