奈良

不比等

古都奈良・修学旅行と世界遺産の街(その1114)

2019-09-12 08:15:00 | 奈良・不比等

北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない

「むかしの汽車旅(出久根達郎編・河出文庫2012刊)」を読んだ。出久根達郎(でくねたつろう1944生れ)氏は、古書店主で、作家、エッセイストである。“佃島ふたり書房(1993)”で直木賞を受賞している。学歴中卒で直木賞を受賞したのは松本清張くらいだろうか、就いた仕事が清張の新聞社活字工と似ていて古書店勤務だったのが幸いしたのか文筆業で世に出た訳である。清張が社会の矛盾を描いたのに対して出久根達郎は社会の底辺のそれでも僅かな温かみを求めて、余り怒りを出さずに受け入れているのである。少し物足りないが、此れも又一つの人生の処し方であることには違いない。不満ばかり申し述べても生きている間に解決する問題は少ないのだから、現状に満足しその中からでもささやかな庶民の楽しみを見いだすしかないのだと、読者をやんわりと洗脳してくれるのだ。-----

「むかしの汽車旅」は、明治以来の日本の大作家の鉄道紀行文を数多く集めてアンソロジー形式で読者を楽しませてくれるのであり、鉄道ファンならずともとても面白い。-----

森鴎外、泉鏡花、夏目漱石、太宰治、坂口安吾、島崎藤村、三島由紀夫など殆どの有名作家が取り上げられている。顔ぶれに無いのは志賀直哉、有島武郎などの金持ち作家と、金持ちに媚びたかの水上勉であるようであり、出久根達郎氏にも好き嫌いがあるように感じた。-----

文庫の表紙のカバー写真に海岸線を走る汽車が使われていて、汽車を知る世代には懐かしい思いにさせてくれるのだろう。ある作家の作品には東京駅で京城(けいじょう)まで2枚下さいと買う場面があり、韓国併合時代には有り触れたシーンであったようである。満州からシベリア鉄道でフランスに向かう林芙美子の場合は、当時も今も貧しく育ち背伸びしたい作家志向の人は東京だけでなく外国にも憧れたのであるようだ。林芙美子の短い人生を知る読者からはそこまで努力しなくてもと後追いで思ってしまうのである。そう思わせる短文である。

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