21世紀航海図;歴史は何も教えてくれない。ただ学ばない者を罰するだけ。

個人の時代だからこそ、個人を活かす「組織」が栄え、個人を伸ばす「組織」が潤う。人を活かす「組織」の時代。

消費税率の段階的引き上げ論

2010年05月02日 00時09分01秒 | Weblog
世界で初めて「消費税率の段階的引き上げ」が論台に出てきたのは2002年だ。
(http://www.iser.osaka-u.ac.jp/library/dp/2004/DP0623.pdf)

その後、2006年にこのブログに登場している。
(http://blog.goo.ne.jp/fu-chine/e/cd37079e3144002b92a75f2a1a48053b)


2006年当時、「消費税を引き上げると、引上げ前に買いだめが起き、引上げ後に消費の低迷が起きる」と言うのが一般的な考えだった。
その中で「毎年数%ずつ引き上げることで、消費の低迷を防げるのではないか」との発想は面白かった。


しかし、自民党が政権公約に「消費税率の段階的引き上げ」を入れるとなると別問題だ。そして、有名大学の教授が当然の取り得るべき政策として「消費税率の段階的引き上げ」を、日本経済新聞で紹介しているのには考えさせられるものがある。


1989年の消費税導入の時と、1997年の税率の引き上げの時、それぞれで「直前の耐久消費財の買いだめ」と「その後の個人消費の冷え込み」が起きたのは歴史的事実だ。

しかし、「消費税率の引上げを段階的に行えば、消費の冷え込みは起こらない」と言うのは、個人的な推測にすぎない。歴史的な検証は全くない。ただでさえ景気が冷え込んでいる現状で消費税を引き上げると1997年の失敗を繰り返す可能性がある。回復しかけている個人消費が一段と冷え込む可能性がある。



また、一部で紹介されている「消費税率を段階的に引き上げることで、消費者の期待インフレ率を引上げ、購買意欲が回復する」との考えも推論だ。検証はされていない。大体、「期待インフレ率」を計測する手段さえない日本国内で、税率の変化が期待インフレ率に与える影響を調べることはできない。
「expected inflation rate」とでも言うのか、正確な定義が存在しない言葉を使う議論を現実の政策に反映するのは考え物だ。
机上であれば空論を考えても良いが、空論を現実の政策に利用されると困る。


「消費税率の段階的引き上げ論」が表に出てきてから4年。議論の水準は、未だに政策に応用できるレベルではないのではないか。
(Incremental Increase of Sale Tax/ GST)