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新国立劇場のバレエ「マノン」

2020-02-23 11:20:45 | バレエ
2月22日(土)の昼に新国立劇場で、ケネス・マクミランのバレエ「マノン」を観る。5回公演の初日。14時開演で、25分と20分の休憩を挟み、終演は16時50分頃。場内はほぼ満席。

ケネス・マクミランは20世紀後半に、物語性のある3幕物の長編バレエを多く生み出し、復活させた点で評価されているが、彼の作品の中でも「ロメオとジュリエット」などと並んで有名な作品だが、日本では上演機会が少ない気がする。

18世紀に書かれたアベ・プレヴォーの小説が原作だが、新国立劇場で配られたリーフレットには「ケネス・マクミランの『マノン』」という風な表記はあるが、プレヴォーについてはまったく触れられていない。解説に書けとは言わないが、せめてクレジットには載せておくべきだろう。

プッチーニやマスネなどもオペラにしているので、物語自体は良くなじんだものだ。僕などは若い時に見たフランス映画で、ジョルジュ・クルーゾーが監督した「情婦マノン」が鮮烈な印象なので、最後は砂漠で亡くなるようなイメージを抱いていたが、バレエで描かれた通りに、フランスの植民地だったニューオリンズ(新オルレアン)近くの湿地帯で亡くなるというのが原作通りだと思う。

こうした長編バレエを新たに作る時に、一番の問題点はバレエ向きの音楽を新たに書く作曲家がいないことだ。これは作曲界が前衛ばかり追求しているためで、サボリとしか思えないが、このバレエ作品ではマスネの音楽を使っている。困ったことに、新国立のリーフレットには、マスネの音楽とも書いてなく、編曲マーティン・イエーツとなっている。念のために手元にあるオックスフォードの事典で調べると、マクミランの作品はマスネの音楽で、編曲はリートン・ルーカスとなっている。ということは、編曲はオリジナルではないのだろうか。いろいろと疑問がわいてきた。

さて公演の方だが、主演のマノンには米沢唯、相手役の神学生にはワディム・ムンタギロフで、難しい踊りだとは思うが見事に踊っていた。マノンは美しいが小悪魔的な魅力もあり、誘惑には勝てないという天性の気質を持つが、米沢唯は時にはちょっと可愛らしすぎたかも知れない。これは表現の問題というよりも役柄があっているかどうかという問題だろう。ムンタギロフは一幕はちょっと安定を書くかと思ったが、二幕三幕は見事な踊りだった。

木村優里がマノンの兄レスコーの愛人娼婦役で、結構沢山踊っていてなかなか良かった。他の踊り手たちも水準が高く、やはり新国立のバレエは安心して観れると感じた。

踊りはテクニック的には難しそうに思えたが、そうしたことよりもこの作品をドラマとして面白く見せていて退屈させないところが良いと思う。原作があるので、そのどの部分を描くかによってかなり印象が異なってくると思うが、最初の場面からしてうまく作ってあると改めて感心した。

新国立のバレエはいつも沢田祐二の照明だが、全体的にもう少し明るく、というよりも正面から光を当てた方が良いのではないかと感じる。幻想的な雰囲気を出したいのだろうが、ある程度明るい方が、舞台を見る観客の方も楽だからだ。

バレエは、大抵ハッピーエンドで、美しい衣装で終わるが、この作品は汚れた衣装で、亡くなってしまうので、ちょっと寂しい。宝塚だと、この後フィナーレをやるだろうと思った。何か大喜利で短く目出度い作品が後ろにあると良いと感じるのは、あまりにも日本人的な感覚だろうか。

家に真っ直ぐ戻って食事。大根のサラダと天津飯を作る。飲み物は日本酒の大吟醸。

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